ほむら「急な呼びかけだったけどみんな集まってくれてよかったッス!」
太刀川「まあ、あれだけ必死にお願いされたらね……」
小鷹「本当よ、予定を開けてでも来てほしいッスとか言って電話までかけてきたじゃない」
ほむら「それはちょっと申し訳なかったッス」
かりん「でも久しぶりに集まれたのは嬉しいりゅん!」
矢部田「そうだべ、実はオラもみんなと会いたかったべ」
美藤「卒業以来だから4か月ぶりか、みんなあんまり変わってないな」
アンヌ「4か月しか経ってないからな、それに大学にも慣れてきたところだ」
夏野「そうそう、大学にも行ったんだし、みんないい加減彼氏くらいできた?」
小鷹「そんなの作ってる暇ないわよ」
美藤「まったくですね、部長」
夏野「お二人さんの浮いた話は始めから期待してないわよ、ミヤビンとかどう?」
雅「僕もまだ彼氏はいないかな……」
アンヌ「なに言ってるんだ? 小山は男なんだから彼氏なんか作らないだろ」
雅「あ……」
太刀川「大学に入って冗談も言うようになったんだ、ミヤビンはちょっと変わったね」
雅「そ、そう! そうなんだ、ははは……」
矢部田(……完全にやっちまったって顔してるべ)
かりん「番……じゃなかった、美代子さんはどうですかん?」
大空「ミヨちゃんは大学に行かずに家の手伝いをしてますからね~、あんまり出会いはないかもです」
夏野「実家って?」
矢部田「確か、大空さんの家はときめき工業を経営してるべ」
夏野「え? じゃあ社長令嬢? すっごーい!」
大空「それほどでもないですよ~」
ほむら「みんな、話すのは一旦中断して、まずは乾杯をしたいッス!」
小鷹「そうね、いい加減お腹も減ったし、それじゃあ幹事さん音頭とってね」
ほむら「了解ッス! 久々の再会を祝して、乾杯!」
一同「乾杯!」
20分後
小鷹「ちゃんと授業は出てる? 遅刻してないでしょうね」
太刀川「もう、子供じゃないんだから大丈夫だよ、そういうタカはどうなの? ちーちゃんとソフトやってるんだっけ?」
小鷹「そうよ、目標は新人戦ね……まったくヒロが望むなら野球を続けてたかもしれないのに」
太刀川「ごめんね」
小鷹「謝らないでよ、タカが選んだことだし、ちょっと愚痴りたかっただけなんだから」
アンヌ「ゴクゴク……」
美藤「ゴクゴク……」
アンヌ「……ぷは」
美藤「……ぷは」
アンヌ・美藤「どっちが早かった!?」
大空「えーと……どっちも同じですかね~」
アンヌ「また引き分けか……」
美藤「まったく、これでは勝負がつかんな、仕方ないもう一勝負だ」
アンヌ「望むところだ!」
大空「……というか、なんでこの2人はウーロン茶で早飲み対決をしてるんですかね~」
夏野「ミヤビンはさ、ちゃんとオシャレすれば絶対モテるって」
雅「そ、そうかな……? あまり考えたくことないけど……」
夏野「最近は草食系が流行ってるんだから、その線の細さは女の子に対して逆に武器になるよ!」
雅「あ、そっちの話……」
夏野「……? そっちって?」
雅「な、何でもないよ!」
ほむら「みんな盛り上がってるッスね」
かりん「みんなでワイワイ食べたり飲んだり……甲子園前の合宿の事を思い出しますみょん」
矢部田「あの時も楽しかったべ、あやうく駈杜の説法を聞かされそうになって大変だったけど、今ではそれもいい思い出だべ」
かりん「パワプロ君が神童さんのストレートをホームランにしてくれたおかげですのん!」
矢部田「……」
かりん「そういえばパワプロ君、プロに行ったけど今も頑張ってるのかにゃ~」
太刀川「……」
小鷹「……」
アンヌ「……」
美藤「ゴクゴク……ぷは! どうだ、今度こそ私の勝ちだろ!? ……うん? アンヌ、どうした?」
大空「……」
夏野「……」
雅「……」
かりん「にゃにゃ!? なんでみんな黙ってしまったんですじゃ!?」
夏野「……ネコりん、それ言っちゃう?」
太刀川「みんなキャプテンの話題出すの、ちょっと避けてたよね……」
小鷹「……別にいいじゃない、今日は女子会なんでしょ? どうせ呼ばなかったわ」
太刀川「タカ……そんな顔で言っても説得力ないよ」
小鷹「……な、何よ、そんな顔って!」
雅「やっぱりみんな会いたかったよね……キャプテンと」
アンヌ「……今は2軍だったか、2軍の試合を見に行きたいが中々時間が合わないしな」
大空「……プロになってから、ちょっと遠い感じになっちゃいましたよね~」
かりん「も、もしかして、ネコりんはいわゆるKY的な発言をしてしまったのですかな……?」
矢部田「そんな感じだべ……」
かりん「申し訳ないですにん! 空気を重くしてしまったお詫びに切腹いたしますりゅん!」
矢部田「やめるべ、フォークでお腹を刺しても切腹にはならないべ!」
