(´・ω・`)(1906年の5月から6月にかけて、アドルフはウィーンに滞在していた)
(´・ω・`)(もう言うまでもないけど、アドルフは慣れ親しんではいるけど小市民的なリンツに限界を感じていた)
父「おーいクビツェク、ヒトラー君から絵葉書が届いているぞ」
(´・ω・`)「え、ほんと!?」
『この絵葉書を送るが、ずっと便りを出さなかったことをすまないと思っている。僕はとても元気で、今はあちこちを見て回っている。明日はトリスタンを見に行き、明後日はさまよえるオランダ人という具合だ』
(´・ω・`)「ふむふむ 楽しそうだなぁ」
『全てがとても素晴らしいのだが、僕はもうリンツが恋しい。今日は市立劇場に行く 尊敬するご両親によろしく』
『アドルフ・ヒトラー』
彡(゜)(<)
(・`ω・‘)「んん… きっとこの『リンツ』っていうのはそのままの意味じゃなくて…」
(´-ω-`)「きっと『ステファニー』のことなんだろうなぁ…全くもう」
同じ日の1906年5月に、アドルフは二枚目の絵葉書を出していた
『建物の内部に感動はしない。建物の外面の力強い威厳が芸術の記念碑的厳粛さを建物に及ぼすのであり、内部ではその威厳よりも感嘆を覚える』
彡(`)(´)キリッ
『力強い音の波が室内をうねり、風のざわめきが波打つ音のすごい洪水に消え失せるときにこそ、崇高さを感じ、内装を飾る金やビロードのことはわすれてしまう』
彡(-)(-)
『尊敬するご両親に宜しく』
『アドルフ・ヒトラー』
リンツ駅
(´・ω・`)「おかえり、アドルフ」
彡(^)(^)「おおクビツェク! なんか久しぶりに感じるで!」
彡(;)(;)「ホンマによかったでぇーウィーンは! 流石ステファニーを生んだ町や! あそこの建築を見て音楽を聞けばワイも都会人や!」
(´・ω・`)「絵葉書からも十分にその素晴らしさが伝わったよ」
彡(゜)(゜)「クビツェク…ワイは決心したで…」
(´・ω・`)「ああ…やっぱり…」
彡(゜)(゜)「ワイは…ウィーンへ行くで」
ヒトラー家
彡(゜)(゜)「マッマ! ワイはウィーンへ行くで!」
(*^◯^*)「駄目なんだ!」
彡(゜)(゜)「なんでや! 費用はワイが親父から相続した分を使うんやからええやろ!」
(*^◯^*)「そういう頑固なところがお父さんそっくりなんだ!」
(*^◯^*)「それに、知り合いの農夫さんに職の斡旋をたのんでいるんだ!」
彡(゜)(゜)「ファ!?聞いてへんでそんなこと!」
(*^◯^*)「言ったら反対するから黙っていたんだ!」
(*^◯^*)「アドルフ、二年前に実科学校を止めて以来お前はずっとブラブラしていたんだ!」
彡(。)(゜)「ぶっ、ブラブラぁ!? それは聞き捨てならんで! ワイはいつも芸術家になるため努力しとったんや!」
(*^◯^*)「はっきり言うんだ! 芸術家なんて不安定で軽率なものなんだ!」
外
(´゜ω゜`)「す、すごい剣幕で言い争ってる クララおばさんのこんな声聞いたことないよ…」
彡(゜)(゜)「何を言っとんじゃ! ワイはちゃんと大学にいって勉強するんや! 学校やぞ学校!! どや!? 学生なら世間体も悪くないやろ!?」
(*^◯^*)「ぐぐ…でもクビツェク君みたいに音楽ならともかく絵なんて…」
(*^◯^*)「それに、ラウバルだって反対だって言ってたんだ! 気違いの沙汰だって言ってたんだ!」
彡(●)(●)「あんな小役人風情に芸術の何がわかるんや!! そうか、あいつがマッマに何か吹き込んだんやな!?」
(´゜ω゜`)「僕の出る幕は無さそうだ…今日のところは帰ろう…」
あくる日 クビツェク家
(´・ω・`)「このマットレス、ずいぶん注文が込んでるね…! ぐぐ…」
父「ああ…今日いっぱいはかかるな…」
彡(゜)(゜)「クビツェク」
(´・ω・`)「あ、アドルフ…ごめん、今は少し忙しくて…」
彡(゜)(゜)「明日、出発するで 出来れば一緒に駅まで来てくれや」
(´゜ω゜`)「明日!?随分急だね」
彡(゜)(゜)「そんじゃ、仕事頑張ってな…」
彡(゜)(゜)「叔父さんも、無理をなさらずに頑張って下さい」
父「ありがとう、アドルフ君はいつも礼儀正しいねぇ」
彡(゜)(゜)「ほな…また…」
夜
(´・ω・`)「やっと終わった…!アドルフの家に行ってみよう…」
(´・ω・`)「ごめんください」
(*^◯^*)「クビツェク君なんだ!アドルフはいないんだ!」
(´・ω・`)「はぁ、そうですか…あの…」
(*^◯^*)「ウィーンへの引っ越しのことなんだ?」
(´・ω・`)「えっ、あ、はい…」
(*^◯^*)「アドルフは実科学校できちんと勉強していたら、今頃高卒資格を得ていた筈なんだ!」
(*^◯^*)「大急ぎでウィーンへ行って何になるんだ! 画家になっても、得るものはないし、歴史物語を書いても、1クローネにもならないんだ!」
(*^◯^*)「もうアドルフを助けてやることはできないんだ!アドルフだけじゃなく、パウラもいるんだ!」
(´・ω・`)「妹さん、体が弱いんでしたね」
(*^◯^*)「アドルフはそんなことお構い無しなんだ! まるで世界に自分一人しかいないかのように、自分の道を進むんだ!」
(*^◯^*)「うぐ…」
(´・ω・`)「お、おばさん!?」
(*^◯^*)「最近はもう…駄目なんだ…! ああ…あのお星さまに顔が見えるんだ…!」
(´・ω・`)「し、しっかり…!」
(*^◯^*)「クビツェク君…アドルフが自力のを見る前に、この体は駄目になるんだ…!」
(*^◯^*)「アドルフは孤独なんだ…! だから一瞬いてやってほしいんだ…!」
(´・ω・`)「おばさん…」
翌日 駅
彡(゜)(゜)「もうマッマは一切反対せん ワイは行くで」
(´・ω・`)「あれ、クララおばさんは?」
彡(゜)(゜)「親が子を見送るなんて恥ずいやろ!」
(´・ω・`)「そっか…」
彡(゜)(゜)「あいつだって…あの糞親父だってウィーンへ行かなかったら一生靴職人でマッマとも結婚できなかったんや ワイだってできるで…!」
彡(゜)(゜)「だからクビツェク! お前もこいや!」
(´・ω・`)「ははっ、またまた…」
彡(゜)(゜)「クビツェク! これはいつもの冗談やない! 本気や!お前が望まんと一生そのままやぞ!」
(´・ω・`)「うっ……!」
彡(-)(-)「ワイは知っとるんやで、お前がワイに及ばずとも努力していることを… オペラに行く回数を減らして家庭教師を呼び、詩を読んだり…」
彡(゜)(゜)「後はお前が勇気をだすだけや!そしたらワイも全力でやれることをやらせてもらうで!」
(´・ω・`)「アドルフ…」
彡(゜)(゜)「せやから、来い!クビツェク!」
ポーッポーシュッポー
彡(-)(-)「ほな…またな…待ってるで…」
(´-ω-`)「……」
(´・ω・`)「……!」
クビツェク家
父「クビツェク… そうか、ヒトラー君は行ったか」
(´・ω・`)「父さん…僕…」
父「皆まで言うな お前の頑張りはヒトラー君から聞いてる お前のやりたいこともな」
(´;ω<`)(アドルフ…あんなこと言って、もうやることやってるんじゃないか…!)
