~校舎裏~
七咲「ふふっ、そうなんですか。ほんと先輩の話って聞いてて飽きないですね」
純一(お、なんだかいい雰囲気だぞ。このまま顎とか撫でてみようかな)
純一「しっかしなんだな、七咲って猫みたいだよな」
七咲「え?…突然何言い出すんです?」
純一「いや、ほら…何処と無く…かな?」
七咲「何処と無く…ですひゃんっ!?」
純一「うん、何処と無く」サスサス
純一(うむ、いい反応だ!)サスサス
七咲「ちょ、ちょっと先輩!何で私の顎なんて撫でてるんですか!」
純一「いやだから、七咲が猫っぽいから」サスサス
七咲「そんなの…んんっ理由になりませんよ…はふぅ」
純一(あれ?てっきり怒られると思ったけど…満更でもない反応だぞ?)サスサス
七咲「って!ともかく今すぐ撫でるのやめてください!」
純一「その割にはえらく嬉しそうにみえるけどなあ」サスサス
七咲「むぅ…そんなことないです…あふっ」
純一(思ったより可愛い反応するからもう少し続けて見ようか)サスサス
七咲「んむっ…くむぅ…駄目…このままだと…」
純一「え?何が駄目って?」サスサスサスサス
七咲「あっ…もう我慢できないです…ひぅっ…!」
純一(顔を上気させ何かを必死に我慢する七咲…これは…)サスサスサスサス
七咲「あぁ…!もう出ちゃいそう…!駄目です先輩!見ないで下さいぃ!!」
ニュニュニュッ ポンッ
純一「……ん?」
七咲「あっ……」
純一(あ…ありのまま今起こったことを話そう)
純一(僕は七咲の顎を撫でていたと思ったら、七咲に猫耳と尻尾が生えた)
純一(ご都合主義とかヒロイン補正だとかそんなチャチなもんじゃ、断じてない)
純一(もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…)
七咲「………」プルプルプル
純一「あ、あの…七咲…さん?とりあえず何が起こったのか説明して…」
七咲「…ニャア」
純一「…へっ?」
七咲「ニャアーン!」バッ
純一「う、うわぁ!何で急に飛び掛ってぐへぇ!」
七咲「ゴロゴロ…」スリスリ
純一「な、七咲…?」
純一(なんだなんだこの状況は!押し倒されたと思ったら胸にほっぺたスリスリしてくるし…)
純一(…しかしまあ、なんだろう)
純一「可愛いからいいか!」ナデナデ
七咲「ふみゅ?…ごろにゃぁん」スリスリ
七咲「…………」ドヨーン
純一「な、七咲…そんな落ち込まなくても!か、可愛かったよ!」
七咲「……!」キッ
純一「ご、ごめん。分かったからそんなに睨まないで!」
純一(しかし涙目の女の子に睨まれるってのも…いいかも)
七咲「…はぁ、見られてしまったものは仕方ありませんね」クルッ
七咲「もう先輩にはお分かりだと思いますが、実は私…極度に興奮すると猫耳と尻尾が生えてしまう体質なんです」
純一「そ、そんな体質初めて聞いたよ…」
七咲「何でも世界に500人しかいないという凄く珍しい体質らしいです」
純一「へ、へぇ…そうなんだ。…ん?」
純一「ちょっと待って、極度の興奮状態になったらって事は…つまり」
七咲「えぇ、先輩がしつこく私の顎を撫でて来るからですよ…もう!」
純一「いやあ、まさか七咲がそんな事になるなんて夢にも思ってなかったから…ははは」
七咲「笑い事じゃないですよ!ああ…まさかこんな所で誰かにバレてしまうだなんて…」
純一「え?じゃあ家族はこの事を知らないの?」
七咲「はい、この事は誰にも話してないんです。というか話せるわけないじゃないですか」
純一「うん、まあ確かに…」
七咲「というわけで、今はこの事は私と橘先輩しか知らないって事ですよ」
純一「ふむ…僕と七咲しか知らない秘密かあ…いいなぁ」
七咲「へっ?」
純一「ほらっ、二人だけの秘密ってこう…特別な関係みたいで素敵だと思わない?」
七咲「と、特別な関係って…もう先輩!からかわないで下さいよ…はぁ…」
七咲「そんなの…余計に意識しちゃうじゃないですか」ボソッ
純一「え?今何か言った?」
七咲「な、なんでもありません!それよりそろそろチャイム鳴っちゃいますよ?」
純一「あ、ほんとだ。もうこんな時間かあ」
七咲「もう、先輩のせいでお昼食べ損ねたじゃないですか…」
純一「あはは…そうだ、今日は部活ある?」
七咲「あ、いいえ。今日は月に1回の設備点検の日なので休みなんです」
純一「お、じゃあさ、放課後一緒に帰らない?お詫びと言っちゃあなんだけど何か帰りに奢るよ」
七咲「え?そこまでしてもらわなくても…」
純一「いいからいいから!じゃあ放課後に校門の所で待ってて!それじゃっ」
タッタッタッタ
七咲「もう…変な所で押しが強いんですから…ふふっ」
タッタッタッタ
~教室~
純一「ふう、間に合った…はぁはぁ…」
梅原「おっ、なんだ大将、えらくギリギリだな。トイレか?」
純一「ふぅ…いやまあ色々あってね」
梅原「ふーん…あ、もしかして…!」
棚町「どうせまた七咲さんとお昼食べてたんでしょ!」
純一「うわっ、薫!驚かすなよ!」
棚町「あら?お昼の所は否定しないって事は…」
梅原「あんな可愛い後輩と一緒に飯食えるだなんて…かーっ!羨ましいぜ!」
棚町「折角ここにもこんな可愛い同級生が居るってに、まったくもったいないわねえ」
純一「………」
梅原「………」
棚町「…ちょっと、何でそこで黙るのよ」
~放課後 校門~
純一「はぁはぁ…七咲!遅れてごめん!」
七咲「まったく、こんな寒空の下で女の子を30分も待たせるなんて…何考えてるんですか」
純一「いやぁ、ちょっと追っ手を撒くのに時間かかっちゃって…はは」
七咲「追っ手?何の話ですか?」
純一「ああいやいや、そこは別にいいんだ。さあ行こうか!」
七咲「んん?…はい!」
―――――――――――――――――――――
~商店街~
純一「うーん、しかし寒いなあ」ブルブル
七咲「そうですねえ、最近めっきり冷え込んできましたから」
純一「いつも七咲が着てるそのジャケット、暖かそうでいいなあ」
七咲「そうですか?このジャケット、高校入学した時に買ってもらったやつなんです」
純一「そうなんだ。僕が今着てるやつなんか、中学生の時に買ったやつだからなあ…所々穴がね…」
七咲「確かに…だいぶくたびれてますね」
純一「そうなんだよ。かといって今更買い換えるのもなあって思ってたら何時の間にかこんな時期なんだ」
七咲「くすっ、先輩らしいですね。もし良かったら先輩の新しいジャケット選び、私も付き合いますよ?」
純一「ほんとに?でも今は持ち合わせないから…また新調するって時に必ず呼ぶよ」
七咲「はい、またその時は宜しくお願いします。あ、先輩あそこ…」
純一「どうかした…ああ、大判焼きの屋台か。もうそんな時期なんだなあ」
七咲「せーんぱい、今日は何でも奢ってくれるって約束でしたよね?」
純一「ん?奢るとは言ったけど・・・何でもとは」
七咲「何でも奢ってくれる約束でしたよね?」ニコリ
純一「は、はい、そうでした…はっ!?」
純一(しまった、七咲の笑顔につられてつい)
七咲「うふふっ、じゃあ一つ先輩にお願いがあるんですけど」
~公園 ベンチ~
七咲「はふっはふっ」
純一「七咲、そんな急いで食べると喉に」
七咲「はむ…んぐっ!?」
純一「ああ言わんこっちゃない!」
七咲「んんっ!んぐぐ・・・」ドンドン
七咲「ゴクン……ぷはぁ」
純一「そんな急いで食べなくても大判焼きは逃げないのに…」
七咲「う、うるさいですね!そもそもここまでお腹空かせてるのは誰のせいだと…」