美藤「みんなどうしたんだ? なんでそんな沈んでるんだ?」
ほむら「……ふっふっふ、皆さん、なにやらテンションが下がってしまったようッスね」
太刀川「ほむほむ?」
ほむら「ここでやっと、ほむらがこの女子会を開いた本当の理由を説明する時がきたッス」
小鷹「本当の理由?」
ほむら「無理をいってなんとかみんなに集まってもらったのは、昔を懐かしむだけじゃないッス! 我らがキャプテンことパワプロ君の事で重大な発表があるからなんスよ!」
夏野「ちょっと立ち上がらないでよ、興奮し過ぎよ」
ほむら「これが興奮せずにいれますか! パワプロ君がスタメンの試合は欠かさず観戦したほむらだからこそ得られた情報ッス!」
矢部田(……そういえばほむほむは進学や就職せずにフリーターになったんだべ)
ほむら「みんなも聞けば盛り上がること間違いなしッスよ! ほむらもこの情報を聞いた日は興奮して夜も眠れなかったッス!」
大空「え~、なんですか~? ミヨちゃんすごく気になります」
ほむら「むふふ……ズバリ! パワプロ君が……」
美藤「1軍に昇格するという話か?」
ほむら「1軍に昇か……え?」
太刀川「ええ!? キャプテン一軍に昇格するの!?」
小鷹「本当なの?」
ほむら「ほ、本当ッスけど……」
夏野「すっごーい、さすが我らがキャプテンね!」
アンヌ「まあ、私はあいつならすぐに一軍に行くと思ってたけどな!」
雅「でもすごいよね、ドラフト4位なのに初年度で1軍に行くなんて」
ほむら「ドラ4はスカウトの目と球団の育成力が試される枠なんスよ! かのイチローもドラ4で入団したッス! って、そうじゃなくて……」
大空「それなら今日はパワプロ君の昇格祝いですね~」
矢部田「なるほど、おら達を集めたのはそのためだったんだべな」
ほむら「そうなんスけど、ちょっと待って……」
かりん「そうと決まれば早速乾杯のし直しでじゃ!」
美藤「ふむ、正直野球の事などどうでもいいが、今日だけは特別に私も祝ってやろう」
ほむら「ええーい! だからちょっと待つッス!!」
美藤「どうしたんだ、ほむほむ、興奮を通り越して怒っているように見えるぞ?」
ほむら「まさしく怒ってるッスよ! ほむらはちーちゃんに大して怒ってるッス!」
美藤「なぜ私が怒られるんだ!?」
ほむら「なぜも何もないッスよ! 何でパワプロ君が一軍に昇格することを知ってたんスか!」
美藤「そんなのお前と私以外にも知っている人はいるだろう?」
ほむら「いないッス! いるわけないッス! これは独自ルートで仕入れたほむらだけのマル秘情報だったはずなのに~!!」
夏野「ちょっとほむほむ、本当に落ち着いて!」
矢部田「騒ぎすぎると追い出されるべ、パワプロ君の祝賀会がおじゃんになってもいいだべか!?」
ほむら「はっ…………申し訳ないッス、ほむらとしたことがショックのあまり我を忘れてしまッス……」
小鷹「落ち着いたのなら訳を聞かせてちょうだい、何でさっきあんなに暴れたの?」
ほむら「……パワプロ君の一軍昇格の話はまだ公表されてない事ッス、当然みんなだって知らなかったッスよね?」
太刀川「う、うん……」
かりん「もし知ってたらほむほむみたいに大興奮してたかもしれないりゅん」
ほむら「それなのに! なぜかちーちゃんが一軍に昇格することを知ってったのはどうしてなんスか!」
美藤「ど、どうしてと言われても……部長も知らなかったんですか?」
小鷹「知らなかったわ」
美藤「な、何ですと……」
ほむら「ちーちゃん、観念するッス! 一体どんな汚い方法でその情報を手に入れたッスか!」
美藤「変な言いがかりをつけるな! 別にやましいことなどなにもないぞ! パワプロ本人から聞いただけだ!」
アンヌ「……まさかちーちゃん、パワプロと連絡とってるのか?」
美藤「いや、まさかもなにもみんなとってるだろ?」
太刀川「……」
小鷹「……」
かりん「……」
矢部田「……」
ほむら「……」
雅「……」
大空「……」
アンヌ「……」
夏野「……」
美藤「え?」
夏野「……いやいや、え、じゃなくてさ」
雅「えーと……卒業する時にパワプロ君が一軍に行くまでみんなで連絡するのは控えようっていう約束したよね?」
矢部田(別名『抜け駆け禁止協定』だべ……)
太刀川(あの約束を交わした時は、どうにもちーちゃんはその意味をわかってなさそうだったけども……やっぱりわかってなかったみたいだね……)
かりん「まさかちーちゃんが約束を破るなんて……ネコりんは見損なったりゅん!」
大空「……これはお仕置きですね~」
美藤「ま、待て! 待て! 私だってその約束は覚えているぞ!」
アンヌ「覚えていても守ってなかった意味ないだろ!」
美藤「なに言ってるんだ! 守ってるぞ!」