父「仕事がないときはなるべく家を避けていたお前が親友を見送った後すぐここに来た…! それだけでもう私は理解した」
(´;ω;`)「父さん…! じゃあ…!」
父「ああ…ただし後一年の修行を終えてだ 勿論音大の受験勉強と平行でな」
(´;ω;`)「うん…うん…やるよ…勿論やるよ…!」
ウィーン
『アドルフへ 君のおかげで、父さんの許可が貰えたよ 宝くじの夢は叶わなかったけど、同居して二人、ウィーンで学生生活を送る夢は果たせそうだね』
(´・ω・`)
『あと一年で、君に追い付くよ それまで、抜け駆けして有名になったりしてちゃ駄目だからね』
(´・ω<`)
『アウグスト・クビツェク』
彡(゜)(゜)「ふふふ、やりおった、やりおったであいつ! 全てはワイの計画通りや!」
彡(゜)(゜)「だが悪いな、クビツェク! ワイはお前を待つつもりはないで! 必死にワイの芸術家人生に喰らいついてくるで!」
「大松造形美術大学」
彡(゜)(゜)「この美大からワイのそれは始まるんや!」
彡(^)(^)「ほな、行くで!」
1907年10月
とある市場
(´・ω・`)(アドルフがウィーンへ行って数ヶ月たった)
(´・ω・`)(僕はヴィオラの交響楽団、弦楽合奏団に入り特訓の日々を重ねている)
(*^◯^*)「あ、クビツェク君なんだ!」
(´・ω・`)「あ、おばさん 元気そうでなによりです」
(*^◯^*)「ありがとうなんだ!」
(*^◯^*)「アドルフは上手くやっているそうなんだ! ただ、何について勉強しているのかわからないんだ! きっと忙しいんだ!」
(´・ω・`)「ええ、そうらしいですね」
(´・ω・`)(実は僕との文通でも政治やステファニーのことばっかりで不思議と勉強のことは書かれてないんだよね)
翌日
父「こ、これは…」
(´゜ω゜`)「はえ~」
注文書にはベットが50床とあった 新築された婦人科病棟のためだ
空いてる時間は全て音楽の勉強に費やした こうして数週間の間、楽団と家だけを往復する日々が続いた
11月後半 ヒトラー家
(´・ω・`)「おばさん、暫く顔見せられなくてすいません」
(* ◯ *)「だ、誰…なんだ……」
(´゜ω゜`)「お、おばさん!?」
数週間ぶりに見た彼女の顔は枯れ果て、弱りきっていた
(* ◯ *)「アドルフは、ウィーンの生活、生活はとてもじじじじゅうじつしてるらしいんだ…」
(´・ω・`)「へ、返事を書くのが大変なら僕が代わりに書きますよ!」
(* ◯ *)「それは駄目なんだ…」
(* ◯ *)「アドルフは母親の体調を知ったらきっとここに戻ってくるんだ…」
(* ◯ *)「猛勉強しているアドルフに途中で中断を強いることはできないんだ…」
(´・ω・`)(一体どうすれば…)
(´・ω・`)(小さな妹さんは毎日学校、確かアドルフの義理の姉さんは妊娠中 その夫のラウバルもアドルフのウィーン行きの件で不機嫌らしいし…)
(´・ω・`)「入院…」
(* ◯ *)「お医者さんにもそう薦められたんだ…」
結局、様々な理由が重なりアドルフへ手紙が送られることとなった
(´・ω・`)「ってことなんだよ…どうにかならないかな?」
母はクララおばさんとは面識がなかったが時々おばさんの様子を見に行くことを進んで引き受けてくれた しかし、父が反対した
父「頼まれてもないのに援助をするのは無作法にあたる」
(´・ω・`)「…」
翌日
(´・ω・`)(よし、次はマットレスに詰め物をして…)
彡(゜)(゜)ガチャ
(´・ω・`)「アドルフ、帰っ」
彡(゜)(゜)「医者は不治の病や言うとった」
アドルフの口から出たのはこれだけだった
彼の顔は透き通りそうなほど青白く、目はくもり、声はしわがれていた
彡(゜)(゜)「不治の病てなんや? 不治やない、医者に治す能力がないだけや マッマはまだ47やぞ」
彡()()「医者はどうしていいかわからないから不治の病なんて言い出すんや」
(´・ω・`)(身近に起こったことを何でも問題視するのは、彼のいつもの癖だ)
(´-ω-`)(でも、こんな風に話したのは初めてだな…)
(´・ω・`)「僕に何かできることはある?」
彡(-)(-)「……」
彡(゜)(゜)「マッマの面倒を見るために、ワイは暫くリンツにいる」
(´・ω・`)「大学はいいの?」
彡()()「……」
彡(゜)(゜)「だ、大学は毎日行かなくてもええんやで それに、今はマッマの方を優先せな」
(´-ω-`)「そうだよね…無粋なこと聞いてごめん」
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彡(゜)(゜)「だ、大学は毎日行かなくてもええんやで それに、今はマッマの方を優先せな」
ダウトォ!
(´・ω・`)「そういえば、君に家事なんてできるの?」
彡(゜)(゜)「必要になれば、何でもできるもんや」
翌週
(´・ω・`)(アドルフはああ言ってたけど、家事を単調で退屈な作業だって見下していたアドルフにできるのかな…?)
(´-ω-`)「無理だろうなぁ きっと三日坊主…」
ヒトラー家
(´・ω・`)「お邪魔します」
(´・ω・`)「あれ、誰もいない」キョロキョロ
「クビツェク、下や」
(´゜ω゜`)「ア、アドルフ…床にひざ立ててなにしてるの…?」
彡(゜)(゜)「ファ? 掃除に決まっとるやろ 見てわからんか」
(´゜ω゜`)(嘘…あの、あのアドルフがエプロン着けて床を磨いてる)
(* ◯^*)「あはは、クビツェク君驚いてるんだ! 無理はないんだ!」
(* ◯^*)「でもご覧の通り、アドルフは何でもできるんだ!」
彡(゜)(゜)「全く、人をなんだと思っとるんや…」
(´・ω・`)(アドルフは別人のようになっていた)
彡(゜)(゜)「今日は野菜でなんか作るで」
(´・ω・`)(いつも彼が夢中になっている問題やアイデアは、もう出てこなかった)
(´・ω・`)(政治のことは勿論、芸術への興味すら、ほとんど失せているようだった)
(´・ω・`)(僕達は三年以上も密接で二人だけの友情を保っていて、隠し事は一切なかった)
(´・ω・`)(アドルフは、本当に別人みたいになっていた)
(´・ω・`)(クララおばさんの状態は良くなっていった)
(´・ω・`)(やっぱり、息子がそばにいることが病状にいい影響をもたらしたのかも)
(* ◯^*)「…」
彡(゜)(゜)「ほい」
(´・ω・`)(アドルフはおばさんの目からやりたいことを読み取り、心から愛情を込めて世話していた)
(´・ω・`)(僕は自分の目と耳を疑いたくなったほどだ)
(´・ω・`)(この日々の間の彼は完全に自分のことを忘れて、母への献身的な世話だけに生きていた)
(´・ω・`)(あ、雪だ…)
(´-ω-`)(アドルフにとって、今年のクリスマスはいいものになりそうにないな…)
(´・ω・`)「それでは、僕はこの辺で…」
(* ◯^*)「……」
(´・ω・`)「アドルフー!? 聞こえてるかーい!?」
彡(゜)(゜)「屋根裏からでも聞こえるでー! ほななー」
(´・ω・`)「それでは、お大事に…」
(* ◯^*)「クビツェク君」
(´・ω・`)「はい」
(*^◯^*)「アドルフにとって良い友達のままでいてほしいんだ!あの子はひとりぼっちになっていまうからなんだ!」
(´;ω;`)「はい……」
僕は目に涙をためながら約束して、帰った
12月20日の夕方のことだ
翌日 午後 クビツェク家
彡()()「」ガチャ
彡()()「………」
(´・ω・`)「アドルフ……」
彡()()「夜中にマッマが死んだ」
(´ ω `)
埋葬は12月23日に行われた
小さなパウラはすすり泣き、アドルフは落ち着いていた しかし、彼の大きな目はその悲しみを隠しきるのには些か向いてなかった
明日がクリスマスのためか、葬列は隣人や知り合いのみでみすぼらしさが感じられた