純一「うぐっ、そこを突かれると痛いなあ。…そうだ!」ガバッ
七咲「ちょ、ちょっと先輩!何で私の大判焼き取るんですか!」
純一「まぁまぁ…よっと。はい七咲、あーん」
七咲「………はい?」
純一「七咲、ほらあーん」
七咲「あ、あの…先輩、急に何を?」
純一「だって七咲に渡してたらすぐに急いで食べようとするじゃないか」
純一「だから僕が少しずつ千切って食べさせてあげればさ、ゆっくり味わえるし喉にも詰まらないし一石二鳥じゃないか」
七咲「はぁ…」
純一「というわけでさ、ほらあーん!」
七咲「先輩…ほんとにすると思ってるんですか?とりあえず早く紙袋返して下さいよ」
純一「やだ」
七咲「えぇ!?やだじゃないですって!」
純一「やだ、だって渡したらまた喉に詰まらせるかもしれないし…危ないじゃないか」
七咲「か、かと言って…」
純一「あ、七咲が食べないのなら僕がこのまま食べちゃおうかな。いただきまーす」
ガシッ
純一「すみません冗談ですだから腕掴むのやめて下さい痛いです」
七咲「…したよ」
純一「え?」
七咲「分かりましたよ!それでいいですから!」
純一(何だ、言ってみるものだなあ…)
純一「よし、そうと決まれば早速ここに!」ポンポン
七咲「って!そこで何で先輩の膝に乗らなきゃいけないんですか!」
純一「何言ってんだ!古来より女の子にあーんする時は膝の上に乗ってもらうなんて常識だろう!」
七咲「そんな常識初めて聞きましたよ…」
純一「嫌なら僕が食べ…」
七咲「あーわかりましたわかりました!乗ります乗りますから!」
ヒョイッ ストン
七咲「こ、これでいいんですよね!」
純一(おお、僕の膝に七咲が…、お尻の感触が太ももに伝わってくるぞ)ハァハァ
七咲「…先輩?まさかエ〇チな事とか考えてませんよね…?」
純一「は、ははは!そんな事ないよ…ははは」
七咲「もう…」
モニュッ スッ パクリ
七咲「もぐもぐ…ゴクリ」
モニュッ スッ パクリ
七咲「もぐもぐ…ゴクリ」
純一(うーんこれは…)
七咲「…先輩?早く次のやつください」
純一「あ、ごめんごめん」スッ
七咲「もぐもぐ…ゴクリ」
純一「なんかさ、こうしてるとさ」
七咲「え?はい」
純一「生後間もない子猫に餌上げてるみたいだなあって思って」ニコッ
七咲「ふえ!?さ、さいですか……子猫…」
ニュッ
純一「あ」
七咲「あ」
純一(ま、まずい!まだ周りに人がいるこの状況、流石に怪しまれる!」
七咲「ふにゃ~ん」
純一「とりあえずどこか茂みに隠さないと!」
ガサガサ ガサガサ
純一「ふう…とりあえずここで収まるのを待つか」
七咲「ふみゃあ!ふみゃあ!」パシパシ
純一「い、いてて。なんだい七咲?」
七咲「ニャ」グイッ
純一「顎を突き出すポーズ…なるほど」
ナデナデ ナデナデ
七咲「ニャア~ン…ゴロゴロ」
純一(これはちょっとやばいな…可愛い所の騒ぎでは…)
ポンッ
純一「あ、戻った」ナデナデ
七咲「…ふう」
純一「お帰り七咲」ナデナデ
七咲「はい、先輩ただいまです」
純一「……」ナデナデ
七咲「……」
七咲「…あの、いつまで顎撫でてるんです?」
純一「え?あ、そ、そうだね…ははは」
七咲「……はぁ」
純一「……」
七咲「……」
純一「…帰ろうか」
七咲「ですね…」
七咲「じゃあ私はここで」
純一「うん、じゃあまた明日」
七咲「はい、先輩さようなら」
スタスタスタ
純一「……こう見てるとあの甘えっぷりが嘘のようだな」
スタスタスタ
七咲(はあ、今日は疲れたな…、まさか先輩に私の秘密がバレるとは)
七咲(うーん、先輩引いちゃったかな。いや、反応見てるとそんな事はないと思いたいんだけど)
七咲(ってあれ?何で私先輩に引かれるの怖がってるんだろう…。あんな変態で覗き魔のどうしようもない人なのに)
七咲(………今日は帰って早く寝よう。うん)
~自宅~
純一「ただいま~」
美也「おかえりにいに!今日は逢ちゃんと一緒に帰ってたの?」
純一「ぶふぅ!?」
美也「あ、図星だ!」
純一「ごほっごほ…な、なんてことをいきなり聞くんだ!」
美也「いや、なんか最近逢ちゃんと喋ってる時ににいにの話題が増えたなって思ってさ」
美也「あ、後友達が最近逢ちゃんとにいにが一緒にいる場面を良く見るようになったって言ってたし」
純一「そ、そう」
美也「で、ほんとのところはどうなの~?教えてよ~!」
純一「うるさいなあ…美也には関係ない!」
美也「え~?にいにのケチんぼ!」
純一「ははは、何とでも言うがいい」
翌日 ~屋上~
純一(う~ん、今日は天気がいいなあ。こんな日にする背伸びは格別だね)
純一「っと、あれは…?」
七咲(うん、今日は天気が良い。思わず背伸びしたくなっちゃう)
純一(七咲じゃないか…よし、ちょっと驚かせてやろう)
七咲「んんっ…う~~ん!」ググッ
七咲(あー、気持ちいい…)
コショコショコショ!
七咲「あひゃぁっ!?」ガバッ
純一「はははは!背伸びの最中に脇腹こしょばし作戦大成功!」
七咲「も、もう先輩!急に何するんですか!」
純一「いやあ、七咲の姿が見えたから…ついね。しかし脇腹弱いんだなあ」
七咲「う、うるさいです!私くすぐられるの苦手なんで…あひぃ!?」
コショコショコショ
純一「そーれ隙ありぃ!」
七咲「やっ先輩っやめっあははははは!」
純一「そーれそれそれそれ」コショコショコショコショ
七咲「あひっもうほんとにっわたっしぬっくひひひ」
純一「まだまだぁ!」コショコショコショ
七咲「ほんとにっあひっ!駄目でっこれ以上」
純一「あはははは…はは」コショコショ…
七咲「………」ビクンビクン
純一(まずい、つい調子に乗りすぎてしまった…)
純一「あ、七咲…大丈夫?」
七咲「………」コヒューコヒュー
トントントン
純一(ま、まずい。誰か階段を昇って来る音が!こんな場面見られたら誤解だなんて話じゃ済まされないぞ…)
純一(取り合えず死角に…」ズリズリ
ガチャリ
美也「逢ちゃーん!どこいったのー!早くしないと次の授業始まるよー?」
純一(げぇ!よりにもよって美也じゃないか!危なかった…)
美也「おっかしいなあ、屋上に行くって聞いたのに…まさか入れ違いになってたのかなあ」
タッタッタ ガチャン
純一「…どうやら行ったみたいだな。さて、とりあえず出よ」
グイッ
純一「…ん?ああ、七咲気が付いたか…って!?」
七咲「せーんぱーい…まさかあれだけ私をいじめて自分は逃げるって言うんですか…?」
純一(ね、猫化してるだと!?)
七咲「うふふっ、そんなことは許しませんよ…?今からたーっぷり仕返ししてあげますからね」
純一「な、七咲とりあえず落ち着け!もう次の授業始まるぞ!」
七咲「そう言って逃げようとしても駄目ですよー?ふふっ」
純一(何だと!?周りが見えていない!)
七咲「ほら先輩…大人しく諦めてください」
純一「ちょ、ごめんって七咲!頼むから命だけは!」
七咲「ふふ…それはどうでしょう…」
純一(ごめんな美也、もうまんま肉まんあげることは出来ないみたいだ)
純一「…うぅ!」
ペロッ
純一「……ん?ペロッ?」
七咲「んむ…ふぅ…」ペロペロ
純一(なななな!?七咲が僕のほっぺを舐めてるだと!?)
七咲「んん…ふふっ、こんなもんじゃ済まされませんよ…?」
純一(ほっぺの次はおでこ…首筋…鎖骨…)
七咲「んんっ…!はむぅ…」ペロペロ
純一(と思えば指を咥えて指先ペロペロだと!?)