ほむら「今さらそんな言い訳通じないッスよ!」
美藤「言い訳じゃない! 第一私からパワプロに連絡したことは一度もないぞ!」
太刀川「……」
小鷹「……」
かりん「……」
矢部田「……」
ほむら「……」
雅「……」
大空「……」
アンヌ「……」
夏野「……」
美藤「……さっきから何でみんないちいち黙るんだ?」
太刀川「……ちーちゃん、それってつまりキャプテンの方からちーちゃんに連絡してるってこと?」
美藤「そうだ、あの約束では『こちらから連絡をとるのは控えよう』という事だったはずだ、つまり向こうから連絡がくるのであれば問題ない!」
夏野「……確かにそれなら問題はないわね、パワプロ君に冷たくしろっていう約束じゃないし」
美藤「そうだろう、そうだろう!」
雅(……自分の意見が通ったから嬉しそうに笑ってるけど……)
矢部田(……まったく別の爆弾を投げ込んだことに気付いてないべ……)
かりん「ちーちゃん、ズルいなりよ! キャプテンと連絡取ってるなんて!」
美藤「連絡を取ったくらいでなぜ責めらなければならないんだ、ねえ部長?」
鷹野「……なんで私に振るのかしら?」
美藤「え? だって部長もパワプロから連絡くらいくるでしょう?」
鷹野「……別に何とも思ってないけど、卒業してからアイツから連絡がきたことは一度もないわ、別に何とも思ってないけど」
美藤「なぜ二回同じことを……?」
太刀川「多分、重要な事だからだと思う……それよりもちーちゃん、何か勘違いしていない?」
美藤「勘違い? 何のことだ?」
太刀川「あたしらの中でパワプロ君と連絡取ってるのはちーちゃんだけだよ、きっと」
美藤「はっ何を馬鹿な事を……矢部田、お前は連絡を取ってるよな? 仲が良かったし、あいつと同じくプロ入りしてるし」
矢部田「プロといっても球団が違うんじゃ試合でもないと会うことはないべ、もちろん試合以外で連絡なんか取りあってないべ」
美藤「……それは一体どういうことだ?」
アンヌ「それはこちらのセリフだぞ、ちーちゃん! どういうことなのかきっちり説明してもらうからな!」
美藤「な、何を説明するんだ?」
夏野「勿論パワプロ君との事よ、抜け駆け厳禁の淑女協定を破った罪は重いわ」
美藤「抜け駆け厳禁の淑女協定? そんなもの結んだ覚えはないぞ!」
ほむら「ごちゃごちゃ言ってないで吐くッスよ! パワプロ君とどんな風に連絡を取ってるか、どんな話をしてるか……」
大空「ちーちゃんには黙秘権も弁護士を呼ぶ権利もありませんよ~」
美藤「ちょ、ちょっと待って……」
かりん「それじゃあ尋問開始ですりゅん♪」
…………………
矢部田「まずパワプロ君から連絡がくるのはどれくらいだべ?」
美藤「だいたい週一回くらいだ」
夏野「どんなふうに連絡取るの? メール? 電話? SNS?」
美藤「メールか電話だが、電話の方が多い気がするな……」
アンヌ「どんなことを話すんだ? やっぱりプロ野球の事とかか?」
美藤「そうだな、基本的にあいつが一方的に話すだけだ……時々私がソフトの素晴らしさを教えてやることもあるが」
雅(プロ野球選手相手にそれはどうだろう……)
ほむら「ズルいッス! ほむらも野球選手の二軍の生活とかプロ野球選手の裏事情とかすごい気になるッス!」
夏野「はいはい、ほむほむは少し黙ってようね」
太刀川「メールだとどんな感じ?」
美藤「どんな感じもなにもメールが来たらそれを返すだけだが」
太刀川「じゃなくて、メールの内容だってば」
美藤「内容も変わらんぞ、野球の事とか暇だから遊ぼうとかそんなものだ」
小鷹「……は?」
美藤「どうしたんですか部長?」
かりん「ネコりん、今聞き捨てならないことを聞いてしまったような気がしますのじゃ……それともネコりんの聞き間違いですかねん?」
太刀川「ちーちゃん、今、遊びに誘われたって言った?」
美藤「誘われたぞ、息抜きということで」
雅「ちなみにどこに行ったの?」
美藤「公園とかカラオケとか映画館とかだな」
矢部田(……そのラインナップはもう完全にデートだべ)
アンヌ「……つまりこういうことか? パワプロは私達の中でちーちゃんにだけ連絡を取っていて、ちーちゃんだけ遊びに誘ってったって……」
夏野「……あー、やばいなんかすごくテンション落ちてきた、もうお開きでいいんじゃない?」
美藤「待て、急にどうしたんだ?」
矢部田(結局まだちーちゃんはわかってないみたいだべ)
大空「ちーちゃん……ちょっと聞きたい事あるんですけどいいですか~?」
美藤「なんだ?」
大空「ちーちゃんのお話聞いていると、ミヨちゃん、まるでちーちゃんとパワプロ君が付き合ってるみたいに聞こえちゃったんですよ~」
美藤「何を言うかと思えば、私は……」