クララ・ヒトラーは夫アロイス・ヒトラーの墓の隣りに埋葬された
翌日 クビツェク家
母「こういう時こそ、家族と皆でクリスマスを平穏に過ごすのがよいでしょう」
彡()()「そうですね」
彼はそう言ったが別れ際に、彼は無愛想に言った
彡()()「ラウバルの所へは行かへん」
(´・ω・`)「それなら一体どこに行くつもりだい? 今日はクリスマスイブなんだよ」
(´・ω・`)「僕の家で一緒にどうだい」
彡()()「ありがたいが、遠慮しとくで」
彡()()「ワイは…」
彡(゜)(<)「たぶん、ステファニーのところへ行くで!」
(´・ω・`)(彼はステファニーのところ、つまり夢の中へ向かった)
後に彼はクリスマスイブについて、何時間も外にいた、とだけ話してくれた 朝方になってようやく家に戻り、眠ったそうだ
何を考え、感じ、悩んでいたかは、話してくれなかった
1908年 2月
ウィーン駅
ざわ…
ざわ…
(´゜ω゜`)「あう…あう…」
「どけ」
(´・ω・`)「す、すいません…」
「邪魔だ」 「FackYou」
(´゜ω゜`)「あわわわ」
(´;ω;`)(か…帰りたい…)
(´;ω;`)(アドルフは一体どこにいるんだろう…)
彡(゜)(゜)「おーいクビツェク、ここやー!」
(´;ω;`)「アドルフ! ああよかった…一生ここをさまよい続けるのかと思ったよ…」
彡(゜)(゜)「おおげさやで 全く相変わらずやなぁ」
(´・ω・`)「そういう君はすっかり都会に馴染んでるみたいだね」
(´・ω・`)(混じりっ気ないグレーの冬用コート、グレーの帽子、象牙の握りのついたステッキ…こっちでも相変わらず服装はキチッとしてるなぁ)
彡(゜)(゜)「トランクでか杉ィ! 完全なお上りさんやんけ!」
(´・ω・`)「はは…母さんが色んなもの詰めこんでさ」
ざわ… ざわ…
彡(゜)(゜)「とりあえずこッから出るで 五月蝿くてかなわんわ」
(´-ω-`)「うん、ぜひともそうしたいね…」
彡(゜)(゜)「ほないくで」
(´・ω・`)(まず僕達はアドルフの家に向かうことにした 取り敢えず二人で住む部屋を見つけるまでの拠点だ)
(´・ω・`)(そして歩くこと数十分)
彡(゜)(゜)「ここが今ワイの住んでるところや」
(´゜ω゜`)「あれ…予想以上に綺麗なところだね…」
彡(゜)(゜)「表向きだけや」ガチャ
(´>ω<`)「うわっ、石油くさっ!!」
彡(゜)(゜)「大家は留守みたいや」
(´・ω・`)(アドルフの部屋はテーブルにも、ベッドにも、いたるところにスケッチがあった)
(´・ω・`)(とにかく、全てが粗末で荒れ果てていた)
彡(゜)(゜)「まっ、少し休憩しようや」
(´・ω・`)「食料も沢山持ってきたよ」
彡(゜)(゜)「お、おばさんgjやで」
(´・ω・`)「まずはジャガイモのパンケーキ」
彡(^)(^)「ドイツの家庭料理の代表格やな!」パクー
彡(>)(<)「あ~甘さが抑えてあった塩味が染みとる マッマが作ってくれたのを思い出すで~」
(´・ω・`)「だから肉料理にも合うんだよね はいローストポーク」
彡(゜)(゜)「肉食うの久しぶりや! あ~この歯応えとパンケーキのふっくら感がええな」
(´・ω・`)「はい次はブフテルン菓子 バニラソースをかけてね」
彡(^)(^)「お、ワイの好物やん 覚えとったんか」モグー
彡(-)(-)「この甘み…食感…チェコ生まれのものとは信じられん… 美味や」
彡(゜)(゜)「流石、まだ母親がいるだけあるな!」
(´・ω・`)(そらから、僕達は王様のようにたらふく食べた)
彡(゜)(゜)「家庭の味に、そしてクビツェクのウィーン進出に乾杯や!」
(´・ω・`)「かんぱーい」カツーン
彡(゜)(゜)「そういえば、ステファニーは今どうしてるんや」
(´・ω・`)「……」
彡()()「貴様…任務を怠ったな…」
(´・ω<`)
彡(゜)(゜)「ちっ、自分で出かけるべきやったで」
夕方
彡(゜)(゜)「クビツェク、宮廷劇場にいくで!」
(´・ω・`)「ええ…今日はもう休みたいんだけど…」
彡(゜)(゜)「ウィーンに来て、宮廷劇場も見ずに眠れるわけないやろ ほな行くで!」
(´・ω-`)(うーんこの感じもひさびさだなぁ)
宮廷劇場前
(´゜ω゜`)「おお、ホールからもうリンツのとは比べ物にならないや…」
彡(゜)(゜)「大理石の欄干、ビロードの絨毯、金色に化粧された天井… 大都市がなせる技や」
(´・ω・`)(それから、僕達は教会、聖堂、塔など、大都市の豪華絢爛な建物を見て回った)
(´゜ω゜`)(リンツのものとは何もかもが桁違いで、僕はまるで別の惑星に連れてこられた気がした)
彡(゜)(゜)
(´・ω・`)「このエイリアンに…フフ…」
彡(●)(●)「この先に普墺戦争時代の収容所があるんや…ぶちこんだろか…?」
(´・ω#`)(こうして僕達は帰宅した その頃にはもう真夜中で管理人さんにチップを払う必要があった)
彡(゜)(゜)「ちっ、足下見おって…」
アドルフの部屋
彡(゜)(゜)「でな、クビツェク、ケルントナー通りの風景は…」
(´-ω-`)「うん…うん…」z
彡(゜)(゜)「ちっ、疲れ果てて寝おった 相変わらず貧弱な奴やで」
(´-ω-`)(気づけば、眠っていた)
(´-ω-`)(でも、この日はあまりに色々なことがありすぎた)
(´-ω-`)(家族との別れ、列車の旅、到着、喧騒、雑踏、裏路地、宮廷劇場)
(´-ω-`)(明日からは、新しい部屋探し それもピアノを弾けるところじゃいけないから大変そ…)
こうして、ウィーンでの初日は終わった
翌日
(´・ω・`)「うーん、やっぱりピアノを置いていいかって聞くとどこからも苦い顔されるね」
彡(゜)(゜)「まっ、当然やな」
彡(゜)(゜)「それに音楽家の部屋探しなんて駄目で元々や 根気強くいくで」
(´・ω・`)「うん、そうだね」
ーーーーー
ーーー
ー
(´;ω;`)「まずいよ…もう夕方だ 今日中に決めて明日音楽院に受験する予定だったのに…」
彡(゜)(゜)「しゃあないな…奥の手や 着いてこいや」
(´・ω・`)「?」
アドルフの借家前
(´・ω・`)「結局帰ってきただけじゃないか…」
彡(゜)(゜)「なぁに、お前は部屋で待っとれ」
(´・ω・`)「一体どうするつもりなんだろ…」
彡(゜)(゜)「大家と話がまとまったで! ここを引き払って二階の大きい部屋に移ることになったで ピアノもOKや!」
(´゜ω゜`)「ここの上!?」
彡(゜)(゜)「だから最後の手段言うたやろ 南京虫はいるが20クローネとお得やぞ」
(´・ω・`)「うん…そうだね…贅沢は言えないね」
こうして、元々アドルフが借りていた借家の二階の広いスペースが僕とアドルフの城となった
翌日
(´・ω・`)「じゃ、僕は音楽院の受験に行くよ」
彡(^)(^)「おう!頑張るんやで」
バタン
彡(゜)(゜)「……」
(´・ω・`)(受験はすぐに受けることができた)
(´・ω・`)(一般的な音楽の試験、その次は歌…そして和声学の筆記試験…)
(´・ω・`)(僕は音楽史については独学だったから少しそこが不安だった)
校長「受験生番号334番アウグスト・クビツェク君…」
(´・ω・`)ドキドキ
校長「おめでとう、合格だ」
(´^ω^`)「あ、ありがとうござます! ありがとうございます!」
(´・ω・`)(それからはもう、致せりつくせりなカリキュラムの説明がされた)
(´・ω・`)(プロの指揮者を紹介され、その人の下で総譜の研究や指揮を学べることになった)
(´・ω・`)(そして、僕はヴィオラ奏者として学内オーケストラにもいれてもらえた)
(´・ω・`)(ウィーンにきた当初は混乱したけど、今や僕はしっかりした地歩を固めることができた)
(´ ω `)(これまで僕は音楽の中に慰めと活力を見いだしていた)
(´・ω・`)(でもこれからは、音楽が僕の人生の中心になるんだ!)