七咲「んっ」チュポン
七咲「うふふ…あむっ」ペロペロ
純一(そ、そんな一本ずつ味わうように舐めまわして…)
七咲「ちゅるっ…くむっ」ピチャピチャ
純一「幸せだ…」
七咲「んむ?…ふふっ」ピチャッ ペロペロ
純一(僕このまま死んでもいいや)
~昼休み 食堂~
純一「……」ボー
梅原「おいおい、さっきからどうしたんだよ大将。ボーっとして」
純一「あ、いや…ちょっとな」
梅原「ふーん…そういえばさ、お前さっきの数学の時間いなかったよな。何かあったのか?」
純一「あ、ああ…な、後輩が具合悪そうにしてたからな、保健室まで連れてってあげたんだよ」
純一(ここで七咲の名前だすとまた面倒くさい事になりそうだ、危ない危ない)
梅原「それにしては1限丸々潰してたな……はっは~ん、さてはお前、ついでにサボろうと思ったからだろう!」
純一「そ、そんなんじゃないよ!まあ数学の時間がダルいってのは認めるけど」
梅原「ははは、まあそういう事にしといてやるよ。あ、おばちゃん俺シーフードカレー大盛りで」
純一「僕は味噌カツ定食で」
食おば「あいよ、少し待っててね」
純一(うーん、やっぱりさっきのは夢だったんじゃないだろうか。あんな夢のような体験…)
純一「………」クンクン
梅原「ん?何だ橘、急に指の匂いなんか嗅いで」
純一(…うん、夢じゃないな!手を洗うときにわざと小指と薬指だけよけて洗ったんだけど…)
純一(この七咲の唾液の甘い匂い、紛れも無い証拠だよ!)
純一「ぐへへ…」
梅原「な、なんだぁ?ボーっとしてたかと思えば急にニヤけだすし…今日のお前、相当変だぞ…」
純一「そうかな…普通だよ」ニヘラ
食おば「はいお待ちどう様!」
梅原「おっきたきた!美味そうだな~」
純一「さて、空いてる席は…ん?」
純一(あのテーブルに座ってる3人、間違いなく美也と七咲と中多さんだよな…)
純一(…ちょっと遠くの席から様子見てみようかな)
梅原「お、空いてる空いてる!よっと」
純一(幸い3人はこっちに気付いてはいないな。どれどれ…)
梅原「うっひょー!この新作のシーフードカレー、初めて食ったけど超うめえ!」
純一「お、おい…食堂ではもうちょい静かにしろって」
美也「ほ、ほら逢ちゃん!早く食べないと冷めちゃうよ!」
中多「そ、そうですよ!」
七咲「うん…」
美也「うーん…まいったねこりゃあ」
中多「あ、あの…七咲さんどうかしたんですか?」ヒソヒソ
美也「いや、それがみゃーにもさっぱり!急に戻ってきたと思えば授業中ニヤニヤしたり頭抱えてたり悩んだ風だったり…」ヒソヒソ
中多「はあ、そ、そうなんですか…」ヒソヒソ
美也「絶対ばかにぃにのせいだよ!また逢ちゃんに変な事言って困らせて…」ヒソヒソ
七咲「はあ…先輩…」
美也「…ほらね?さっきからずっとにぃにの事ばっかり」ヒソヒソ
中多「悩めるお年頃、ってやつなのかな…」ヒソヒソ
美也「いや、紗江ちゃんそれは違うと思う…」
七咲(さっきの時間…あれはやっぱり夢だったんじゃ…?)
七咲(でも…現に先輩の指の形とか今でも思い出せるし…)
七咲(…先輩、良い匂いだったな。なんともいえないけど…こう、橘先輩らしい匂いで)
七咲(……って私何思ってるの!?これじゃまるで先輩みたいじゃない…うーん…)
美也「あ、まただ」
中多「か、かなりイッちゃってますね…」
七咲「っと、早く食べないと」
美也「お帰り逢ちゃん!」
七咲「えっ?あっ、ただいま」
美也「にしししし~、逢ちゃんさっきは何考えてたのかな~?」
七咲「な、なんでもないよ!」
中多「あはははは…」
純一(ふむ、どうやら七咲も似たような感じだな。なんか安心したぞ)
梅原「おーい」
純一(…ってなんで僕は安心してるんだろう?うーん…)
梅原「おーい!」
純一(何なんだろうな…この気持ち。ぼ、僕はもしかしたら七咲の事を…)
梅原「大将~!」
純一(いやいやいや…それはないだろう。大体僕は年上の人が好みで年下は…)
純一(でも…七咲の水泳で引き締まった体に競泳水着のコンボは…うん…)
梅原「おーい橘!聞いてるのか!」
純一「う、うわぁ!?なんだよ梅原…急に驚かすなって」
梅原「お前なあ…それはこっちのセリフだ。急に向こうの席の方見てボーっとして…ん?向こうの席の3人は…」
梅原「…なーるほどな、そういうことか!」
純一「な、なんだよ…」
梅原「まあまあ、さっさと食って帰ろうぜ?」
~放課後 校舎裏~
純一「はぁ…はぁ…いないなあ」
純一(何だか無性に七咲に会いたくなって思わずここに来ちゃったけど…よく考えたら別に走る理由もなかったな)
純一(そういつも七咲がここに居るわけでもないし)
純一「はあ、帰ろうかな…」
タッタッタッ ドンッ!
純一「う、うわぁ!?」
「きゃぁ!」
ドシン
純一「いてて…なんだ?誰かにぶつかって…って七咲!?」
七咲「あいたたた…ご、ごめんなさい!私、ちょっと急いでて……って先輩!」
純一「どうした七咲、そんなに急いで…忘れ物か?」
七咲「あ、その…いえ、違うんです…」
純一「ん?違うのか。だったらどうして?」
七咲「……あ、あの…笑わないで聞いてもらえますか?」
純一「え、うん」
七咲「何となく…何となく先輩に会いたくなって、それで気が付いたらここに向かって走ってて」
純一「それでお互いぶつかった、と…」
七咲「はい…あの、本当にすいません!」
純一「いやいや、気にすること無いよ。でも驚いたなあ」
七咲「え?驚いた…ですか?」
純一「いやさ、僕も無性に七咲に会いたくなって走って来てね」
七咲「えっ…」
純一「ははは、僕達考えてること一緒だね」
七咲「え、あの…そ、そうですね!」
七咲(そうか、先輩も私に会いに…これって偶然なのかな?それとも…)
純一「………」
七咲「………」
純一(どうしよう、何だか話を切り出し辛いぞ)
純一「………」チラッ
七咲「………」
純一(うーん…あ、そうだ)
純一「あ、あのさ、七咲」
七咲「はい?何でしょう…?」
純一「きょ、今日のあの事なんだけど…」
七咲「……!」カアー
純一(わあ、瞬間湯沸かし器並のスピードで顔が赤くなったぞ)
七咲「そ…その話は駄目です!」
純一「え?な、なんで?」
七咲「駄目ったら駄目なんです!」フイッ
純一「え、あ…あの」
七咲「………」
純一「な、なあ七咲…良かったら理由、教えてくれないか?」
七咲「………」
純一「ほら、僕としても理由聞かずに断られるのも納得いかないかなー、なんて…」
七咲「……思い出すと」
七咲「思い出すと、我慢が利かなくなっちゃうんです!」
純一「我慢?我慢って事は…」
七咲「はい…猫耳と尻尾の事です」
七咲「あれは…そう、今日のお昼を食べてからの事でした…」
先生「…つまり、この式の答えはこうなるってわけじゃな。で、次の問題じゃがこれは…」
七咲「………」ボーッ
美也(あ、逢ちゃんまたボーってしてる)
七咲(駄目…私ただでさえ数学苦手だからしっかり話し聞かないといけないのに…)
七咲(気がつくと…さっきの事ばっかり思い出してる)
七咲(先輩の匂い…なんであんなに惹かれるんだろう?別に香水付けてるとかじゃないのに)
七咲(フェロモンってやつなのかな…)
先生「…というわけじゃ。全員しっかり黒板写せたかの?」
七咲(あ、いけない…黒板消されちゃう!ボーっとしててノート写せてなかった)
七咲「………」カリカリカリ
七咲(…ふう、これでよしっと)
七咲(駄目駄目、集中しないと…)
七咲(……先輩の首筋、ほんのり汗の味したなあ。体育の後だったのかな?)
七咲(鎖骨舐めたとき…先輩ちょっとピクンってしたなあ)
七咲(反応、可愛かったなあ…くすっ)
七咲(指舐めてた時の先輩の顔、面白かったなあ)
七咲(あの呆気に取られた、嬉しさと恥ずかしさが混じったような顔)
七咲(橘先輩…会いたいなあ)
ニュッ
七咲(…ん?ま、まさか、この感蝕は…!?)スッ
ピトッ
七咲(え、えええ!?ね、猫耳生えた!?)