大空「……ちーちゃん、話は終わってませんよ~? ……黙って聞けよ」ギロッ
美藤「ひっ、す、すみません……」ビクッ
大空「確認するが……お前、パワプロと付き合ってるのか?」
美藤「つ、付き合ってません!」
大空「マジだろうな?」
美藤「マジです! 大マジです!」
大空「……」
美藤「……」
大空「……じゃあいいんですよ~、ちーちゃんが変なこと言うからミヨちゃんビックリしちゃいました」ニッコリ
美藤「は、はい……」
かりん「……はっ、番長のあまりの迫力に息をするのを忘れてましたにゃ」
美藤「す、すごく恐った」
アンヌ「自業自得……というのは少し酷いか、ほら、ちーちゃん、ウーロン茶」
美藤「うう、すまない……」
太刀川「みんなちーちゃんがキャプテンと付き合ったんじゃないかと思ってちょっと焦っただけなんだよ、恐がらせてごめんね」
美藤「そんなわけないだろう、遊びに誘われた時も誰でもよかった感じだったぞ」
小鷹「どういうことかしら?」
美藤「映画に行ったのはその映画の評判を確かめるためだったり、カラオケは歌の練習野に付き合って欲しいと言われて誘われました」
>>29の誤字訂正
かりん「……はっ、番長のあまりの迫力に息をするのを忘れてましたにゃ」
美藤「す、すごく恐った」
アンヌ「自業自得……というのは少し酷いか、ほら、ちーちゃん、ウーロン茶」
美藤「うう、すまない……」
太刀川「みんなちーちゃんがキャプテンと付き合ったんじゃないかと思ってちょっと焦っただけなんだよ、恐がらせてごめんね」
美藤「そんなわけないだろう、遊びに誘われた時も誰でもよかった感じだったぞ」
小鷹「どういうことかしら?」
美藤「映画に行ったのはその映画の評判を確かめるためだったり、カラオケは歌の練習に付き合って欲しいと言われて誘われました」
夏野(それはそういう体でデートに誘ってるだけじゃないの……?)
かりん(でも本当に付き合ってる感じにも見えないにゃん)
アンヌ(どっちなんだ? わからん!)
大空(もしかしたらパワプロ君の方が気があるけど、ちーちゃんが気づいてないだけかもしれませんね~)
太刀川(なんだかんだでキャプテンとちーちゃんは仲が良かったしね……)
矢部田(だけど、ちーちゃんがこんな様子じゃ発展しそうにないべ)
小鷹(……つまりまだ終わりじゃないって事かしら)
雅(……なんだか、みんなが何を考えているか大体見当ついちゃうかも)
ほむら「ええーい、まどろっこしいッス! ちーちゃんが身の潔白を証明したいのなら手っ取り早くここにパワプロ君を呼んでくるッス」
美藤「なんだその理論は!?」
ほむら「本当はほむらもパワプロ君と連絡を取りたかったッス! 実は球場に行った時も抜け駆けしてパワプロ君に会おうともしたッス!」
矢部田「さらっとすごいこと言ってるべ……」
ほむら「一軍昇格祝いだってパワプロ君に一番におめでとうと言いたかったッス! ほむらがパワプロ君の応援団員一号なんス!」
夏野「……とりあえず、ほむほむのパワプロ君に対する想いはわかったわ」
美藤「というか呼んでよかったのか、パワプロを?」
アンヌ「え?」
美藤「実は一昨日パワプロから連絡があってな、今日この日に食事に誘われてたんだ」
かりん「……どういうことですかん?」
小鷹「……ちーちゃん、その誘いをどうしたの?」
美藤「勿論断りました、今日はこの女子会がありますから」
太刀川「キャプテンも一緒に誘うっていう選択肢はなかったのかな……?」
美藤「いや、女子会だろ? あいつは男だから参加資格がないじゃないか」
大空「……はあ?」
雅「別に来ても大丈夫だったんじゃないかな……えーと、僕も呼ばれてるし」
美藤「そうだったのか?」
夏野「当たり前じゃん、ねえ、ほむほむ?」
ほむら「……ほむらのせいッスか」
矢部田「……どうしたんだべ?」
ほむら「ほむらがこの集まりを格好つけて女子会とか名づけちゃったからいけないッスか!? だから今日ほむらはパワプロ君に会えたかもしれないのに会えなかったッスか!?」
アンヌ「ほむほむ、落ち着け、ほむほむは悪くないぞ」
太刀川「そうだね、これはどちらかといえばちーちゃんが悪いかな」
美藤「わ、私が悪いのか!?」
小鷹「そんなこと言ったら可哀想よ、ヒロ」
美藤「部長……」
小鷹「ちーちゃんが空気読めないのは今に始まった事じゃないわ、今さら責めても仕方ないじゃない」
美藤「ぶ、部長ぉ……」
夏野(何気にタカも辛辣なこと言ってるし……)
矢部田(そっけない顔してるけど実はかなり会いたかったんだべね……)
プルルルルルル
雅「あれ、電話?」
美藤「すまん、私だ……」
大空「誰からですか~?」
かりん「もしかしてパワプロ君からだったりして」
美藤「ああ、そうみたいだ」
