女騎士「くっ…ころ　オーク「お前、野球できるか？」

女騎士「？？？？」

オーク「野球できるか？？」

女騎士「まあ、小学校の頃まる六年やってたが」

オーク「ポジションは？」

女騎士「ライトと、たまにファースト」

オーク「ほほう…ショートは？」

女騎士「できん　左投げだから」

オーク「左投げでライトはやれるもんなのか」

女騎士「まあ、問題ない…たぶん　むしろバックホーム等、遠投が安定すると思っている」

オーク「肩には自信アリか？」

女騎士「見てみるか？遠投を」

オーク「どうやら自信あるようだな」

女騎士「いや、最近スライムくらいしか投げてないからわからんのだ」

オーク「ここにボールがある」

女騎士「CHUNCHI DRAGONS…？知らない言葉だな」

オーク「そこに触れるな」

女騎士「ぶん投げていいのか？」

オーク「かまわん、思いっきりいけ」

女騎士「よし…」スッ

オーク「…」

女騎士「……」ｼﾀﾀﾀﾀﾀﾀ…

オーク「…………」

女騎士「……」ﾀﾀﾀﾀﾀﾀﾀ

オーク「…助走長くない？」

女騎士「すまん、久しぶり過ぎて投げるタイミングがわからん」

オーク「あるあるwwwwww」

女騎士「あと思ったんだけどいきなりガチ投げしたら肩逝くよね？」

オーク「まあそうだな…ちょっとキャッチボールで肩ならすか」

女騎士「そうだな」

オーク「グローブは？」

女騎士「外野用ならある」

オーク「なんで？」

女騎士「あるかどうか聞かれたから答えたのになんでとは」

オーク「…いや、まあいいや、最初はこのくらいの距離から」ﾎﾟｲｰ

女騎士「ふむ…久しぶりの感覚だな」ﾊﾟｼｯ、ﾎﾟｲｰ

オーク「オーライー」ﾊﾟｼｯ､ﾎﾟｲｰ

女騎士「ほっ」ﾊﾟｼｯ､ﾎﾟｲｰ

オーク「…」ﾊﾟｼｯ､ﾎﾟｲｰ

女騎士「ほっ」ﾊﾟｼｯ､ﾎﾟｲｰ

オーク「思ったんだけどさ」ﾊﾟｼｯ､ﾎﾟｲｰ

女騎士「ん？」ﾊﾟｼｯ､ﾎﾟｲｰ

オーク「投げ方古臭いねwwwwww」

女騎士「くっ…」ｼｭﾊﾞｯ！！！

オーク「ワオ！！wwwwwwwwwスマンスマンwwwwwwなんか少年野球って感じで好きだわwwwwww」

女騎士「どこだ！どこが古臭いというのだ！」ｼｭﾊﾞｯ

オーク「いや、ほら、頭の上通して投げろって習っただろ？」ﾊﾟｼｯ､ﾎﾟｲｰ

女騎士「…ｳﾝ」ﾊﾟｼｯ､ﾎﾟｲｰ

オーク「意外とコーチには素直なんだな。なんか懐かしいわお前のフォーム」ﾊﾟｼｯ､ﾎﾟｲｰ

女騎士「うっせ！」ｷﾞｭｵﾝ!

オーク「そろそろ遠投見るか」

女騎士「ペガサスβ星まで投げてやる」

オーク「…えーと、せっかくだからグラウンド行くぞ」

女騎士「なにっ、出てもいいのか！？」

オーク「牢獄で遠投しようとしてたのかお前」

女騎士「…いくぞ！」

オーク「ここがグラウンドや」

女騎士「おおー…なんか見た事もない色だな…」

オーク「おい」

女騎士「ん？」

オーク「今、お前一礼せずにグラウンド入ったな？」

女騎士「…」

オーク「コンダラー30周。」

女騎士「ちくしょおおおおおおおお！！！！」ｷｭﾗｷｭﾗｷｭﾗｷｭﾗ…

女騎士「ｾﾞｪ…ｾﾞｪ…」グワシャア

オーク「もはや全裸やんけ」

女騎士「こんなもん着てられるかボケ」

オーク「そらそうだわな」ｸﾝｸﾝ

女騎士「バカッ！やめとけ！！！」

オーク「くっさ！！！！鎧くっさ！！！！！」

女騎士「いわんこっちゃない、死ぬぞお前」

オーク「そういや昔、剣道部の女子の防具かいだら死にかけたわ」

女騎士「なんでもかんでもかぐな！」

オーク「さて、そろそろ遠投見せてもらおうかな」

女騎士「コンダラがけの疲れが…」

オーク「無理ならいい、お前はその程度」

女騎士「くっ、ホエヅラかかせてやる！」

オーク「ほぼ全裸で投擲とか古代ギリシャのアレみてぇだな」

女騎士「おりゃぁぁぁぁぁぁああああ！！！！！」ﾋﾞｼｭｳ!!