七咲「……!!」フルフル
中多(あ、七咲さん大丈夫かな…急に慌てた様子で辺り見回したりして…)
七咲(うん、まだみんなには…こうなったら)
七咲「あ、あの」サッ
先生「ん?どうしたんじゃ?」
七咲「ちょっと頭痛がするので、保健室行ってきます!」
先生「おお、それは大変じゃ!誰か一緒についていってあげなさい」
美也「あ、じゃあ私が!」
七咲「え、あ、いえ!一人で大丈夫なので…」
先生「そうかの?でも万が一という事も…」
七咲「いえ、ほんとに大丈夫なので!それでは!」
ガラッ タッタッタ
~保健室~
保険先生「じゃあ静かに寝てるのよ?薬は枕元の机に置いておくからちゃんと飲むように」
七咲「うーんうーん…ありがとうございます…」
保険先生「それじゃあ私は少し用事があるから席を外すわ。また後で様子見に来るからくれぐれも安静にしておくように」
ガラララ ピシャン
七咲「うーんうーん………行ったかな」
七咲「何とかバレずに済んだ…流石にこんな有様を見せるわけにはいかないし…」ピョコ
七咲(でも何で急に生えてきたんだろう?特に異常に興奮してたってわけでもないのに)
七咲(んー…だってあの時考えてたのは、今日のあの出来事…)
七咲(…えぇ!?じゃあ私はあの時間に先輩の指とか首筋とか舐めた事を思い出して興奮したって事!?)
七咲(いやいや…だってあれは不可抗力だし、そもそも先輩のせいで猫化したわけだし…別に私が望んでやったわけじゃ…)
七咲「……先輩の指、美味しかったな」ボソッ
ギュニュニュッ
七咲「はえっ!?また少し大きくなった!?」
・
・
・
七咲「…とまあ、そんな感じでこれ以上耳と尻尾を大きくさせないように凄く苦労したんですからね?」
純一「は、はあ」
七咲「何ですかその生返事…、本当に反省してるんですか?」
純一「ちょ、ちょっと待って。それ別に僕悪くないよね?」
七咲「え?当事者が今更何言ってるんですか。そもそもこうなったのも先輩の所為で…」ブツブツ
純一(勝手に思い返してたのは七咲のほうじゃないか…って言ったらどうせ拗ねるからやめとこう)
純一「ま、まあ今は収まったんだろ?よかったじゃないか」
七咲「先輩、話逸らそうとしてますよね…。まあ、収まったんでもういいですけどね」
純一「うんうん、やっぱりその笑顔が可愛いなあ」ポンポン
七咲「…頭ポンポンするのやめてください」
純一「ん?じゃあ…」ナデナデ
七咲「ナデナデするのも…駄目です」
純一「うん、わかったよ」パッ
七咲「あっ…」
純一「ごめんな七咲、確かにこうやってたらまた猫化しちゃうかもしれないな」
七咲「あ、あの…いやその」
純一「もう七咲に迷惑かける訳にもいかないし…んぐっ!?」
純一「あ、あの~七咲さん?どうして急に僕の膝の上に?」
七咲「……」ムッスゥ
純一(え、何でちょっと拗ねてるの!?)
七咲「…はぁ、これだから先輩は駄目なんですよ」
純一「えぇ!?何で急にダメ出し!?」ガーン
七咲「………」
純一「はぁ…すまん七咲、ちょっとからかいすぎたよ」ナデナデ
七咲「あっ…えへへ…」
純一「……!!あーもうこのやろう!可愛いやつめ!」グニグニ
七咲「あ、もう先輩!そんな乱暴にしたら髪の毛クシャクシャになっちゃいますよ!」
純一「何を~?誘って来たのは七咲の方だろう!」クシャクシャ
七咲「あははっ!何だか頭がこしょばいのでやめてくださいぃ!」
純一「それっ!」コショッ
七咲「ひぃん!…だから脇は反則って言ってるじゃないですかー!」グイッ
ガシッ
純一「ははは、こうやって腕さえ掴んでしまえば!」
七咲「あ!先輩放して下さい!」ジタバタ
純一「お?まだ抵抗する気だな、そんな奴には…こうだ!」ガバッ
ギュウッ
七咲「ふえっ!」ピクン
純一「はっはっは、こうやって後ろから抱きしめさえすれば身動き取れないだろう!」
七咲「………」
純一「ほら大人しくなった。今回は僕の勝ちだな七咲!わはははは……はは」
七咲「先輩……それ、狙っててやってます?」
純一「へ?何が…?」
七咲「だから…そんなことされたら私…私…!」
ニュニュッ ポンッ
七咲「…我慢できなくなっちゃうじゃないですか」
純一「あ、な、七咲ごめん!決して故意にやったわけじゃあ」
七咲「はぁ…そんなの分かってますよ。そこまで先輩が考えてるとも思えませんし」クスッ
純一「あははは…」
七咲「まあ、猫化してしまったものは仕方ないですし、このまま帰るわけにも行きません」
純一「うん、確かに…」
七咲「と、いうわけで…取り合えず名残惜しいんですけど手を離してもらっていいですか?」
純一「あ、ごめん」パッ
七咲「ふう…で、お次はですね」
ゴロッ
純一「えっ、あの七咲さん何を」
七咲「見て分かりませんか?先輩の膝で丸まってるんですよ」
純一(あ、七咲の息がお腹の辺りに当たって…なんかいいぞ…じゃなくて!)
純一「な、七咲!ただでさえ猫化してるってのにこんな場面見られちゃ弁解のしようがないぞ!」
七咲「それは大丈夫ですよ。こんな所滅多に人来ませんし、今日は水泳部もないですから」
純一「で、でも…」
七咲「でも…なんです?…先輩、もしかして嫌でしたか?」
純一「そんな訳ない、むしろ非常に嬉しい」キリッ
七咲「うん、いつも通りの先輩で安心しました…ふふっ」
七咲「ふあ~…というわけで私、寝ますね」
純一「え、ここで!?」
七咲「当たり前じゃないですか。先輩の膝で丸まってると、暖かくて何だか眠くなって来た…ので…」
純一「え、ちょ、ちょっと」
七咲「おやふみなさいです…」コテン
七咲「………」スー…スー…
純一「あ、本当に寝ちゃったよ」
純一「………」
純一(何だか僕も眠くなってきたな…七咲が膝の上にいるからかな…身体がポカポカして来て…)
純一「でも寝るわけには…誰か来ないか…みは…ら…」
純一「………」グー…グー…
――――――――――――――
カァー カァー
七咲「んん…んっ…!」
七咲「ふあぁ~……あれ?ここは…」キョロキョロ
純一「………」グゥ…グゥ…
七咲「あ、とりあえず先輩起こさなきゃ…よいしょっと」グッ
七咲「せんぱ~い、起きてくださ~い」ペシペシ
純一「んん…あ、七咲か…おはよう…」
七咲「すっかり夕方ですよ。そろそろ帰らないと親が心配しちゃいます」
純一「そうだな…よっと!」
純一「あ、猫化も収まったみたいだな。よかったよかった」
七咲「はい、どうやらそのようです。ご迷惑おかけしました」ペコリ
純一「あ、いやいや!むしろお礼言いたいぐらいだよ」
七咲「え?お礼…?」
純一「ほら、七咲が膝で丸まってたお陰で色んな意味で堪能を…」
七咲「……はぁ、ほんとに先輩は変態ですね」
純一「何だと!変態なのは否定しないけどそれなら七咲もだろ!」
七咲「はぁ?どうして私が変態になるんですか…?」
純一「ほら、今日の膝で丸まるのもそうだし、この間の舐めてきたやつも…」
七咲「なっ…あ、あれは違います!ノーカウントです!」カアァッ
七咲「あれは…全部猫化した時にやったやつじゃないですか!」
純一「でも七咲がした事に代わりはないだろう?」
七咲「あ、ああなっちゃうと猫の本能で行動しちゃうから仕方ないんです!」
七咲「舐めたのも膝で丸まったのも全部本能が悪いんです!私が考えて行動したわけじゃありません!」プイッ
純一「わ、わかったわかった…僕が悪かったよ七咲」
七咲「ふんっ!先輩のいじわる」
~帰り道~
純一「そういえばさ、猫化してる時でも普通に喋れたんだね。僕てっきり鳴き声しか出来なくなるって思ってたよ」
七咲「へっ?私…普通に喋ってました?」
純一「う、うん…至って普通に。まあ言動は普通じゃなかったけど」