(´・ω・`)(ついに、僕は椅子張り職人の埃っぽい仕事場から解放されて、音楽に生きることができるようになった)
(´^ω^`)
アドルフ…今すぐこのことを君に知らせたいよ
これでようやく、僕も君と同じ芸術家の登龍門に立ったんだよ…!
その頃
彡(゜)(゜)「さて…一年ぶりやな」
【大松造形美術大学】
彡(゜)(゜)
ー
ーーー
ーーーーー
一年前
教授松「受験番号334番、アドルフ・ヒトラー君」
彡(゜)(゜)「はいやで」
彡(^)(^)(これは主席やろなぁ…)
教授松「不合格だぞ」
彡(゜)(゜)「ファ!!? なんでや!!」
教授松「人物画が提出されてないぞ 合格させる訳にはいかないぞ」
彡(゜)(゜)「で、でも…その分は風景画の出来で補えるやろ…もっかいキチンと見てや…」
教授松「……」
教授松「正直こっちも微妙だぞ」
彡()()「ほげっ……」
ーーーーー
ーーー
ー
現在
彡(゜)(゜)「今度はちゃんと人物画も持ってきたで…」
彡(-)(-)「ぬかりはない筈や…だから頼む…頼むで…」
教授松「不合格だぞ」
彡(●)(●)「な、ななな、何でや!!!? ちゃんと人物画も提出したやろ!!」
教授松「単純に実力不足だぞ」
彡()()「な…」
彡(゜)(゜)「た……頼む……空気読んでくれや……親友が来たんや……今年合格せな……ワイは……ワイは……」
教授松「知らないぞ」
彡()()「ほげっ……」
教授松「代わりにといっては何だが一つ助言だぞ この風景画を見るに、お前は建築家向きだぞ」
彡(゜)(゜)「建築家……?」
彡(゜)(゜)「せや…確かにそうや ワイは芸術も好きやが建築も好きなんや 何より都市の設計を想像するのも好きなんや…なんで今まで気付かんかったんやろ…」
教授松「わかったなら帰るんだぞ 次」
彡()()「くっ…」
教授松「受験番号335番エゴン・シーレ君、合格だぞ」
彡(゜)(゜)「ファ!!? こいつの訳わからん絵が合格ゥ!? 」
教授松「シーレ君は天才的な現代芸術を書くんだぞ ドラフト1位だぞ」
彡(●)(●)「現代ィ!? こんなものが……こんなものよりワイの絵の方が下なんか!!? こんな……退廃的な…」
教授松「いい加減にするんだぞ」
彡(●)(●)「ええんか!? 芸術家になれんかったワイがグレて犯罪者になってもお前の責任やぞ!!!!」
教授松「こいつをつまみ出すんだぞ」
彡(●)(●)「ふざけんな!!! こんな美大こっちから願い下げじゃボケェ!!! 」
裏路地
彡()()「くそ…くそ…」
彡(゜)(゜)「いや、…あんな美大入っても録なもんやないやろ… それに、建築家いう新しい目標も出来たやんけ」
彡(゜)(゜)「早速、建築学科について調べるで」
彡()()「す、数学の知識…!? こ、こ、高卒資格が必要……!?」
ー
ーー
ーーー
(*^◯^*) 『アドルフ、実科学校だけは卒業しとくんだ!』
彡(゜)(゜)『ふん、あんな馬鹿どもと一緒にいても馬鹿が移るだけや』
(*^◯^*)『高卒資格は、これから絶対に必要になるんだ! 言うことを聞くんだ!』
彡(゜)(゜)『んなもん必要ない ワイは芸術家になるんや! 芸術家に高卒資格なんて不要や!』
ーーー
ーー
ー
彡()()「ワイは…なんて…取り返しのつかないことを…」
彡()()「ワイは…落ちこぼれたんか…? ワイは… ワイは…」
彡(●)(●)「ンゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!」
夜 アドルフ・クビツェクの借家
彡()()「」ガチャ
(´・ω・`)「アドルフ、遅かったね! どこ行ってたんだい」
彡()()「ああ…少し……な 音大の受験どやった?」
(´^ω^`)「ふふふ…バッチリ合格さ! これで二人でとも学生の身分だね!」
彡()()「おお…よかったやないか ホンマに…ホンマに…」
(´^ω^`)「うん…うん それでね、今までは、『音楽家』っていうやや曖昧な夢だったんだけど、今日明確に僕の夢が定まったよ!」
彡()()「ほう…なんや…? 聞かせてや」
(´^ω^`)「笑わないで聞いてよ…? 僕は…指揮者になろうと思うんだ!」
彡()()「指揮者… そら大胆に出たなぁ」
(´^ω^`)「うん 紹介された先生が素晴らしい人でさ」
彡()()ピクッ「先生…?」
(´^ω^`)「うん! 普段は大学で教鞭をとってて、講演の際は指揮者を務めてる凄い人なんだ!」
彡()()ピクッ「…教授?」
(´^ω^`)「うん! レールに落ちないように頑張らなきゃ」
彡()()ピクッ「レール…」
彡(●)(●)「ンゴ…!!!」
(´^ω^`)
彡(●)(●)「」
彡()()
彡(-)(-)「……」
彡(゜)(゜)「せやな、しっかり勉強せなアカンな 後悔しないように頑張るんやぞ」
(´・ω・`)「? うん!!勿論さ!!」
彡(^)(^)「さ、今日はクビツェクの合格祝いや! ジャンジャン飲むで!」
(´^ω^`)「飲もう飲もう!」
この時、僕は合格の嬉しさの余り、アドルフの心境に気付くことができなかった 今思えば、親友として恥ずべきことだと思う
(´・ω・`)「ここにグランドピアノを置きたいんだけど…」
彡(゜)(゜)「おいおい、ワイを音楽家にするつもりかいな? もっと奥に置けるやろ」
(´・ω・`)「はは、アドルフは部屋中を歩き回るのが癖だからなぁ」
アドルフが美大に落ちたという事実を察するのに、それほど時間はようしなかった
彡(゜)(゜)「まっ、その位はええ ピアノによってワイの知識欲も活発になるってもんや」
彡(^)(^)「よっしゃ、もう一回乾杯や」
(´^ω^`)『かんぱーい!』彡(^)(^)
その頃には、アドルフは美大を諦め、建築家になるための独学を始めていた
なんにせよ、こうしてウィーンでの共同生活は始まった
ウィーンでの生活が始まって2ヶ月目のある日
朝6時
(´・ω-`)゜゜「ふあぁーあ さて、大学に行くか」
彡(-)(-)「ンゴー ンゴー」
(´・ω・`)(そーっと そーっと)ガチャ
(´・ω・`)(アドルフの朝は遅い 彼はいつも遅くまで建築家の勉強をしたり読書をしたりして、起きるのはいつも昼頃だ)
(´・ω・`)(対して僕は夜に楽器を弾くわけにもいかないから、さっさと寝て朝早く学校に行く)
学校
教授「ふむ、君の知識は目に見張るものがあるな」
(´・ω・`)「ありがとうございます」
教授「君になら任せられるかもな…」
(´・ω・`)「?」
教授「実は課外レッスンの仕事の枠があってね 報酬も多くはないが出る どうだい、やらないか?」
(´^ω^`)「ぜ、是非お願いします!」
(´・ω・`)(僕は音楽院にとても早く馴染むことができた 正当に評価され、優秀だと褒められた)