かりん「……え?」
美藤「もしもし、パワプロか?」
パワプロ『あ、ちーちゃん、今大丈夫?』
美藤「大丈夫なわけないだろうが、このバカ者!」
パワプロ『ああ、ゴメン、やっぱり取り込んでるよね、またかけ直すよ』
美藤「そうじゃない、貴様、なぜ私にばかり連絡をよこすんだ!」
パワプロ『え?』
美藤「おかげで私はみんなから怒られ……」
小鷹「……! ちーちゃんから携帯を奪って!」
バッ
美藤「わ!? な、なんだ!?」
アンヌ「何余計な事言おうとしてるんだよ!」
美藤「いや、みんなの為に一言文句を……」
アンヌ「それが余計なんだ!」
太刀川「……あれ? ちーちゃんの携帯は?」
夏野「あ、もしもし、パワプロ君? 私、ナッチだよ」
パワプロ『あれナッチ? なんで?』
夏野「実はちーちゃんと一緒に女子会をしていたんだ」
パワプロ『ああ、ちーちゃんの言ってた用事ってナッチと会うことだったんだ』
夏野「うん、それにしても久しぶりだね、卒業してからだから4か月ぶりくらいかな?」
パワプロ『それくらいかなー、元気にした?』
夏野「もちろん! 大学に通いながらパワプロ君の応援してたよ」
パワプロ『そうなんだ、ありがとう』
矢部田「ドサクサに紛れてナッチが取ってるべ……」
かりん「でも、ナッチだったら上手く誤魔化してくれそうですにゃん」
夏野「それでさ、パワプロ君LINEとかやってる?」
パワプロ『LINE? 一応アプリには入れてるけど』
夏野「じゃあ私のID教えるから登録しておいて、ついでにパワプロ君のIDも教えてよ」
矢部田「って、何やってるべ!」
ほむら「まさかのナッチの抜け駆けッスか!?」
パワプロ『えっとゴメン、ID覚えてないんだ、また後でメールするってことでいいかな? メアド変わってないよね?』
夏野「変わってないよ、今夜中にメール頂戴ね、あ、それと既読無視しない……」
ほむら「とうりゃ!」
夏野「きゃ!? 何するの!?」
ほむら「淑女協定の提唱者がなに率先して協定を破ってるっスか!」
夏野「もう協定とか関係ないもん!」
アンヌ「言い切っちゃったよ、コイツ……」
夏野「それよりも携帯返して!」
美藤「ま、待て、それは私の携帯だぞ!」
ほむら「わ、もつれこまないでほしいッス」
バッ
かりん「ナイスキャッチ♪」パッ
太刀川「あ、ネコりん」
かりん「もしもしキャプテン?」
パワプロ『あ、その声はかりんちゃんかな?』
かりん「そうですにゃん! お久ぶりなのです」
パワプロ『うん、ナッチ以外にもかりんちゃんもいたんだ』
かりん「そういうことですじゃ、ところでキャプテン、ネコりんはこのままだと死んでしまいますです……」
パワプロ『ええ!? どうしたの!?』
かりん「ネコりんはキャプテンから連絡がこないのが寂しくて寂しくて……猫は寂しいと死んでしまうのです」
パワプロ『それはウサギなんじゃ……』
かりん「細かいことは気にするにゃん! とにかく、キャプテンはこれからネコりんと……」
矢部田「そこまでだべ」
かりん「にゃわ!? いいところだったのに!」
矢部田「も、もしもし、オラだべ、矢部田だべ」
パワプロ『矢部田さんも? なんだかみんな大集合って感じだね』
矢部田「オ、オラのこと覚えててくれたべか?」
パワプロ『覚えてるも何も、俺が矢部田さんの事を忘れるわけないじゃないか』
矢部田「お、おぉ……ありがとうだべよ」
パワプロ『なにせ、矢部田さんはジャスミンに入ってから最初の友達だもの』
矢部田「……それは嬉しいような嬉しくないような言い方だべ……」
パワプロ『え? 何で?』
矢部田「な、何でもないべ! ともかくオラたちの友情は永遠だべ!」
パワプロ『もちろんだよ!』
矢部田「ところでその友情を深めるためにも今度……」
大空「はーい、そこから先はダメですよ~? ミヨちゃんもパワプロ君とお話したいので変わって下さいね~」
矢部田「あ……はい、どうぞだべ」
大空「もしもし、パワプロ君? 誰だかわかりますか~?」
パワプロ『分かるに決まってるじゃないか、ミヨちゃん』
大空「大当たりですよ~」
パワプロ『あ、ミヨちゃんもいるということは他のジャスミンメンバーもいるのかな?』
大空「他の人の事はいいじゃないですか~、それよりもミヨちゃんとお話ししましょう」
パワプロ『え? あ、うん……』
大空「実はミヨちゃんカラオケに自信あるんですよ~、カラオケの練習したかったらいつでも呼んでほしいです」
パワプロ『あれ? なんで俺がカラオケの練習してる事知ってるの?』
大空「まあまあそれはいいじゃないですか~、とにかくミヨちゃん的にはいつもでオッケーでオールとかも全然大丈夫です~、というわけでパワプロ君の空いてる……」