七咲「そういえば…思い返してみると確かにさっきは普通に…」
七咲「不思議ですね…猫化してる時は人語は喋れなくなるはずなんですが」
純一「え、そうなの?」
七咲「はい。私以外にこの体質が出てる人を観察した結果らしいんですけど」
純一「へ~…それは本当に不思議だなあ…あ」
七咲「どうしました?先輩」
純一「もしかして…慣れなんじゃないかな?」
七咲「慣れ…ですか?」
純一「うん、確かこの前の七咲の話からだと、滅多に猫化はしないって話だったよね」
七咲「は、はい…。そもそも日常生活で以上に興奮するって状況がないので」
純一「でも最近、というか今日含めて4回もこの短期間で起こったわけじゃないか」
七咲「はい、そうです」
純一「つまりだ、この短期間で一気に4回も起こった。その所為で身体が慣れてきてるんじゃないかな」
七咲「なるほど…説得力ありますね」
純一「あくまで推測だからね、本当の所はどうかわからないけど…」
純一「それより心配なのは、その慣れのせいで日常生活に支障をきたさないかだね」
七咲「確かに…私が急に授業中猫化しちゃったのも…そのせいかも」
純一「だろ?ふとしたきっかけでポンッと出ちゃうかもしれない」
七咲「うぅ…みんなの目の前で急に猫化なんて…確実に引かれちゃいますね…」
純一「一部の人には需要あるかも」
七咲「…変態」
>>63
馬鹿野郎
俺らには七咲がいるじゃねぇか
まぁ絢辻さんが一番好きな訳だが
~翌日~
純一「お~寒い寒い…まったく何だってこんなに寒いんだろうな…」ブルルッ
七咲「そんなの冬だからに決まってるじゃないですか」
純一「そうだなあ、冬だもんなあ……ってうわあ!」
七咲「くすっ、先輩おはようございます」
純一「な、七咲か。朝っぱらから驚かさないでくれ…心臓に悪い」
七咲「うふふ、すみません。先輩、今日は珍しく朝早いですね」
純一「ん?ああ、今日は何となく早く出ようと思ってね。途中で七咲に会えたのはラッキーだなあ」
七咲「えっ…あ、そうなんですか」
純一「うん、朝から元気出てくるよ!七咲は朝練だろ?早く登校しちゃおうか」
七咲「は、はい!」
タタタッ
七咲(朝から偶然先輩に会えるなんて…私も凄くラッキーだ。今日はいい1日になりそう!)
~プール~
七咲「♪~」ザバァッ
塚原「あら、誰か居ると思ったら…やっぱり七咲だったのね」
七咲「あ、塚原先輩。おはようございます」
塚原「七咲ったら朝から熱心ね、流石だわ」
七咲「いえそんな…、少しでも練習して早く先輩方に追いつきたいんです」
塚原「ふふっ、その心意気よ。またフォームの練習とか何でも相談に乗るからね」
七咲「は、はい!ありがとうございます」
塚原「それはそうと…今日は朝から随分機嫌いいのね。鼻歌歌っちゃったりして」
七咲「えっ!?き、聞いてたんですか…恥ずかしいですね…」
塚原「ええ、今日は朝から何か良い事でもあったのかしら?例えば…そうね、橘君に会えたとか」
七咲「あ、い、いやそんなこと…」カアァ
塚原「うふふ、図星…ね」
七咲「あうぅ…」
塚原「ねえねえ、一つ聞いていいかしら?」
七咲「は、はい?」
塚原「橘君とは…どこまで行ったの?」
七咲「ふえぇ!?ど、どこまでって…」アタフタ
七咲「そ、そもそも橘先輩とは付き合ってるとかそういう関係じゃないですし…ただの先輩後輩の関係で…」
塚原「あら、そうなの?私はてっきり付き合っているもんだと思ってたわ」
七咲「せ、先輩!からかうのもこれくらいにしてください!」
塚原「あはは、ごめんね。ついいじめたくなっちゃって。でも…」
七咲「で、でも?」
塚原「実際の所どうなの?橘君とは」
七咲「だ、だから本当にただの先輩後輩の関係なんです!」
塚原「あら?その割には最近良く学校内で一緒に居る所、よくみるわよ」
七咲「え?そ、そんなことないですよ」
塚原「昨日は食堂で一緒に居たでしょ?一昨日は廊下で喋ってたし、その前は校門で…」
七咲「あわわわ!わ、分かりました!分かりましたからその辺で…」ワタワタ
塚原「それじゃあ認める?」
七咲「は、はい…」
塚原「はい、素直でよろしい」
七咲「もう…塚原先輩本当に勘弁して下さい…」
塚原「本当に七咲は面白いわね。…あら、もうこんな時間。そろそろ着替えないと間に合わなくなるわよ七咲」
七咲「あ、はい。わかりました」
塚原「何だかごめんね、朝練の時間取っちゃって」
七咲「いえ、気にしないで下さい。私も上がろうとしてた所だったんで」
塚原「そう、それならよかったわ」クスッ
七咲「はいっ」
~昼休み 食堂~
純一「さあ学生のいこいの時間、昼休みだ!今日は何にしようかな~」
純一(…おや?あの食券販売機の前に居るのは…)
七咲「うーん…」
七咲(今日のおすすめはB定食、でもこっちの天ぷらうどんも捨てがたい)
七咲「う~~ん……」
純一(七咲かじゃないか、もしかして何を食べようか迷ってるのかな)
純一(そうと決まれば早速…)タタタッ
七咲「よし…決めた!」チャリンチャリン
七咲「天ぷらうどんと…わひゃぁっ!?」
ガバッ ピッ
純一「だーれだ!」
七咲「そ、その声は…橘先輩ですね!」
パッ
純一「ははは、大正解!」
七咲「もう!突然目隠しするなんて…一体何のつもりですか?」
純一「いやあ、七咲が見えたもんで…つい、かな」
七咲「はぁ…先輩のせいでボタン押し間違えたじゃないですか…」スッ
七咲「えっと…あ、先輩!」
ヒョイッ
純一「ごめんごめん、それは悪かった。その食券は僕が貰うから代わりに代金払うよ」チャリン
七咲「え、そんな…大丈夫ですよ」
純一「いいからいいから!七咲も好きなもの食べたいだろ?僕は特に決まってなかったからね」
純一「おばちゃーん、食券ここ置いとくよ」スッ
食おば「あいよ!…って、ちょいとあんた!本当にこれ食べるのかい?」
純一「え?そうですけど…何か問題が?」
食おば「いや…あんたもやるねえ」ニヤリ
純一「……?」
七咲「あ、私は天ぷらそばで」スッ
~~~~~~
食おば「はいお待ちどうさま」コトッ
純一「お、来た来た…ってええええ!?」
純一「ちょ、ちょっとすいません!何ですかこれ!?」
食おば「何って…あんたが買ったやつでしょ?悶絶激辛坦々麺」
純一「」
食おば「いやあすごいねえ!ここで働いて10年になるけど、これを注文したのは過去に10人もいなかったってのに…」
純一「あ、そ、そうなんですか…へえ…」タラタラ
食おば「ちなみに、完食した人はいないんだよ」
純一(いや、これはさすがに…)
七咲「先輩…それ…」
純一「うん、取り合えず席を探そう」
~~~~~
純一「…さて」ストン
七咲「せ、先輩…それ、なんかボコボコ言ってるんですけど…」
純一「まさかこんな殺人兵器がうちの食堂に隠されていたとは…知らなかったよ…」
七咲「先輩!こんなもの食べたら死んでしまいますよ!」
純一(確かにこれを食べないと言う選択肢を選ぶのは簡単だ。しかし…)
七咲「橘…先輩…」
純一「七咲!」
七咲「は、はい!」
純一「ありったけの水を持ってきてくれ!急いで!」
七咲「先輩!そんな…無茶です!」
純一「七咲…分かってくれ。男には、引けぬ勝負があるんだ」
七咲「……わかりました!すぐ持ってきます!」
タッタッタ
純一(こいつの攻略…それは即効勝負!時間をかければかけるほど辛さで文字通り悶絶地獄に陥るだろう)
純一(つまり、辛さが浸透する前に食べきれば…僕の勝ちだ!)
七咲「先輩!」コトッ コトッ
純一「うん、ありがとう七咲!」
七咲「いえ、私にはこれくらいしか…」
純一(準備は整った…さあ、ここからは僕とお前の真剣勝負!)