(´・ω・`)(こうして僕は、満足と幸福に浸りながら元気いっぱいに、毎朝音楽院に行っている)
借家
(´・ω・`)「来期の時間割はこんなところでいいかな」ペター
彡(゜)(-)「チッ…」
(´・ω・`)(おそらく時間割は、僕の将来の公的な保証書のように見えたのかもしれない)
彡(●)(●)「この大学というやつは! 古くて硬直した時代遅れの役人、理解不能な官僚、愚かな木っ端役人なんや! 大学なんか全部消し飛べや!」
(´・ω・`)(彼の顔色は死人のように青白く、口元からも血の気が引き、唇はほとんど真っ白だった)
(´゜ω゜`)(しかし彼の目は燃えるように輝いていた ぞっとするくらい…)
(´・ω・`)「でも、君が非難する大学の人たちは、やっぱり教授や先生なんだから色々彼らから学べることもあるんじゃない?」
彡(●)(●)「あの連中はワイを認めずに放り出しおった ワイは大学から締め出された…」
(´・ω-`)「……」
(´・ω・`)「それで、これからどうするんだい?」
彡(●)(●)「どうするんだい、と言ったな?」
(´-ω-`) (きっと、この質問については彼も何度も何度も自分に問いかけたんだろう 他に話せる人だっていなかったんだから…)
彡(゜)(゜)「ワイには本がある! 図書館がある! 大学なんぞ行かなくても建築の勉強はできるんや!」
これが、彼のウィーン生活の指針となった
あくる日 宮殿通り
彡(゜)(゜)「はぁー、この国はホンマ駄目やな」
彡(゜)(゜)「チェコ人、ハンガリー人、スロバキア人、ルーマニア人、クロアチア人、イタリア人……民族の寄せ集め…傲慢な支配者層」
彡(゜)(゜)「愚かや 実に愚かや この間おまえと行った遊園地もなんやあれは! あんなおもちゃでばか騒ぎしおって…」
(´・ω・`)(僕はそれなりに楽しめたけどね…)
(´・ω・`)「あ、アドルフ、皇帝が馬車に乗って宮殿に入っていくよ!」
彡(゜)(゜)「ほーんで?」
(´・ω・`)「即位60年だから最近は忙しいんだろうね」
彡(゜)(゜)「あーはいはい せやな」
(´・ω・`)「君はつくづく、この国の芸術以外の殆どを嫌ってるね…」
彡(゜)(゜)「なーにが42年の平和を築いた皇帝や 平穏な世界なんてつまらんだけや」
(´・ω・`)「この前ロシアとニンジャの国が戦争したじゃない」
彡(゜)(゜)「ゆうてもワイらと関係ないやん さっさと起きへんかなぁー 一心不乱の大戦争! んで世の中の嫌なもん全部吹き飛ばせや」
(´・ω・`)「今の世の中戦争なんて起こる訳ないじゃん 大学の先生もそう言ってたよ」
彡(゜)(゜)「いいや、近いうち革命的な事件が必ず起こるで! てか起これや!」
(´・ω・`)(戦争が起こったら僕の指揮者の夢も駄目になるんだろうなぁ ま、戦争起きた時の心配なんて杞憂だよね)
彡(゜)(゜)「大体、この間のボスニア併合で戦争になるとこやったやないか! あんなもん国が弱ってますって言ってるようなもんやで! やっぱり教授なんて信用ならんな!」
彡(゜)(゜)「クビツェク、お前も教授やら他人に聞いた話しを鵜呑みにするんやなくて自分の頭で考えるんやで」
(´・ω-`)「はいはい、解ったよ」
(´・ω・`)(アドルフは、ウィーンでの生活を送るうちに政治への関心を高めていった)
(´・ω・`)(何より彼は『概念』というものを知らなかった)
彡(^)(^)「お、国民公園についたで! ここの英雄広場がパレードをするのに最適なんや!」
(´・ω・`)「リンツのウアファール地区を思い出すね」
彡(゜)(゜)「せやな… ああ…住むところに関してはあの頃のがよかったな… また帰ったら南京虫を駆除せな」
(´-ω-`)「それは言わない約束でしょ…」
(´・ω・`)(芸術の話をしていても、いつの間にか政治の話に移り代わってることも多くなった)
彡(゜)(゜)「こんなボロいアパートも、貧民も、体制もいづれ起こる『革命の嵐』が『理想国家』を誕生させることで払拭されるで」
彡(゜)(゜)「社会改革や それで新しい時代が到来し、劣悪な住宅は取り壊されるんや…」
彡(゜)(゜)「ワイの独学が完了する頃にそれはやってくるんや その時には正規の資格なんていらない実際の能力だけがものをいう素晴らしい時代が到来するんや」
彡(゜)(゜)「美大の目的は教授どもが自分の地位を脅かすワイの出世を阻むことにあるんや」
(´・ω・`)(彼は、美大に行くよりも行かない方が自分は進歩することを、教授たちに示そうとしていた)
(´・ω・`)(僕は思う 教授たちはあっさりアドルフの入学を拒否したけど、それによって入学させた場合よりも強力な勉強意欲とエネルギーを彼に与えることになったと)
(´・ω・`)「うーん、でもその独学の期間中どうやって生活するんだい? かなりの時間がかかるとおもうんだけど」
彡(゜)(゜)「そんなことは親父とマッマの遺族年金と孤児年金が切れてから考えるで」
(´・ω・`)(君の場合は新しい計画や構想に没頭するから余計に遠回りしそうなんだけどなぁ…)
彡(゜)(゜)「お前はええな 若い婦人に課外レッスンして金稼げるんやからな」
(´・ω・`)「あれは僕の努力じゃないよ 運がよかっただけさ」
(´・ω・`)「それに、僕に君ほどの才能があればとっくに何か副業を探しているよ」
彡(゜)(゜)「ほう…というと?」
(´・ω・`)「たとえば、アドルフはスケッチができるじゃん 新聞社や出版社でイラストレーターの仕事を探すのはどうだい」
彡(゜)(-)「ワイに対する期待は嬉しいがな、おそらく報道関係のスケッチなら写真の方がええやろ いくら優秀なイラストレーターでもカメラほど早くは書けん」
(´・ω・`)「じゃ、演劇の批評は? 君はもうその仕事をしてるようなものだし 君の批評を聞くウィーン市民は僕でなければならない訳じゃないだろう?」
(´・ω・`)「もちろん、過激な発言なんかには気を使う必要はあるけどね」
彡(゜)(゜)「ウィーン市民にはドイツ系のオペラだけやなくてイタリアやロシアのものも必要やろ」
彡(-)(-)「芸術は、特定の民族から生まれても、民族的な境界には束縛されんのや」
彡(゜)(゜)ギュルギュル
(´・ω・`)「ちょ…アドルフ…公園のど真ん中で脱糞しないでよ…」
彡()()「ワイがそんなことするわけないやろ…なに言うとんのや」
(´・ω・`)「あれ……なんとなくそんな気がしたんだけど」
彡(゜)(゜)「これは腹が空いとるだけや」
(´・ω・`)「君はいつも腹ペコだよね… 僕の母さんの料理を食べて以来パンとミルクとバターしか食べてないんじゃない?」
彡(゜)(゜)「飯なんてそれだけで十分や」
