~更衣室~
矢部「おかしいでやんすね」
パワプロ「そうかい?」
矢部「そりゃそうでやんすよ」
パワプロ「そうかぁ~~」
矢部「そもそも語尾とか口調に特徴を出してる女の子は、イタイ女の子が多いでやんすね」
パワプロ「そういうもんなんだ」
矢部「そういうもんでやんす」
パワプロ「なるほどね、さすが矢部君は物知りだ」
矢部「伊達にメガネかけてないでやんすよ」
パワプロ「ははは!勉強になるなぁ」
~ロッカーの中~
ほむら(とんでもない場に遭遇してしまったッス)
ほむら(いつものようにパワプロ君を観察しようとしていたら……)
ほむら(それにしてもパワプロ君は、どんな意図があってその質問をしたッスかねぇ)
ほむら(ほむらを意識してくれてるなら、こんなに嬉しいことはないッスけど……)
ほむら(何かしらの判断を下そうとしているならば、この状況はあまりよくない気が……)
ほむら(というか矢部君、ホントしょーもない仕事ばっかするッス)
ほむら(あんななのに、なんでパワプロ君の親友ポジションしてるッスかねぇ……)
ほむら(そんなことはさて置きッス!)
ほむら(とにかくパワプロ君の出方次第では、ほむらも考えなくちゃいけないッスかねぇ)
パワプロ「ちなみにそれは、矢部君の個人的な意見じゃなくて、一般男子も同じ?」
矢部「それはそうでやんす。ほとんどの男はそう思うはずでやんすよ」
パワプロ「そうかぁ~」
矢部「漫画やゲームならまだしも、語尾の特徴でキャラづけをするなんて、現実では自己主張の塊でやんす」
パワプロ「自己主張の塊ねぇ……」
矢部「そうでやんす!まっとうに生きてればそんなことしないでやんすよ」
パワプロ「でもさ、語尾が特徴的だと、その子らしさを感じられたりしない?」
矢部「あぁーーっ!なんということでやんすかねぇっ!」
パワプロ「な、なんだよ。急に大声出さないでよ」
矢部「まったくお前さんはねぇ!それは相手の思惑通りでやんすよっ!」
パワプロ「思惑通り?」
矢部「そうでやんす!それが語尾や口調に特徴がある女の子の狙いでやんすよ」
ほむら(あ~~!ホント矢部君消えて欲しいッス!)
ほむら(ほむらはそんなこと考えてないッスよ!)
ほむら(物心ついた時からこの喋り方をしてたわけで……)
ほむら(これでパワプロ君が、ほむらに対して悪い感情覚えたらどうしてくれるッスか!)
ほむら(いっそ今から外に出て厳重抗議してやるのも手ッスかねぇ)
ほむら(ただ、いきなりロッカーから人が出てきたら、パワプロ君が驚いちゃうッスね)
ほむら(だからと言って、今更普通の話し方なんてできないッスよ)
ほむら(……パワプロ君は普通の女の子が好きなんッスかね?)
◯◯だべ
好き
パワプロ「まぁそういう考えもあるのかもしれないけど……」
コンコン
矢部「どうぞでやんす~~」
聖「失礼するぞ」
パワプロ「あ、聖ちゃん」
聖「お、ここにいたのか」
矢部「もしかしてオイラを探してたでやんすか?」
聖「違う。パワプロ先輩だ」
パワプロ「あ、俺か。どうしたの?」
聖「いや、急ぎではない。今じゃなくて大丈夫だぞ」
矢部「てっきりオイラかと思ったでやんすよ」
聖「残念ながら、矢部先輩には用はないな」
矢部「ガッカリでやんす……」
パワプロ「あ、聖ちゃんさ、いきなりで悪いんだけど、口調が特徴的な女の子ってどう思う?」
聖「口調が特徴的な女の子?(どどど、どういう質問なのだ?)」
矢部「口調でキャラを作ってる女の子のことでやんす」
パワプロ「まぁキャラを作るというかね、口調でその子ってわかるような特徴がある喋り方の子のこと」
聖「そんなことが何故気になるのだ?」
矢部「よくわからないでやんすが、いきなり聞いてきたんでやんすよ」
パワプロ「まぁなんとなく気になってね」
聖「そ、そうか(こ、これは私に気があるということか!)」
パワプロ「聖ちゃんはどう思う?」
聖「そ、そうだな……まぁあくまで私の私見だが」
ほむら(ひじりん、ファインプレーッスよ!!)