悶絶激辛坦々麺「………」ボコボコ
純一「南無八幡台菩薩!いざゆかん!!」バッ
~~~~~~~~~~~
森島「あ~体育疲れた~!もうお腹ペコペコよ…」
塚原「そうね、後片付けで随分時間取られちゃったし」
森島「早く食堂行ってお昼ごはん~~……ってあら?何だか食堂が騒がしいわ」
塚原「あら、確かに…何かあったのかしら」
森島「ん~!何だか面白そうな事が起きてる予感がするわ!行くわよひびき!」
タッタッタ
塚原「あ、はるか!ちょっと待って!」
タッタッタ
生徒「半分きったぞー!」
生徒「もう少しだ!頑張れ!」
森島「ちょっとちょっとぉ!何よこの人だかりは」
塚原「どうやらあそこのテーブルで何かやってるようね…行ってみましょう」
森島「ねえねえそこの君!今ここで何やってるの?」
生徒「はい?…ってわあ、森島先輩!こんにちは!」
森島「まあまあ、挨拶はいいからいいから!それよりこのテーブルで何やってるの?人だかりが凄くて見えないのよ」
生徒「あ、それはですね…」
「先輩!もう少しです!頑張ってください!」
「だ、駄目だ…口の中が大噴火だよ…」
塚原「あら?あの声…」
「ほら、お水です!」
「ゴクッゴクッ…ぷはぁ!」
塚原(まさか…)
塚原「はるか!」
森島「オッケー、任しといて!…ふーぅ」
森島「みんなー!ちょっと私にも見せてくれるー?」
生徒「え?この声って森島先輩?」
生徒「お、おい森島先輩だ!お前らスペース空けろ!」
ザワザワ ザワザワ
生徒「ど、どうぞ!」
森島「ありがとうみんな~・・・てわお!」
塚原「やっぱり、七咲と橘君だったのね」
七咲「つ、塚原先輩に森島先輩!どうしたんですか!?」
塚原「いや、それはこっちのセリフよ…、この騒ぎは一体何?なんで橘君が号泣しながら麺すすってるの?」
七咲「いえ、それが…かくかくしかじかで」
塚原「な、なるほど…」
塚原(この2人は一体なにやってるんだか…)
森島「橘君!お味はどう?」
純一「ヴぇ?もびじばぜんばヴぃ?」
森島「そうよ、森島先輩よ?しっかしその唇!まるでタラコみた~い!」
純一「ぞんばわばヴぃごどヴぁなびんべず…」
森島「笑い事じゃないって?ごめんごめん」クスッ
七咲「橘先輩!残りタイムリミットは3分です!」
純一「ぞんヴぁ!?」ヒーヒー
純一(残り3分でこの量…駄目だ…とてもじゃないがこれ以上は…)
純一「ずヴぁん…ずヴぁんぬぁぬぁざぎ…」
純一「ぼぐは…ぼぐはむるぃぎだ…!」ポロポロ
七咲「そんな!先輩は決して無力なんかじゃありません!だから…だから…!」ポロポロ
森島「うぅっ…泣けるわ…」
塚原「ええっ!?」
森島「橘君!」
純一「もびじま…ぜんヴぁい?」グスッ
森島「まだ…まだ行けるわ!あなたには無限の可能性がある!それを信じるのよ!」
七咲「森島…先輩…」
森島「ほら、逢ちゃんからも言うのよ!あなたが…あなたが彼を一番信じてあげられなくてどうするの!?」
七咲「はっ…!そうです…そうですね!」
七咲(でも残り時間は2分!たった…たった3口程度なのに…その3口がこんなにも先輩を苦しめるだなんて!)
七咲(何か…何か手は……そうだ!)
七咲「橘先輩!ドンブリかしてください!」
純一「ヴぇっ?だヴぇば!ぬぁぬぁざぎ!」
七咲「駄目なんかじゃありません!これが…これが私の出来る精一杯の事です!」
ズルズルズルズルー
森島「あ、逢ちゃん!?」
生徒「お、おい!あの女の子が麺をすすったぞ!」
生徒「なんてこった!?男ならともかく女子があんなもの食べたら三日三晩は辛さで苦しむことになるぞ!」
七咲(うっ!何なのこの辛さは!?最早辛いとか暑いとかそういう次元じゃない!)プルプル
七咲(でも…でも先輩はこの辛さにひたすら耐えた!私の何倍も辛い思いをして…)
七咲「……!!」グイッ ギュッ
純一「ぬぁぬあざぎ…いっヴぁいなにヴぉ……!?」
生徒「な、なんだとー!?」
生徒「あ、あれはまさか…伝説に語られる技…鳥の雛戦法!?」
森島「使用者が対象者に対しその名が示すとおり口移しで食べさせる…まさかこんな所で見られるなんて…!」
七咲(そう、この鳥の雛戦法を使えば私の口の中で幾分辛さはマイルドになる。これで…!)
純一(こ、これは鳥の雛戦法!確かにこれを使えば僕はこの坦々麺を食べきる事が出来る!しかし…しかしこの技は…!)
森島「この技は使用者に多大な負担を強いられるわ…、辛さを中和している間は飲み込むことも口を開けることもできず、まさに自己犠牲の上に成り立つのよ!」
純一(そうか…七咲、君の気持ちは受け取った!」
チュル・・・チュル・・・
七咲「…!!」
チュル・・・チュル・・・
生徒「おお…なんと美しい光景だ…」
生徒「俺は今、モーレツに感動しているっ!」
森島「この技はお互いの信頼関係がよほど高くないと成り立たない…二人とも、今とっても輝いているわ」ホロリ
食おば「何と言う事じゃ…わしが生きてるうちにこんな光景を見れるとは…!」
七咲(これが…)
純一(最後の…)
七咲・純一(一本!)
純一「み…みず!」
七咲「は、はい!」サッ
純一「ゴクッゴクッゴクップハァ~」
純一「…ご馳走様でした!」
一同「「「うおおおお~~!!!」」」
塚原(えっ?えっ?)
純一「七咲…僕は…僕はやったよ…」
七咲「はい!先輩やりました…完食ですよ!」
純一「だから…言っただろう…男に二言は…ない」
フラッ バタン
七咲「先輩…?先輩…!橘先輩!しっかりしてください!」ユサユサ
塚原「大丈夫よ、恐らく気絶してるだけだから…はるか!」
森島「えっ?な、なに?」
塚原「ボケっとしてないで一橘君を一緒に保健室に運ぶのよ!」
七咲「つ、塚原先輩!私も行きます!」
塚原「いえ、七咲は……ううん、わかったわ。とりあえず私とはるかで保健室運ぶから、一緒について来て!」
七咲「は、はい!」
塚原「行くよ…」
森島「せーっの!」
タッタッタ
~保健室~
塚原「…ふう、保険の先生がいないからアレなんだけど、とりあえず応急処置的な物はできたわ」
森島「わーお、さっすがひびきちゃん!国立医大に推薦合格しただけの事はあるわね!」
塚原「別にそれは関係ないわよ…っと、七咲?」
七咲「は、はい!」
塚原「私達はもう戻らないと行けないから、申し訳ないんだけど後は任せたわ」
七咲「あ、わかりました。塚原先輩に森島先輩、本当にありがとうございます」ペコリ
森島「ノンノン!私達は何にもしてないわ。一番の功労者は逢ちゃんよ!」
七咲「え、えぇ!?わ、私ですか?」
塚原「そうね…、さっきの出来事はちょっと私の理解の範囲を超えてたから何が起こってたのか理解できなかったんだけど…」
塚原「とにかく、七咲が橘君のために頑張ったっていうのは伝わったわ」ニッコリ
七咲「ああ、いえ…そんな…」
塚原「じゃあね七咲、橘君をしっかり見てあげててね」
森島「ばーい!」
ガラララ ピシャン
純一「……」スゥ スゥ
七咲(よかった…先輩が何ともなくて。倒れたのも塚原先輩曰く、じきに目を覚ますだろうから安心してって話だし)
七咲(さっきの先輩…かっこよかったなあ…。こんなになるまで自分を貫き通すなんて、普通は出来ない…)
七咲(でも二人とも私が頑張ったって言うけど、正直私が何をしてたかイマイチ覚え出せないなあ…無我夢中だったし)
七咲(えっと、確か先輩が坦々麺食べてて、私がドンブリ受け取って、坦々麺を口に含んで、先輩に口移しして…)
七咲(口移し…口移し…)
七咲「………!?」
七咲(ちょ、ちょっと待って!?私あのとき確かに先輩に口移ししたよね!?)