(´・ω・`)「僕も甘やかされてきた訳じゃないけど君の食事内容にはついていけないよ…」
彡(゜)(゜)「そろそろ帰るか 浮浪者が多くなってきよった」
(´・ω・`)「そうだね」
彡(゜)(゜)「おっ、図書館やんけ 寄ったろ!」
(´・ω・`)「あれ?君はあっちの図書館を使ってるんじゃなかったっけ?」
彡(゜)(゜)「色んな本を借りられるように3つの図書館の会員になっとるで」
(´・ω・`)「そ、そうだったんだ」
借家
彡(゜)(゜)パラパラ
(´・ω・`)「さっきから何を読んでいるんだい?」
彡(゜)(゜)「ル・ボンの『群衆心理』や これは凄いで」
(´゜ω゜`)「また建築と関係ない本読んでるんだね… どっちかと言うとそれは政治系の本じゃないの?」
彡(゜)(゜)「これからは群衆が中心の世界になるからな 勉強しとかんと」
彡(-)(-)「それに、フランス革命でも暴徒化した市民にいくつもの建築が破壊されたんや…」
(´・ω・`)「でも、直接建築には関係しないよね…」
彡(゜)(゜)「お前は本当に…なんというか小市民的やなぁ 金や職に関わらん本でも進んで読むべきやぞ」
(´・ω・`)(このようにアドルフは、ひたすら読書していた 本のない彼を想像することはできないくらいだ)
彡(^)(^)「おお、この本は本当に参考になるなぁ…」
彡(゜)(゜)「クビツェク! お前も愚かな群衆にならんようにこの本を読むんや! これは世の中の真実やぞ!」
(´・ω・`)「わかったよ…どれどれ」
彡(゜)(゜)「なにしとんねん! なんで目次をとばすんや」
(´・ω・`)「え…どうせ全部読むし…」
彡(゜)(゜)「全く、お前は本の読み方も知らんのやな! ええか、読書ってのは本を選ぶ時から始まっとるんや」
(´・ω・`)(この点で彼は、平均的な読書家よりも明らかに優れていた)
彡(゜)(゜)「ワイは馬鹿みたいに本を読む奴を知っとる 奴らは本から本へ一字一句読む…」
彡(`)(´)「ワイはそいつらを『博識』とは呼ばん 確かにそいつらは膨大な知識を得るが、脳はその取り入れた知識を分類整理する方法を知らん」
彡(゜)(゜)「一番大事なのは目次なんやで そして、最初に核心部分から読むんや そしてそこだけを覚えて頭の図書館にしまい込むんや」
(´・ω・`)(彼の読書は、自分の考えの中の欠けたピースを埋めるためのいわば知識の補完、つまりは自己確認の意味合いが強かったのかもしてない)
彡(^)(^)「この『群衆心理』は全部が核心や!そういう本だけ購入して手元に置いとくんや!」
彡(゜)(゜)「つうことで今から本屋に行くで!」
(´・ω・`)「ええ~」
彡(^)(^)「いやぁ~こんな本に出会ったんは『ドイツ英雄伝説』以来かもしれんな! はよ行くで」
彡(^)(^)「♪」テクテク
(´・ω・`)「君は確かに凄い記憶力を持ってるけど、本当に本だけで勉強を完成させるつもりかい?」ムキュムキュ
彡(゜)(゜)「ファ!?」
彡(-)(-)ハァー
彡(゜)(゜)「とにかくお前には教師が必要みたいやな ワイに教師は余計なだけや」
彡(゜)(゜)「お前みたいなのを他人の机で学ぶ居候っていうんやで」
(´・ω・`)「僕にはよくわからないや」
帰宅後
彡(゜)(゜)「つまり、群衆に理論は通じんで感情が聞くんや」
彡(^)(^)「それみろや、この本の著者もワイと同じ考えや」
彼はよく、読書の後こう言った
>>307
カリスマ性やな
んじゃぼちぼちいくで
劇場
彡(^)(^)「やっぱりワーグナーは最高や!」
(´・ω・`)「リンツの劇場でも何回も聞いたけどやっぱり都会でのものとは格が違ってくるね」
彡(゜)(゜)「ワイはいつかドイツ民族の巡礼の地・バイロイトに訪れるで ヴァーンフリート館を見て、ワーグナーの墓参りをするんや…」
彡(^)(^)「そしてワーグナー自身が作った劇場でワーグナーの作品を見るんや! くぅ~夢が広がるで!」
アドルフの生涯では多くの夢と願望が未完のままに終わったが、この願望だけは完璧に叶った
チラ……チラ…
(´・ω・`)(……ん?)
チラ……チラ……
(´・ω・`)(向こうの婦人たちがこっちを見てる……?)
(´・ω・`)(もしかして……僕にも春が……)ワクワク
チラ……チラ……
彡(゜)(゜)
(´・ω・`)(……)
(´・ω・`)(違う…この視線はアドルフに向けられたものだ……!)
(´・ω・`)(アドルフは質素な服装で素っ気ない控え目な態度……)
(´・ω・`)(僕と大して変わらないのに……一体どこに差があるんだろう?)
(´・ω・`)(婦人たちは、彼の謎の魅力を感じとっていた)
(´・ω・`)(時には、振り向いて彼を見る婦人すらいた(これは宮廷劇場においてマナー違反))
チラ……チラ……
彡(゜)(゜)「…チッ 行くでクビツェク」
(´・ω・`)「う、うん」
(´・ω・`)(さらに驚くことに、これだけ人気があってもアドルフは何もしなかった)
彡(゜)(゜)「全く、なっとらん、なっとらんなぁ」
劇場 外
(´・ω・`)「君は強い女運を持ってるのに、どうしてそれを利用しないんだい?」
彡(゜)(゜)「……なんのことや? それより来週の公演は~」
(´・ω・`)(アドルフが周囲の出来事を見逃すとは思えない きっと気付こうとしていないんだ)
(´・ω・`)(なんでチャンスがあるのにそれを掴まないんだろう?)
彡(゜)(゜)「そろそろ後半が始まるで 戻ろうや」
(´・ω・`)「うん」
女召使「あの……これ……」
女召使はアドルフの袖を引っ張り、カードを一枚手渡した
彡(゜)(゜)「はぁ…どうも」
女召使「」たったったっ
(´゜ω゜`)(つ、遂に大きな秘密を掴んだぞ! これから新しいロマンスが始まるに違いない!)
彡(-)(-)ハァー
彡(゜)(゜)「またや」
(´・ω・`)「え…」
彡(゜)(゜)「見てみいや、これ お前やったらこの意味ありげな誘いに応じるか?」
(´゜ω゜`)「これは僕の問題じゃなくて、君の問題じゃないか」
(´・ω・`)「でも僕なら、あの婦人を失望させたくないかな」
彡(゜)(゜)「そか」
ヴー
彡(゜)(゜)「お、そろそろ始まるで」
(´・ω・`)(一体女性たちはアドルフのどこにそれほど魅力を感じるんだろう?)
(´・ω・`)(たしかに彼は均整のとれた顔立ちでスラリとした若者だ)
(´・ω・`)(でも一般的に「美男子」と呼ばれる容姿じゃあない)
彡(゜)(゜)「あの主役、なかなかええ男やんけ」
(´・ω・`)(あの舞台の上で踊ってる美男子とアドルフの違いはなんだろう…?)
(´・ω・`)(考えられる線といえば……並外れた明るい目……)
(´・ω・`)(そして妙に厳しく、禁欲的な表情……?)