オーク「おおおおお！！！ネットの向こういったぞ！！！」

女騎士「ふっ…」ﾊﾞﾀｯ

オーク「燃え尽きたか…」

女騎士「燃えたぁ…燃えたぜ…真っ白に燃え尽きた」

オーク「立つんだジョー（適当）」

女騎士「愛がない」

オーク「なんかお前メンドイな…次はほら」

女騎士「バットか…」

オーク「魔物の野球に金属は無いぜ」

女騎士「木製…アオダモ…？」

オーク「いや、メイプルだ」

女騎士「ふむ、ならこれの出番は無いか」ｽﾗｧｯ

オーク「腰に挿してたの剣じゃなくて合成バットだったんか」

女騎士「聖剣ビヨンドマックスだ…！」

オーク「はいはい、聖剣は置いといてとりあえず木製バット持って打席立ってね」

女騎士「…」ｽｯ

オーク「おま…右打者なの？？？」

女騎士「なんかおかしいか？」

オーク「いや、左投げ右打ちって…なんかもう全てが面倒くさいなお前」

女騎士「なんか酷い言われようだ、全国の左投げ右打ちに謝れ」

オーク「滅多に居ないだろうけどな、全国の左投げ右打ちの方スミマセンでした」

女騎士「それでいい」

オーク「ほな、トスするから、それ打って」

女騎士「そこのカメラ危ないよ」

オーク「落合かお前は　カメラねーよ」

女騎士「カン！！」

オーク「？？？？」

女騎士「カン！！！！！」

オーク「なに急に」

女騎士「いや、トスの合図だよ」

オーク「…お前ンとこのローカルルールを急に持ち込むな」

女騎士「カン！！！！！」

オーク「はいはい、ほら」ﾎﾟｲｯ

女騎士「トン…」ｽｯ

女騎士「メエエエエエエエエエエン！！！！」ブォン！！！

女騎士「ふっ、大イヌ座アルファ星まで飛んだか」

オーク「…どこ見てんだよ、ボール足もとだよ」

女騎士「飛び過ぎて地球を一周しただけだッ…」

オーク「…なんて？」

女騎士「もういいなんでもない」

オーク「掛け声もういいの？」

女騎士「いいです」

オーク「メンタルよえーな」ﾎﾟｲｯ

女騎士「ほっ！」ブン！

オーク「ットライーーーク！…トスこんな空振りする人久々にみたわ」

女騎士「…もっかい」

オーク「」ﾎﾟｲｯ

女騎士「…」ブン！

オーク「」ﾎﾟｲｯ

女騎士「」ブン！

オーク「」ﾎﾟｲｯ

女騎士「」ブン！

オーク「ほらほら、どんどんヘッド下がってるぞ」ﾎﾟｲｯ

女騎士「くおっ！」ブン！

オーク「大根切りかよお前、飛ばす気あるんか！」ﾎﾟｲｯ

女騎士「ふおおおっ」ブン！

オーク「ボール見てないだろお前！タイミングばっかり気にしすぎ！」ﾎﾟｲｯ

女騎士「ふぉあい！！」ブン！

オーク「はぁ…」

女騎士「ｾﾞｪ…ｾﾞｪ…」

オーク「壊滅的にバッティングセンスないな…」

女騎士「くっ…殺せ」

オーク「とりあえず裸じゃアレだし、ユニフォーム着るか？」

女騎士「くっ…よこせ」

オーク「便利だなそれ…ほらよ」

女騎士「…なんて書いてあるんだ…？」

オーク「俺たちの言葉で、『地獄軍』と書いてある」

女騎士「…334」ﾎﾞｿｯ

オーク「なんでや！」

コボルト「…何してんだお前ら」

オーク「おお、丁度いい」

コボルト「人間の、そのまたよりによって♀にユニフォームなんか着せて…新しいプレイか？」

オーク「いや、ほらウチのチームで欠員でただろ？」

コボルト「ああ、スライムがアキレス腱切ったからな」

女騎士（スライムにアキレス腱あったのか）

オーク「次の試合に間に合わせるには何でも使えるもんは使わなきゃ」

コボルト「そら使えるならいいけどよ、ひっでぇスイングだったぜ？」

オーク「肩は天下一品なんだよ」

コボルト「へぇ…やってみろよ」

女騎士「仕方ないな…」ｽｯ

女騎士「んぁぁあぁあらぁぁぁあ！！！！」ﾋﾞｭｰﾝ

コボルト「…その色気もへったくれもない掛け声なんとかならんのか」

オーク「…まあ、掛け声はともかく飛距離は本物よ」

コボルト「なるほど、これが外野にいたら良い抑止力だわ」

オーク「どうだ、人数合わせと考えれば充分だろう」

コボルト「ふむ、良い拾いモンだな」

オーク「よし決まった、お前は明日の試合で使う、いいな？」

女騎士「ｳｽ」

翌日

審判「整列！それでは、地獄軍vs山賊軍の試合を始める、一同礼！」

オネシャース！ｼｬｰｽ！ｳｨｰｽ！

女騎士「あれ、私の守備番号が間違っているようだが」

オーク「？ちゃんと8になっているだろ」

女騎士「いや、センターやったこと無いんだけど」