七咲(そ、それって…それって…つまり…それは…)
七咲「ディープキス…」
七咲「………」ボフンッ
七咲「~~~~!!!」バフッバフッバフッ
七咲(先輩とディープキスディープキスディープキス…)
七咲「………」ピタッ
ニュッ
七咲(あ、先輩の唇…まだ腫れてる)
七咲(何だか苦しそう…夢でもうなされてるのかな)
ニュニュッ
七咲(…舐めたら、舐めてあげたら腫れも早く引くんじゃ)
ニュニュニュニュッ ポンッ
七咲(うん、そうだ。擦り傷も舐めたら早く治るって言うし、きっと腫れも収まるようん)
ゴソゴソッ ギシッ
七咲「ベ、ベッド失礼しまーす」
七咲(うわあ、先輩の寝顔間近で見ちゃった…っていやいや、これはあくまで治療なのようん)
七咲(で、では…)
七咲「…んっ」ペロッ
純一「…!」ピクンッ
七咲「!!」バッ
純一「ん…んん…」スゥ スゥ
七咲「………」ドキドキ
七咲「……」ペロッ
七咲「……」ペロッペロッ
七咲「…んむ、ふぅ」ペロペロ
七咲(よく考えて見れば、口の中も腫れてるわけだよね)
七咲(そう、これは治療、あくまで治療だから…ディープキスとかじゃないから…)
七咲「んむ…ちゅむっ」
七咲(あ…ここで舌入れちゃったら…完全にディープキスになっちゃう…)
七咲(…いや、これはあくまで猫の本能だから。うん、甘えたくなるのも…うん)
七咲「はむっ…んん!」チュルッ
七咲「はぁ…はぁ…んむぅ!」チュルルッ
ギュッ
七咲(ああ、先輩先輩先輩先輩!)
ギュウッ
七咲(…ってあれ!?先輩から抱き返されてって…まさか起きて…!?)
純一「んん…七咲ぃ…七咲の匂い…」グゥ…
七咲(って、寝ぼけてるだけか…、先輩らしいですね)クスッ
七咲(……先輩、暖かい)ギュウー
七咲「はあ…先輩…大好きです…」
七咲「先輩の…匂いも…味も…性格も…行動も…」
七咲「全部…全部…」
七咲「………」スゥ スゥ
・
・
・
・
・
美也「あばばあばばば……」
美也「みゃーは…みゃーはとんでもないものを見てしまった…」
美也「にぃにと逢ちゃんが…抱き合って…逢ちゃんがネコで…二人とも抱き合って保健室のベッド…」
純一「んん~…うん?だれだぁ?そこにいるのは…」ゴソゴソッ
美也「ひゃあ!?」ビクンッ
美也「ち、違うよ!みゃーじゃないよ!みゃーは何も見てないよーー!」
ガラッ ダダダダダ
純一「な、なんだぁ…?てっきり美也がいたと思ったんだけど…」
純一「というかなんか身体重いぞ?まだ疲れが残って……」グニッ
純一「…グニッ?」
七咲「スゥ…スゥ…」
純一「七咲が…僕の上に…?というか抱きついてる?」
純一(僕はまだ夢を見てるんじゃないだろうか)
純一「……」ユサユサ
七咲「んん…ふぁ…」
純一「…おーい、起きろー」ユサユサ
七咲「んあ…?あ、先輩だ…。おはようございます…」
純一「うん、おはよう七咲」
七咲「えっと…今何時ですか?」
純一「えーっと、もう放課後だね」
七咲「はぁ、なるほど放課後…」
純一・七咲「…………」
七咲「先輩」
純一「ん?」
七咲「とりあえずもう少し抱きついてていいですか?」
純一「うん、僕は構わないけど…七咲の方はいいの?まだ猫化してる最中だけど」
七咲「あっ、そういえばそうですね」
純一「うん」
七咲「…まあ、大丈夫でしょう」
ギュウッ
純一「そうか、七咲が大丈夫って言うなら大丈夫か、うん」
ギュウゥー
七咲「…もっと強くお願いします」
純一「…よしきた」
ギュウウゥー!!
七咲「お、おお…はふぅ」コテン
七咲「先輩の匂い…落ち着きますねえ」
純一「七咲こそ、何でこんないい匂いするの?」
七咲「そりゃあ、先輩の事好きですから」
純一「そっか、なら仕方ないな」
七咲「そうですね、仕方ありません」
ギュウ~
七咲「…先輩」
純一「んんー」
七咲「何で先輩の匂い嗅ぐと私落ち着くんでしょうねえ」
純一「そりゃあ~…あれじゃないかな。僕も七咲の事好きだからとか…じゃない?」
七咲「ああ、なるほど…」
純一「うん」
七咲「………」
純一「………」
七咲「先輩…」
純一「ん?今度はな…むぐぅ!」
七咲「んう…うむ…!」
純一「…んぐ、んん…」
七咲「ちゅるっ…ぷはぁ…」トロン
七咲「えへ、えへへへへ…」
純一「七咲…」
七咲「先輩…大好きです。先輩」
純一「ああ、僕も…僕も七咲の事が大好きだよ」
七咲「……!」パアァ
ガバァ ギュウー
純一「あ、こら七咲!」
七咲「えへへ…つーかまーえた!これでもう逃がしませんよ~?」ギュウウ
純一「あはは…ほら七咲、おいで…」
七咲「んん…先輩…」チュルッ
梅原「やべえ、ありゃあ完全に二人だけの世界じゃねーか…」ヒソヒソ
棚町「まー放課後なっても帰ってこないから心配して見に来れば…この有様ねえ。心配して損したわ…はあ」
田中「えっ、ちょっ、なんでこの状況見て二人は落ち着いてられるの!?」ヒソヒソ
綾辻「わあ、あれは校内風紀違反とかそういうレベルじゃないわねえ。見つかったらどうい言い訳するつもりかしら?」ヒソヒソ
田中「わあっ!綾辻さん!」
綾辻「しーっ!あんた声大きいわよ。…ってまあ今の二人にはどんな声も聞こえないかしらね」
塚原「…あらあら、4人も揃って覗きなんて、趣味が良くないわよ?」
梅原「え?…ああ、森島先輩に塚原先輩じゃないっすか。先輩達ものぞ…いやいや様子見に?」
塚原「ええ、その通りよ。でもなんでこんな所でコソコソしてるの?中に入ればいいのに」
梅原「いやまあそれが…」
森島「わ、わおわおわーお!ひびきちゃんこっち来てこっち!」
塚原「もうっ、はるかまで何覗き見るみたいな真似…して…る…」
塚原「…………」
棚町「あっ」
梅原「あっちゃあ~、塚原先輩固まっちまった」
森島「うーん、まだひびきには刺激強すぎたのかな」
綾辻「そういう問題じゃない気がすると思うんですが…」
森島「うーん、しかしあの2人アッツアツねえ…逢ちゃんなんか丸で発情期の子猫ちゃんみたいよ?」
塚原「みたい、というか…実際に耳と尻尾があるんだけどね」
森島「へっ?あ、ほんとだわ!いや~んかーわいい!」
塚原(七咲…いつも部活では冷静でクールなのに…あんなに積極的に…)
塚原(……はっ、何で私少し興奮してるのかしら!?)