(´・ω・`)(う~ん……)
オペラ終了後 街道
(´・ω・`)「そういえば、アドルフはステファニー以外に好きになった人っているの?」
彡(゜)(゜)「おらん ステファニー以外の女なんて眼中にもないで」
彡(゜)(゜)「ステファニーこそドイツ女性の理想像なんや… ステファニー以外の女にうつつを抜かすなんてことはドイツ民族に対する冒涜や」
(´・ω・`)(彼は既にステファニーを諦めていたけど、彼女はアドルフの道徳観の拠り所として彼の心中に生き続けた)
彡(゜)(゜)「彼女がウィーンにいたなんて信じられんな この都市は売春が蔓延るドイツ女性の敵や」
彡(゜)(゜)「全てはこの国の多民族性が悪いんや! チェコ人、マジャール人、クロアチア人、イタリア人が~!」
(´・ω・`)(ま~た始まった 最近は何を話してもここに行き着く)
交差点
彡(゜)(゜)「この都市の性は乱れきっとる! 例えばバ……」
(´・ω・`)「バ?」
紳士ピクッ
彡(-)(-)「…いや、お前は知らんでええ」
紳士ジー
紳士「君たち、最近の暮らしぶりは如何かね?」
(´・ω・`)(おっ、身なりが上流階級のそれだ)
彡(゜)(゜)「いいとは言えませんな なにせ貧乏学生なもので」
(´・ω・`)「彼は建築を学び、僕は音楽を学んでいます」
紳士「なるほど、ならば未来のオーストリアを担う若者という訳だ」
紳士「まずうち……の近くにホテルがあるんだ 夕食を食べていかない……か?」
(´・ω・`)「えっ、本当ですか!?」
彡(゜)(゜)「……」
(´・ω・`)「アドルフ、たまにはこういうのもいいんじゃない?」
彡(゜)(゜)「…せやな ご馳走になろか」
ホテル前
(´゜ω゜`)「うわぁ……大きいところですね 屋上があんなに高い」
彡(゜)(゜)「ほう、中々ええ建築やな」
紳士ジー
紳士「さあ、早速中にイこうか」
ホテル内
紳士「さぁ、好きなものを注文するといい」
(´・ω・`)「じゃあ僕は…」
彡(゜)(゜)「……」
(´^ω^`)「ふふ、僕こんなところに来たことないよ! アドルフは何を食べる?」
彡(゜)(゜)「せやな…じゃあワイは」
食後
(´^ω^`)「ああ~美味しかった 本当に今日はありがとうございます」
(´・ω・`)「って、あの紳士の方は?」
彡(゜)(゜)「いつの間にかいなくなったな」
紳士「おまたせ デザートはケーキしかなかったんだけどいいかな」
(´・ω・`)「デ、デザートまで!」
彡(^)(^)「おっ、甘い物はワイの好物や」
食後
(´^ω^`)「ああ~もうお腹いっぱいだ」
彡(゜)(゜)「すっかりご馳走になりました」
紳士「いやいや、若者を応援することが大人の務めというものさ」
紳士「しかし、君は最近の若者にしては鋭い考えを持ってるようだね 先程交差点で君たちの話を聞いたらイても立ってもいられずにね」
(´・ω・`)「アドルフはすっごく女の人にモテるんですよ でも、全然それに興味を示さないんです」
彡(゜)(゜)「おいおい、よせって」
紳士「ほう…実に興味深いね」
(´・ω・`)「さっきだって女の人からお誘いのカードを貰ったのにチラっと見ただけでしまっちゃうんです」
紳士「ははは、君は私の若い頃にそっくりだね」
紳士「私はフェクラブルックの工場主をしていてね、最近は金目当ての婦人ばかりに寄られてね」
彡(゜)(゜)「最近のウィーンは欲にまみれてますからな かつての英雄がいた時代が輝かしいばかりです」
紳士「本当にね… 筋骨隆々の男達が戦場で合間見えていた時代はもう遠い昔だ」
紳士「君の方は音楽を学んでいるんだってね 私は最近室内音楽に凝っているんだが」
(´・ω・`)「本当ですか! 室内での音響は~」
喋ること数分
(´・ω-`)「うーん、少し眠くなってきたかな……?」
彡(゜)(゜)「はは、彼は毎朝早いのでこの時間はもうベッドの上なんです ではそろそろ」
紳士「ああ、今日は実に楽しかったよ」
紳士「それと君……」
二人の借家
彡(゜)(゜)「クビツェク、起きろや」
(´・ω-`)゜゜「うーん、あれ、僕いつの間にか寝ちゃってた?」
彡(゜)(゜)「全く、お前を背負って来るのは大変やったで」
彡(゜)(゜)「ところでクビツェク、お前あの紳士を気に入ったか?」
(´・ω・`)「申し分ないよ! 芸術を好み、とても教養ある人だ」
彡(゜)(゜)「他には?」
(´・ω・`)「? 他に何があるんだい?」
彡(゜)(゜)「クビツェク、どうやらお前は肝心なことを何もわかっとらんな」
彡(゜)(゜)「このカードを見てみいや」
(´・ω・`)「何のカードだい? 名刺?」
『また、今日と同じホテルにおいで』
彡(゜)(゜)「つまり、あいつはホモや」
(´゜ω゜`)「ええ……!? 何それ……?」
彡(゜)(゜)「ホモってのはな……」
ーーーーーー
(´゜ω゜`)「ひええ…… アドルフ、まさかまた行くの……?」
彡(゜)(゜)「行くわけないやろ、このドアホ! 名刺はストーブにポイーや」
アドルフは大都市のさまざまな性的倒錯に強い嫌悪感をもって立ち向かっており、彼は自身も、若者がよく耽るマスターベーションを拒否していた
堕落した都市ウィーンの真ん中で、アドルフは自身の周囲に堅固な防壁を築いていた
(´・ω・`)「うう…なんかショックだよ」
彡(゜)(゜)「まだまだクビツェクは田舎もんやな ここきて1年やぞ? ええ加減都会に染まれや」
それによって、危険な周囲から独立して内面的自由の中に自分の身を置くことができたのだ
彡(゜)(゜)ギュルギュル
(´・ω・`)「はは、アドルフまた空腹でお腹が鳴ってるよ ……あれ? さっきご馳走食べたのになんで? 」
彡(゜)(゜)「さ、最後に飲んだ紅茶が腹に合わんかったみたいやな!」
彼は孤独であり続け、修道士のような禁欲生活の中で自分の存在を守り続けているのだ
1908年4月
大家「クビツェクさんに手紙ですよ」
(´・ω・`)「どうも 何かな」ビリー
(´・ω・`)「……」
彡(゜)(゜)「どしたクビツェク」
(´・ω・`)「これだよ よんでごらん」
彡(゜)(゜)「どれどれ」
彡(゜)(゜)「……」
彡(●)(●)「クビツェク、絶対行っては駄目や もし行ったらおまえは愚か者や こんな令状、ワイが破り捨てたる!」
(´゜ω゜`)「あっ、駄目だよ!」
(´゜ω゜`)「全く、ヒヤヒヤさせないでよ」ゼーゼー
彡(。)(゜)「くそ、一体どうすれば……」
(´・ω・`)「まだ合格になるとは決まってないよ 去年肺病になったし」
彡(゜)(゜)「せやな、とにかく、リンツに戻って兵役検査は受けた方がええ」
彡(●)(●)「だがもし、合格した場合はこっそり越境してドイツに行くんや 絶対ハプスブルク家の兵隊になったらアカン」
(´・ω・`)「そんなことできるのかな…」
彡(゜)(゜)「あと9ヶ月でワイも20や その時がきたらワイはそうするで」
(´・ω・`)「とにかく、音楽院の先生に相談してみるよ」
音楽院
校長「君は音楽院生だから、1年志願兵になる資格がある でも君は職人の息子だから後備兵に志願したほうがいい」
(´・ω・`)「兵役を逃れる為にドイツに行くという方法はどうでしょうか」
校長「!? 悪いことは言わないからやめておきなさい……」
校長「とにかく、ご両親に手紙を出すんだ」
(´・ω・`)「はい」
数日後
父『お前はなんてことを言い出すんだい?』
(´・ω・`)「えっ」
父『国境越えなんてしたら脱走とみなされ罰せられるだろう そしたら故郷に帰ることができなくなり、もう私達と会うこともできなくなる』
(´゜ω゜`)「これは校長先生の言う通りにした方が良さそうだ…」
(´・ω・`)「ということで、後備兵に志願するために今期の授業と学期末コンクールが終わったら一旦リンツに帰るよ」
彡(゜)(゜)「ムム……たとえ3ヶ月といえどもハプスブルクの兵隊に……」
彡(゜)(゜)「まっ、ワイと違ってお前は家族と故郷があるからしゃあないな」
(´・ω・`)「やっぱり自分の時はやるつもりなんだね……」
彡(゜)(゜)「それより、期末のコンサートが近いんやろ? 指揮者への進路が決まるイベント言うてたやないか まずはそれに集中しろや」
(´・ω・`)「うん そうするよ」
こうして、いつも通りの日々が過ぎていった
数ヵ月後 ヨハンネスホール
♪~♪~♪~
(´・ω・`)(よし、カールもソリストも練習どうりにやれてる)
(´・ω・`)(簡単な演奏じゃないけど…このままミスなくいってくれ…!)