ほむら(ほむらは計算なんかしてないッスけど、とりあえずパワプロ君の悪い感情が薄まればOKッス!)
ほむら(それにしても流れるような弁舌、ひじりんどうしたッスかねぇ)
ほむら(そこまでしてほむらを応援してくれるなんて……)
ほむら(感動で涙がほろりッスよ)
ほむら(首尾良くいったら、ひじりんにはきんつばをおごってあげないとッスね)
ほむら(さてさて、肝心のパワプロ君はどう出るッスかね……)
矢部「なんか作為的なものを感じたでやんす」
聖「ど、どういうことだ!」
矢部「自分の求める方向に持っていこうという邪な意志があるように思えたでやんすよ」
聖「し、失礼だぞ!矢部先輩」
パワプロ「そうだよ矢部君。聖ちゃんは俺のためにアドバイスをくれたんだから。ありがとうね、聖ちゃん」
聖「先輩……こちらこそだぞ」
パワプロ「さ、時間取ちゃってごめんね、聖ちゃん。用件まだ聞いてないけど、後で時間取るから」
聖「う、うむ」
矢部「さ、ここは神聖なる男子更衣室でやんすからね、婦女子は長居するもんじゃないでやんすよ」
聖「矢部先輩うざいぞ(そうだな、失礼する)」
矢部「逆ゥーー!」
聖(結局、パワプロ先輩の本心は聞けなかった)
聖(思わず外に出てしまったが、この先の会話が気になって仕方ないぞ)
聖(あまりにも気になるので……)
聖(こんな時のために作っておいた、隠れ小部屋で続きを聞こう)
聖(ようやく役に立つ時がきた)
聖(備えあれば憂いなしとは言ったものだ)
コツン
聖(ん?なんだこれは?)
聖(赤い髪飾り?)
聖(まぁいい、こんなものより今はパワプロ先輩のことだ)
パワプロ「女の子の意見は参考になるね」
矢部「ふん、そうでやんすかねぇ……」
パワプロ「お、そんなことない?」
矢部「そりゃそうでやんすよ。第一、聖ちゃんだって変な口調の女の子じゃないでやんすか」
パワプロ「……まぁねぇ」
矢部「だぞっ子なんて、普通はまずいないでやんす」
パワプロ「う~ん」
矢部「あれは自己弁護でやんすよ」
パワプロ「自己弁護?」
矢部「そうでやんす。自分を悪く思われたくない、特徴的口調派の浅ましき自己弁護でやんすよ」
ほ 聖(矢部死ね!)
パワプロ「まぁそこまで言わなくても……」
矢部「じゃあ、もしそんな話し方の子が、彼女になったと想像して欲しいでやんす」
パワプロ「うん、彼女に」
矢部「その子とパワプロ君は親密になり、結婚の約束をしたでやんす」
パワプロ「矢部君、想像力豊かだなぁ」
矢部「ふっふっふ、伊達にあれこれしてないでやんす」
パワプロ「あれこれ?」
矢部「まぁそれはいいでやんす。で、パワプロ君はとうとう、ご両親に彼女を紹介することになるでやんすよ」
パワプロ「お、それっぽいね」
矢部「さぁ想像してみて欲しいでやんす。紹介すべき大事な彼女が、変な口調なんでやんすよ」
パワプロ「……おぉ、なるほど」
矢部「どうでやんすか?親御さんはどう思うでやんすかねぇ?」
パワプロ「むむむ」
ほむら(ティッシュティッシュ!鼻血が……)
ほむら(矢部君のくせに、ほむらに鼻血を出させるとはやるッスね)
ほむら(パワプロ君のお嫁さん……想像しただけでやばいッス!)