棚町「しっかしあの2人、こんだけ入り口が騒がしいのにまるで気にも留めてないわね」
梅原「だから言っただろう?完璧に2人だけの世界なんだって」
綾辻「ふーん、何か興味深いわね」
田中「ってだから皆さん!何でそんなに落ち着き払ってるんですか!?あの光景みてな、なんとも思わないんですか!?」
梅原「そりゃあ…田中さんあれだ」
棚町「そうよ恵子、あれよあれ」
綾辻「そうね、確かにあれね」
森島「そうそう!あれあれ!」
塚原「うん、これは確かにあれだわ」
一同「現実見てないから(よ)!」
田中「え…えぇー…」
七咲「せーんぱい!大好きですよ。世界で一番!」チュッ
~完~
終わりです。途中から方向性見失ってました
あと絢辻さんの漢字間違えてました。絢辻さんスキーの皆さんごめんなさい
乙です
………………後日談も見てみたいな(チラッ
七先「結局、私達が入り口で覗いてる皆に気付いたのは随分と後になってからのことだった」
七咲「あの出来事で皆に私達の秘密と関係がバレてしまい、噂は校内中にあっという間に広まっていった」
七咲「先輩は食堂の英雄として、私は猫になる不思議な人として…そしてその2人が恋人同士という事もあり随分話題になってしまった」
七咲「事あるごとに猫化を皆からせがまれ、終いには先生達の前でも見せなければならないというとても恥ずかしい思いもした」
七先「最初の内は皆から好奇心と若干の恐怖心を持って見られてたが、数ヶ月も立てば慣れたのか普通の日常へと戻って行った」
七先「私も先輩も、今は数ヶ月前と変わらない平穏な日常を送っている。ただすこし違うと言えば――――」
~~~~~~~~~
梅原「おーい棚町!」
棚町「ん?ああ、梅原じゃない。どったの?」
梅原「いや、橘の野郎見なかったか?あいつ今日提出のプリント出し忘れててさ、絢辻さんが怒ってんだよ…ひえーおっかねえ」
棚町「そうねえ…ここに居ないってなれば、どうせいつものあそこに居るでしょ。2人揃って」
梅原「ああ、なるほどそういえばそうだな!…いっちょからかいにでも行ってみるか?」
棚町「まあ、いいんじゃない?じゃあ私もおもしろそうだしついていこうっと!…恵子ー!」
田中「え?な、なに?」
棚町「あんたねえ、いつまでボサっと食ってんのよ。早くあいつらのとこ行くわよ!」
田中「そ、そんな急な…待ってよ薫ー!」
~校舎裏~
梅原「あ、いたいた!おーい大将!」
純一「…ん?ああ、梅原に棚町、田中さんじゃないか。3人揃ってどうしたんだ?」
梅原「どうしたもこうしたもねえだろ大将…、お前今日提出のプリント、どうした?」
純一「ん?ええっと…今日提出のプリント?…プリント……ああっ!」
棚町「やっぱりね…。絢辻さんカンカンらしいわよ?」
純一「あわわわ…どうしよどうしよ…」
「……ふぁー…先輩…?どうかしたんですか?」ゴソッ
梅原「あ、おっと…すまん、起こしちまったようだな七咲」
七咲「あれ…?梅原先輩に棚町先輩に……どうかしたんですか?」
田中「私は!?」
棚町「ああーいやね、こいつが今日提出のプリントまだ出してないから催促に来たのよ」
七咲「先輩……」ジトォー
純一「あは…あはは…」
梅原「まあ、俺達も夫婦水入らずのとこ邪魔する気はねーからよ、絢辻さんの方には放課後出しに行くって伝えとくぜ!」
純一「おおっ、梅原ありがとう!やはり持つべきものは友達だな!」
梅原「いいってことよ!…まあ後でジュースの1本くらい奢ってくれてもいいんだぜ?」
純一「あーわかったわかった…、また明日にでも奢ってやるよ」
梅原「よっし!じゃあ2人とも戻ろうぜ」
棚町「はいはいっ、遅れないようにすんのよ~」
田中「そ、それじゃあ!」
スタスタスタスタ
純一「…何だったんだ?今の」
七咲「さあ…」
純一「あ、起こしてゴメンな。折角昼寝の時間ってのに」
七咲「そーですよ。折角先輩の膝で気持ちよく寝てたというのにですね…」プクゥ
純一「ははは…許してやってくれ。梅原達も悪気があって来たわけじゃないんだから」サワサワ
七咲「んっ…ここで背中撫でるのは反則ですよ先輩…」
純一「じゃあ、ここかな?」カリカリッ
七咲「んみゃっ!み、耳の中カリカリするのも駄目です…!」ピクンッ
純一「ん~?じゃあ何処なら許してくれるんだい?」
七咲「………先輩のイジワル、分かってる癖に」
純一「僕は逢の口から直接聞きたいんだけどな!」
七咲「むぅ……」
純一「ふっふっふ…ってうわぁ!」
ガバァッ
七咲「まったくうるさい口ですね…。そんな口は…こうです!」
ギュゥッ チュゥー
森島「もう、ひびきちゃんったらドジねえ!部室に忘れ物だなんて!」
塚原「あーあ、はるかにドジなんて言われる日が来るなんて…私も落ちたものね」
森島「ちょ、ちょっとぉ!それどういう意味ー?」
塚原「あら、口が滑っちゃったわね。そんなことより急がないと昼休みが終わっちゃうわ」
タッタッタ
森島「あ、ひびきぃー!まちなさーい!」
タッタッタ
~~~~~
森島「はぁ…はぁ…やっと追いついたわ……ほんっとひびき足速いわね!…ってひびき?物陰から何見てるの?」
塚原「しぃー!もうちょっと声のトーン落としなさい。…ほら、あれ」ヒソヒソ
森島「んー?どれどれ…」
ソォー
七咲「んっ!純一!純一ぃ!」チュルッ チュパッ
純一「逢…逢…!」チュパッ チュルル
森島「…わ、わーお…ファンタスティック…」ヒソヒソ
塚原「あの二人…ここが公共の場所って分かってやってるのかしら…」ハァ
七咲「純一…そろそろ…ここも…」
ピトッ
純一「あ、逢…、でもここは…」
七咲「そんなの…いいんです…私は純一と…」サワサワ
純一「うっく!逢、そ、そこは…!」
七咲「そ・こ・は…何ですか?うふふ…」グニグニ
純一「くはぁっ!逢!こ、これ以上は…!」
塚原「………」ポーッ
森島「ちょ、ちょっと…これ以上は流石にマズいんじゃない…?先生に見つかったりでもしたら…」ヒソヒソ
森島「…ねえひびき?聞いてる?」
塚原「へっ?……え、ええそうね!勿論聞いてるわよ、うん」
森島「??…ひびきちゃんの変なの」
塚原「そ、そうね…行かなきゃね、うん」
パンッ
塚原「…よし!」
森島(あ、真面目なひびきちゃんの顔に)
塚原「2人とも!こんな所で何やってるの…もう」
純一「…う、うわあ!つっ塚原先輩に森島先輩!どうしてここに…」
塚原「はあ…それはこっちのセリフよ。あなたたちこそ、こんな場所で何やってるの?」
純一「何って…愛を確かめ合ってました」
七咲「純一…」テレッ
塚原「ストップストップ!もう、すぐに2人の世界に入ろうとするんだから…」
森島「ヒューヒュー!2人ともラブラブで羨ましいわあ…ほんと…」
七咲「そりゃあそうです!だって私は純一の事、だいだいだーいすきですから。ねっ?」ギュッ
純一「うん、そうだね。僕も逢の事がだいだいだーいすきだよ!」ギュウゥ
塚原「……駄目みたいね、これは」
森島「それにしても逢ちゃん!その猫耳と尻尾、とってもキュートね!」
七咲「うふふっ、私のは自前ですからね」
森島「そうなのよね~、あ~逢ちゃんが羨ましいわぁ~」
森島「…私も付ければ、橘君の膝の上に乗っけてもらえるかしら?」
純一「え?あ、それは…」
七咲「だっだだだ駄目ですよ森島先輩!この膝は私だけの膝なんですから!」ポンポン
森島「オゥ、それは残念ねぇ~…、私も一度体験してみたいわあ」
塚原「もう…はるか何してるの?戻るわよ」
森島「あれ?ひびき、忘れ物は?」
塚原「貴方達が喋ってる間に取ってきたわよ」
森島「オッケー、それなら戻りましょうか!それじゃあね!」ブンブン
塚原「貴方達も早く戻らないと昼休み終わっちゃうわよ?それじゃ」
タッタッタ
純一「うん、名残惜しいけどそろそろ僕達も戻ろうか」
七咲「あ、後一分だけ…」
純一「こらこら、わがままいわない。それにまた放課後になれば会えるだろ?」
七咲「はい…絶対ですよ?」
純一「ははは、当たり前じゃないか!」
七咲「じゃあ…」
純一「…分かってるよ」
クイッ チュッ
七咲「ん…んん」
純一「ん…ふう」プハァ
七咲「…ふふっ」
純一「ん、どうした?逢」
七咲「いえ、本当に良かったな、と思いまして」
純一「何が…だい?」
七咲「そんなの決まってるじゃないですか。もちろん……」
クルッ
七咲「―――猫耳と尻尾ですよ♪」
~完~
これで本当の終わりです。
2人のバカップルっぽさが伝わればいいかな~と思ってます。
乙です
後日談書いてくださりありがとう!!