太刀川「はいはい、番長もそこまで」
大空「あ~、何するの~!」
太刀川「ねえ、提案なんだけど、もうこうなったらこの携帯回して全員でキャプテンと話さない?」
雅「そうだね、協定の事もウヤムヤになったし、実は僕もキャプテンと話したかったんだ」
太刀川「オッケー、じゃあ次はミヤビン」
雅「ありがとう……もしもし、キャプテン?」
パワプロ『その声は雅ちゃん!!』
雅「うん、久しぶり」
パワプロ『雅ちゃん!! 雅ちゃんもいるんだね!!』
雅「う、うん、他にもみんないてね……」
パワプロ『雅ちゃん!! 会いたいなあ、雅ちゃんと会いたいよ、はあはあ』
雅「あ、えーと……」
パワプロ『はあはあ、雅ちゃん、ところで今何色の……』
雅「……はい、ヒロぴー、パス」
太刀川「え? もういいの?」
雅「うん……何だか怖いし」
太刀川「……? じゃあ次は……」チラッ
アンヌ「……!」サッ
太刀川「はい、アンヌ」
アンヌ「わ、私か!?」
太刀川「何か話したさそうだったし」
アンヌ「べ、別にそんなことはないぞ…………でも、一応話しとく」
太刀川「ははは、それがいいよ」
アンヌ「も、もしもし……アンヌだけど」
パワプロ『はあはあ、雅ちゃん……あれ? 雅ちゃん?』
アンヌ「……雅じゃなくて悪かったな」
パワプロ『ア、アンヌ……ごめん、電話代わったのに気付かなかった』
アンヌ「ふん知らない、もう他の人に代わってやる」
パワプロ『ごめんってば、俺もアンヌと話したかったんだよ』
アンヌ「……本当か?」
パワプロ『本当だよ、覚えてるかな、ジャスミンにいた頃にアンヌとバッティングフォームの練習したことがあっただろ?』
アンヌ「忘れるわけないだろ、あの時の事を」
パワプロ『あのフォームが見事にはまってさ、そのおかげで一軍になれたようなものなんだ』
アンヌ「そ、そうか、それはよかったな」
パワプロ『俺がプロでやっていけるのはアンヌのおかげさ、ありがとう』
アンヌ「え!? あ……う~……こ、交代だ!」
太刀川「大丈夫? 顔真っ赤だよ?」
アンヌ「大丈夫だ!!」
太刀川「じゃあ、次はあたしでいいかな……もしもし、キャプテン?」
パワプロ『今度は太刀川か』
太刀川「そう、もう分かってると思うけどジャスミンのみんながいるよ」
パワプロ『そうなんだ……俺だけ呼ばれてないんだな……』
太刀川「ま、まあ、それはこっち側の手違いっていうかさ、別にキャプテンのことが嫌いとかじゃないよ!」
パワプロ『……うん』
太刀川「え、えーと……そうだ、キャプテン! 今度キャプテンの試合みんなで見に行くよ!」
パワプロ『試合……あ、そうだ、俺、みんなに知らせたいことがあったんだ』
太刀川「一軍昇格のことでしょ? 大丈夫、みんな知ってるよ」
パワプロ『え? あー、もしかしてちーちゃんが話してくれたの?』
太刀川「……まあ、そんな感じかな、それよりも水臭いじゃんキャプテン、そういう話をちーちゃんだけに話すなんて」
パワプロ『ゴメンゴメン、みんなにも言おうと思ったんだけど、ちーちゃんとは普段から連絡取ってたからさ』
太刀川「ちなみに……あ、あたしとかでもいつでも連絡くれてもよかったり……」
一同「……」ジトー
パワプロ『え? 何?』
太刀川「な、何でもないよ、それじゃあ別の人に変わるね……はい、タカ」
小鷹「……私は別に」
太刀川「はいはい、変な意地張らないの」
小鷹「ちょっと押し付けないでよ……もう仕方ないわね」
太刀川(もう、素直じゃないんだから)
小鷹「もしもし……私だけど、わかるわよね?」
パワプロ『えーと、みずきちゃんだっけ?』
小鷹「はあ!?」
パワプロ『あ、間違えた、聖ちゃんだったよね?』
小鷹「こんのバカ……!」
パワプロ『ゴメンゴメン、冗談だよ、小鷹』
小鷹「……あ・ん・た・ね・え~! からかったわね!」
パワプロ『ははは、小鷹は相変わらずだな、でもこういう会話も久しぶりで楽しいよ、ありがとうな、小鷹』
小鷹「……人の気も知らないで」
パワプロ『え? それってどういう……』
小鷹「何でもないわよ、このバカ!」
パワプロ『はは、小鷹にはバカって言われっぱなしだ、これもジャスミンのころから変わってないな~』
小鷹「当たり前でしょ! アンタは馬鹿なんだから! ……いい? 簡単に二軍に落ちるんじゃないわよ!」
パワプロ『もちろんだ、新人王を目指してホームランを打ちまくってやる!』
小鷹「それにこっちはテレビでいつも見てたいんだかね!」
パワプロ『おう! 俺が初めてヒロインに立ったらその時は……』
小鷹「……はい、ヒロ!」
太刀川「いいの? まだ、キャプテン話してるみたいだけど?」
小鷹「いいのよ! あんなやつ!」
太刀川(相変わらず言葉と顔が一致してないよ、タカ)