バチバチパチパチパチパチパチパチ
(´・ω・`;)(ふぅ、なんとか無事に終わったぞ)
(´゜ω゜`)(でも本当の難関は次…! 僕の作曲したオーケストラ曲がプロの宮廷歌手に歌われるんだ…!)
アーツキホーシタチヨー
(´>ω<`)(これに僕の芸術家人生がかかっている…! どうか…!)
(´・ω・`)(お、終わった… )
パチパチ
(´・ω・`)(お……)
パチパチバチバチパチパチパチパチパチパチバチバチパチパチパチパチパチパチバチバチパチパチパチパチパチパチバチバチパチパチパチパチパチパチ
(´゜ω゜`)(やった…拍手だ…)
楽屋
彡(゜)(゜)「おークビt」
教授松「凄い反響だったぞ 指導したものとして鼻が高いぞ」
(´・ω・`)「教授! ありがとうございます」
校長「いやー期待以上だ ドラフト一位も夢じゃないよ」
(´^ω^`)「またまたそんな…」
ワイワイ ガヤガヤ
(´^ω^`)
ワイワイ ガヤガヤ
彡(゜)(゜)「……」
(´・ω・`)(一年前まで、僕はほこりっぽい椅子張り職人だった…)
(´-ω-`)(内気な僕がここまでこれたのは、アドルフのおかげだ 感謝してもしたりないよ)
彡(゜)(゜)「おめでとさん」
(´^ω^`)「アドルフ! ありがとう!」
公園
(´・ω・`)「あと2、3日したら、僕はリンツに戻って兵役検査を受けるよ」
彡(゜)(゜)「久々の故郷や 両親と過ごしてこいや」
紳士「そうだよ 里帰りして親孝行しないと」
(´・ω・`)(なんでこの人がいるんだろう)
紳士「今日の指揮は迫真の出来だったらしいじゃないか どこかのオーケストラから推薦もウケたんじゃないか?」
彡(゜)(゜)「え…そうなんか」
(´・ω・`)「えっと…まぁ紹介はされたけど」
彡(゜)(゜)「…… そか よかったなクビツェク」
紳士「で、これからどうするんだ?」
(´・ω・`)「どうするって… 故郷に帰って… 兵役をうけて…」
(´・ω・`)「いずれにせよ、僕達は一緒です」
彡(゜)(゜)「……」
1908年7月
駅
(´・ω・`)「じゃあ、暫くの間お別れだねアドルフ ステファニーのこと、ちゃんと調べておくよ」
彡(゜)(゜)「いや、ステファニーのことは調べんでもええ」
この時、僕はどこか彼に違和感を感じた しかし、それに気付くことはできなかった
彡(゜)(゜)「お前は大人しすぎるからな、軍隊で多民族の奴らに目つけられんように気をつけるんやぞ」
彡(゜)(゜)「特に、ユダヤ人にはな」
『都会には卑怯者しかいない 英雄が生まれるのは田舎だ そして、田舎にユダヤ人はいない
ーーハインリヒ・ヒムラー』
彡(゜)(゜)「じゃあなクビツェク」ガシッ
彼は僕の両手をとり(彼が両手を握ることは珍しいことだった)、しっかり握りしめた
(´・ω・`)「うん、またね」
それから彼は回れ右して、一度も振り向かずに、少し早足で出口に向かった
こうして、僕はリンツへ一時帰還した
リンツ
(´・ω・`)(両親は、僕を快く迎えてくれた)
(´・ω・`)(久々の故郷はちっとも変わっていなかった ドナウ川も、それに跨がる橋も)
(´・ω・`)「父さん、仕事を手伝うよ」
父「すまないな」
(´・ω・`)「父さんは凄いよ たった一代でここまで事業を築くなんて」
父「まだ職人仕事を尊重してくれてるみたいだな うれしく思うぞ」
(´・ω・`)(アドルフはああ言ったけど、どうせ後になって騒ぐんだからステファニーのことを調べておこう)
(´・ω・`)(いないな… 一家全員ということは避暑にでも出掛けたのかな?)
(´・ω・`)(あれから、アドルフと何回か手紙のやり取りをした 冗談を言ったり、最後に親愛なるご両親によろしく、と付け加ええているいつも通りのものだ)
(´・ω・`)(そして帰る日が決まり、手紙にその日時を書いた)
11月20日
駅
(´・ω・`)「あの柱の下が、いつもの待ち合わせの場所なんだよね」
(´・ω・`)「あれ…いない」
(´・ω・`)「さてはまた寝坊してるんだな…全く 手紙に書いたのに…」
20分後
(´・ω・`)「……待合室にいるのかな?」
(´・ω・`)(……)
(´・ω・`)「もう一度ホームに行ってみよう」
1時間後
(´゜ω゜`)「おかしいな… 時間を破るなんて彼かしくない」
(´・ω・`)「まさか……病気!?」
(´゜ω゜`)「そうに違いない! そういえば手紙にまた気管支カタルがぶり返してるって書いてた! いそいで借家に行こう!」
借家前
大家「あらこんにちは」
(´@ω@`)「こんにちは!」
大家「……どこへそんなに急いでるんです?」
(´・ω・`)「どこって……ここは僕達が借りてる家じゃないですか!」ガチャガチャ
(´゜ω゜`)「あれ、開かない」
大家「もしかして何も知らないのですか?」
(´・ω・`)「……え?」
大家「ヒトラーさんは引っ越しましたよ」
(´゜ω゜`)「ええっ!?」
(´・ω・`)「か、彼はどこに引っ越したのでしょうか?」
大家「そのことについては何も」
(´・ω・`)「しかし彼は僕宛てに何か残したはずです 手紙とかメモ書とか それはどこに?」
大家「いいえ、ヒトラーさんは何も残さなかったわ」
(´・ω・`)「挨拶もなしですか!?」
大家「何も言わなかったのよ」
(´ ω `)
(´ ω `)(彼は自分の分の家賃を払い、姿を消した 次の日から、僕は独り孤独に新しい部屋を探しに出掛けた)
(´・ω・`)「ここでいいかな…」
(´-ω-`)(アドルフ…一体何があったんだ… 思い返しても、理由がみつからないよ)
(´・ω・`)(きっと、ひょっこり現れるに違いない 元大家さんや学校、実家に僕の住所を教えておこう きっと彼が辿ってくるはずだ)
しかし、一週間たっても、翌週になっても、アドルフは来なかった
(´・ω・`)(確かに、ピアノを弾いたら怒ったり部屋中をうろうろしたり急に演説を始める同居人がいない方が勉強は捗るかもしれない)
(´-ω-`)(でも、それじゃ駄目なんだ 君がいなければ僕の人生は平凡で退屈にしか思えないんだ)
劇場
(´・ω・`)(ここにくれば、アドルフに会えるかもしれない)
(´・ω・`)(『真夏の夜の夢』……か)
(´・ω・`)(ああ、いい…けど、一人だけじゃ感想は言い会えない…面白さも半減だよ…)
(´・ω・`)(そういえば、リンツの劇場ではいつも柱の下で二人で見てたな…)チラ
※※※
(´゜ω゜`)「あ、アドルフ!?」
(☆…●)
(´・ω・`)「すいません…人違いでした」
(´・ω・`)(あれから一年がすぎた)
(´・ω・`)(ある情報によると、彼は貧民街の独身者合宿所に行ったらしい)
(´・ω・`)(でも今は、どこにいるか解らない 兵役から逃れる為にドイツへ行ったか、それを無視してまだウィーンにいるか…)
(´・ω・`)(彼は、大都市の闇に姿をくらませた)
(´・ω・`)(彼には、もう友達がいなかった 大都市の真ん中にいる人ほど孤独なものはない 彼が選んだ道は辛く険しいものだった)
彼は、自分の貧乏を恥じており、もう友達が欲しくなかったのだ
(´^ω^`)『もしオーケストラの指揮者の推薦が決まったら、もっと僕が家賃を負担できるようになるよ!』
彼が選んだ運命の道は、孤独、荒涼、虚無に通じる道だった