ほむら(ただ、ご両親に挨拶とは盲点だったッス)
ほむら(その時だけ、普通の口調で話すのはできなくはないッスけど……)
ほむら(それからずっと普通の口調はちょっときついッスね)
ほむら(直すのが一番なのかもッスけど、ありのままのほむらを認めて欲しいところもあるッス)
ほむら(さてさてどうしたもんッスかねぇ)
ほむら(いやぁこれはなんとも嬉しい悩みッス)
ほむら(ただ、それもこれもパワプロ君の想い次第ッスよ……)
聖(ティッシュティッシュ!鼻血が出てしまった……)
聖(う~む、パワプロ先輩のご両親に挨拶か)
聖(なんとなく覚悟はしていたが、いざリアルな想像をするとこれまた強烈だな)
聖(ふむ、パワプロ先輩のお嫁さん……これはいいものだ)
聖(しかし、私は敬語というものが苦手だ)
聖(年齢関係なく、ついついいつも通りに喋ってしまう)
聖(初対面のパワプロ先輩のご両親にこれでは、さすがに失礼なのはわかる)
聖(なんとかしなくてはならないな)
聖(ふふふ、努力のしがいがあるな)
聖(しかしそれもこれも、パワプロ先輩の気持ち次第だぞ……)
パワプロ「いやぁ矢部君は色々考えててすごいね」
矢部「いやぁそれほどでもあるでやんす。それはそうと、さっきからパワプロ君は人の意見を聞いてるだけでやんすよ」
パワプロ「そうかな?」
矢部「そうでやんす。実際パワプロ君はどう思ってるでやんすか?」
ほ 聖「……」ドキドキ
パワプロ「そうだな~」
パワプロ「俺はね、かわいいと思うよ」
ほ 聖「!!!」
矢部「はぁ!?正気でやんすか?」
パワプロ「正気正気。なんかかわいいじゃん」
矢部「はぁ~~パワプロ君のお気楽脳には、参ったでやんすね」
パワプロ「なんだよ~お気楽脳って!」
矢部「ま、そこがパワプロ君の良いところでやんすけどね」
ハハハ!
バーンッ!
パ 矢「!!!」ビクッ
ほむら「パワプロ君!嬉しいッスよ~!」
聖「先輩!信じていたぞっ」
美藤「パワプロ!結婚しようっ!」
パ 矢「!!!」
ほむら「ふ、二人とも!何してるッスか!」
聖「ほ、ほむら先輩こそっ」
美藤「お、二人もか?」
ほむら「なんでちーちゃんは慌てないッスか!」
聖「と、というか美藤先輩、血だらけではないか」
美藤「はっはっは!ちょっと鼻血が出てしまったのだが、ティッシュがなくてな」
聖「はっはっは、じゃないぞっ」
ほむら「はっ、アホのちーちゃんに構ってる暇はないッス」
美藤「アホとはなんだ!」
ほむら「パワプロ君!嬉しいッス!」
ほむら「ありのままのほむらをかわいいって言ってくれて」
聖「何を言っているのだ、あれは私に向けてだろう。なぁパワプロ先輩?」
美藤「パワプロ、私は結婚式は和装がいいんだが構わないか?」
パ 矢「ぎゃ……」
ほ 聖 美?「」
パ 矢「ぎゃーー!」
終わり
パワプロ君目線で見ると、ただのストーキングホラーですね。
ほむらちゃんがロッカーから出てくることに、謎の可愛さを感じてしまう僕の深層心理はどんなものなのでしょうか。
読んでくれた人、ありがとうございました~!
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