太刀川「それじゃあ、トリは……」
ほむら「……うおっほん! 携帯を貸してほしいッス」
太刀川(携帯争奪戦にはあえて参加しなかった感じなのかな……)
太刀川「はい、どうぞ」
ほむら「もしもし、パワプロ君ッスか? ほむらッス」
パワプロ『……あれ小鷹? ……まあいいか、最後はほむらちゃんだね、久しぶり』
ほむら「まずは一軍昇格おめでとうッス!」
パワプロ『ありがとう、ちーちゃんに……』
ほむら「ちーちゃんには聞いてないッス! ほむらの独自の情報ッス!」
パワプロ『そ、そうなんだ』
ほむら「またいずれ大々的にパワプロ君の昇格祝いをするッス! その時は是非参加してほしいッス!」
パワプロ『ありがとう、空いた日が出来たら連絡するね』
ほむら「ほ・む・らに連絡してくださいね、ほむらが幹事なんスから」
パワプロ『わ、わかったよ、必ずほむらちゃんに連絡する』
ほむら「それと試合に出場する日が決まったら連絡してほしいッス! チケットは手に入らないかもしれないけど必ずテレビ観戦するッス!」
パワプロ『うん、みんなに連絡するね』
ほむら「ちなみに今なにしってるッスか? もしよかったら……」
パワプロ『今、同僚と外で食事してるよ』
ほむら「あ、そうスか……お食事楽しんでほしいッス!」
パワプロ『うん、そっちも楽しんでね』
ほむら「もちろんッス! それじゃあ!」
パワプロ『うん、じゃあね』
ピッ
ほむら「……ふー」
夏野「何? こっちには誘えない感じだった?」
ほむら「外で食事してるそうッス」
かりん「まさか女の子と……!?」
ほむら「それはないッス、同僚って言ってたから、多分奥居さんとッス」
雅「奥居?」
ほむら「パワプロ君と同じ球団の外野手ッス、二軍で同期だからパワプロ君と仲が良いッス」
矢部田(やけに詳しいべ……)
小鷹(パワプロと仲が良い……なるほどね、これがほむほむの言う極秘ルートかしら)
美藤「……いい加減、私の携帯を返してほしいんだが」
ほむら「あ、悪かったッス、どうぞ」
美藤「まったく、他人のものだと思ってポンポン投げて」
太刀川「ゴメンね、壊れてない?」
美藤「うむ、それは大丈夫だ」
アンヌ「……なんだか変な感じになったな」
大空「そうですね~、乾杯し直して空気を変えましょうか~?」
ほむら「そうッスね、それじゃあ責任とってちーちゃんが音頭取って下さいッス」
美藤「なんで私が……まあいい、改めて乾杯だ」
一同「かんぱーい」
矢部田(パワプロ君がちーちゃんの事どう思ってるとか、なんでパワプロ君がちーちゃんに電話してきたかとか色々解決されてない気がするべ……)
雅(……まあでも、丸く収まったみたいだし、いいか)
END
ピッ
奥居「なんだ、結局振られたのかー?」
パワプロ「うん、まだ向こうは盛り上がってるみたい」
奥居「残念だったな、そのちーちゃんって子を誘いたかったんだろ?」
パワプロ「奥居が言ったんだろ、こんなところで男二人で飯を食うのは寂しくて嫌だって」
奥居「お前がこんな小洒落たレストランを誘うのがいけないんだろ~、てっきりいつもの定食屋だと思ったのに」
パワプロ「一回下見に行きたかったんだよ、一人で行くのは勇気なくてさ」
奥居「だからってこんな雰囲気あるところで男二人はどうなんだー? こういうのって大人がデートとかで来るところだろ?」
パワプロ「最初は本当にちーちゃんと来るつもりでいたんだ、でも断られちゃってさ」
奥居「それはさっき聞いたって……なあ、別に知り合いの女の子とかいないのか? お前の高校の野球部って周りはみんな女子なんだろ?」
パワプロ「その女子達はみんなちーちゃんと一緒に女子会をやってるみたい」
奥居「ああ、ちーちゃんって野球部の女の子なんだ、ということはオイラも見たことあるよな、お前の高校は大注目されてたし」
パワプロ「センターを守ってた子だよ、長い髪を後ろでしばった眼鏡の女の子、打順は3番だった」
奥居「……あー! 思い出した、あの頭の良さそうな女の子な、クールな顔してる子だろ?」
パワプロ「頭の良さそうな子か…………多分その子だと思う」
奥居「そっかー、お前はああいう子が好みなんだな」
パワプロ「なんだよ、急に」
奥居「だってここに誘うつもりだったんだろ? 完全にデートじゃんか、ほむらちゃんにいいつけてやろう」
パワプロ「デートじゃないって……というか、奥居はほむらちゃんの連絡先知らないだろ」
奥居「ふふん、残念だったな、お前からほむらちゃんの事を教えてもらった時に、本人に直接会って連絡先を交換していたのだ」
パワプロ「……それって確か一か月くらい前にほむらちゃんがファームの試合を見に来た時の事だよな? いつの間に……というかよくほむらちゃんも交換してくれたな」
奥居「まあ、お互いの利害が一致した結果、すんなりとな」
パワプロ「……利害?」
奥居(こっちはパワプロの情報をほむらちゃんに流して、ほむらちゃんはジャスミンの可愛い子と合コンをセッティングしてもらう、ウィンウィンってやつだな)
パワプロ「とにかく、ちーちゃんとはデートじゃないよ、さっきも言ったけど、あくまで下見のつもりで誘ったんだ」
奥居「ということは本命が別にいるってことか?」
パワプロ「まあ、そういうことかな」
奥居「なるほど……ズバリ、ほむらちゃんか?」
パワプロ「なんでそこでほむらちゃんの名前が出てくるんだよ」
奥居「それはだって向こうが……ゲフンゲフン」
パワプロ「え?」
奥居「いや何でもない、さっきのは忘れてくれ……それよりも教えろよ、お前が片思いしている子ってジャスミンの女の子か?」
パワプロ「ジャスミンといえばジャスミンだけど……教えても誰だかわからないだろ?」
奥居「なに言ってるんだよ、オイラはジャスミンの試合は毎試合チェックしてたんだ、ポジションか打順を言ってくれれば大体どんな子かわかるぞ」
パワプロ「ポジションに打順? そんなの覚えてたのか?」
奥居「もちろん! 可愛い子ばかりで野球が上手くて甲子園に出場したんだ、マスコミも注目しまくってたし、オイラ以外にも覚えてる奴いるは結構いると思うぞ」
パワプロ「あの時は大変だったからな……まともに練習できなくて田舎に野球合宿したし」
奥居「まあそんな事はどうでもいいって、それで誰なんだ? ピッチャーの元気な子か? それともショートのボーイッシュな子か? もしかしてキャッチャーのゴーグルかけてた子か?」
パワプロ「違うよ」
奥居「それならサードで四番にいたあの天然っぽそうな子か? それにファーストの茶髪の子とリリーフ登板した外人っぽい子も可愛かったな」
パワプロ「どれも違う」
奥居「後は……あ、もしかして一番で打ってた野暮ったい眼鏡の子じゃないだろうな?」
パワプロ「それも違う」
奥居「うーむ、それだと……さすがにオイラもベンチの子の情報はないな」
パワプロ「ベンチじゃないよ」
奥居「え……? あ、わかった、マネージャーだろ!」
パワプロ「ううん、というか、そもそも野球部じゃない、一応甲子園には来てたけど」
奥居「野球部じゃなくて甲子園に来てた……? ……応援に来たってことか?」
パワプロ「違う」
奥居「……じゃあ誰なんだ?」
パワプロ「加藤先生」
奥居「……本当に誰だ?」
パワプロ「養護教諭の加藤先生だよ、ケガ人とか出た時の為に一緒に甲子園に来たんだ」
奥居「説明されてもわからねえよ!」
パワプロ「だから奥居にはわからないって言ったじゃないか」
奥居「……というかお前、その加藤先生が好きなのにちーちゃんとかと遊んでたのか?」
パワプロ「変な言い方するなよ、ちーちゃんとは本当に友達として遊んでただけだし……まあちーちゃんのクールっぽいところは加藤先生と似てるけど」
奥居「……」
パワプロ「まあちーちゃんは付き合いがいいから誘えばあまり断られないんだけどさ、加藤先生は強敵でまったく相手にされないんだ」
奥居「……」
パワプロ「でも、この前一軍祝いの昇格にかこつけてやっとデートに誘えたんだ」
奥居「……」
パワプロ「それでちーちゃんと一緒にこのレストランの下見をしようと思ったんだけど、断られてこの状況になったってわけ」
奥居「……」
パワプロ「ちなみにこのレストランで食べ終わった後はカラオケに行く予定なんだけど、それもちゃんと練習しといたんだ、こっちちーちゃんからの太鼓判も貰えたからバッチリだと思う」
奥居(こちらが聞いていないのにどんどん話してくる……これはガチのやつか)
パワプロ「それでカラオケで上手く盛り上げて、いい時間になったころに夜景の綺麗な丘に誘って、そこでいいムードを作ってあわよくば……」
奥居「……オーケー、オーケー、お前のデートプランはよくわかった」
パワプロ「奥居的にはどう思う? 成功するかな?」
奥居「あー、するんじゃないか?」
パワプロ「よし! なんだか自信が出てきたぞ!」
奥居(パワプロ君の情報は全てほしいッス!って言われてたし、このこともほむらちゃんに流したほうがいいのか……?)
パワプロ「今から当日が楽しみだな~」
奥居(いや、止めておこう、オイラの勘がこれ以上この話に関わるなと告げている、絶対ロクなことにならない)
奥居「パワプロ」
パワプロ「なんだ?」
奥居「オイラは今日ここにいなかった、この話は聞いていなかった、そういうことにしておいてくれ」
パワプロ「え、なんだそれ?」
奥居がほんのり成長した
奥居はムードをよくする選手になった
奥居は走塁が上手くなった
END