オーク「仕方ないだろ、空きがそこだったんだから」

女騎士「スライムってセンターだったのかよ…」

オーク「肩は弱いが守備範囲で勝負できる良いセンターだったぞ」

女騎士「肩…？」

女騎士「あとユニフォームきついんだが」

オーク「スライムのやつだから仕方ないだろ、文句ばっかり言うな」

女騎士「…もうつっこまんとこ…」

審判「ｯﾚｲﾎﾞｰｰｰｳ！！！」

女騎士「ッチコーイ！！」ﾊﾞﾝﾊﾞﾝ！

アナウンス「1番、セカンド、ゴブ岡」

女騎士「シフトは前進っと…」スタタタタ

オーク「センター抜いてくるぞー！しまってけー！」

女騎士「オラーイッ」ﾊﾞﾝﾊﾞﾝ

ゴブ岡「おや、相手のチーム…センターのスライムは欠場か…よし、センター狙い目だな」

ゴブ岡「ピッチャー射抜いてセンター前！！」ﾌﾞｵﾝ!

ッキーン！！

オーク「いったぞセンター！センター！！」

女騎士「ッラーーーイ！！」ﾊﾟｼｯ

女騎士「すぅ…」

オーク「！？」

女騎士「ファァァァアストおおおおおおおお！！！！」

オーク「えっ！？えっ、えっ！？！？！」

女騎士「っだぁぁぁありゃぁぁぁあ！！！！！」ﾋﾞｭﾝ！！！！

ゴブ岡「ファッ！？やべ、なんだあの送球！！！」ﾀﾀﾀﾀﾀﾀﾀ

ｽﾞｻﾞｰｰｰ!セーフ！

ゴブ岡「…ウッソだろアイツ、センターから刺そうとしてきたぞ…！？」

ｻﾞﾜｻﾞﾜ…ｻﾞﾜｻﾞﾜ…

オーク「と、とんでもねぇ送球だ…速い、強い、正確…」

コボルト「す、すげぇ…！センターゴロ見るかと思ったぜ」

ゴブ岡「あぶねー…マジあぶねー…」

ゴブ岡「センター肩あるぞ気をつけろー！」

アナウンス「2番、ショート、コロポ田」

コロポ田「…確かにあの肩はヤベェ…ココは内野に転がして手堅く進塁打だな…」

オーク「…タイム」

審判「ターーーイム」

オーク「ハドル！集合！！」

コロポ田「？？？？なんだなんだ？？？」

オーク「おい女騎士、お前いったんショート入れ」

女騎士「！？左投げなんですけど！？」

オーク「ゴロの処理も見る限り大丈夫そうだ、それだけの肩がありゃどっちで投げても刺せる」

女騎士「えぇ…内野と外野じゃゴロの速さも違うと思うんだが」

オーク「いいか、出来るか出来ないかはこの際大した問題じゃない」

女騎士「なにいってだ」

オーク「相手はお前の肩にビビった、その事実があればそれでいいんだ」

女騎士「プレッシャーをかけるという事か…」

オーク「そう、今内野で圧をかければ相手は無理やり打ち上げてくる、確実に」

女騎士「でもホントに転がしてきたら？内野の処理なんてできるかわからんぞ私は」

オーク「ファーストはやってたんだろ？内野手っぽい動きだけしてりゃいい」

オーク「断言する、お前が内野にいればアイツらは転がせねぇ…！」

女騎士「ッシャッチコーーーイ！！（ヤケクソ）」

コロポ田「ぁあ！？あのバケモノ肩がショートに！？」

女騎士（内野手っぽい動き内野手っぽい動き…）

コロポ田「ってか左投げじゃねぇかアイツ…いや…でもあんな肩だ、どっちで投げてももはや関係ない…！」

オーク（もっと腰落とせ、内野の名手みてぇなフリをしろ！）

女騎士（お、おう）

コロポ田「くっ…これはショート転がしたら最悪だ…あの肩だ、ゲッツー崩れなんか起きない…間違いなくゲッツー…」

コロポ田「そしてあの目、間違いなくチャージしてくる…内野はダメだ！外野まで飛ばさなきゃ…！」ﾌﾞｵﾝ!

ﾎﾟｺｰﾝ

オーク「オラーイッ！！」ﾊﾟｼｯ

コロポ田「くっそおおおおお」

女騎士「わんなうと～」

オーク「タイム」

女騎士「っせーなもう、何だよ今度は」

オーク「次の次は右打者なんだよ」

女騎士「だからなんだよ…」

オーク「お前が居れば右打者は8割殺せる、だからこの打者はバントさせる　だからお前はセンターに戻れ」

女騎士「早々都合よく行くかね…」

アナウンス「3番、ライト、グー留」

グー留「何だ？またアイツセンターに戻ったのか…」

グー留「…そうか、俺にバントさせて次で仕留めるつもりか…」

グー留「くっそ、都合よくベンチも初球バントサインかよ…相手の思うツボだぞこんなもん…」

グー留「…仕方ない、後でどんじかられるかもしれんが…」

オーク（しめしめ、バントの構え…）

グー留「バスターーー！！！と見せかけて…」

オーク「なにぃ！？」

グー留「豪快な空振りィ！！」

ゴブ岡「げっ、何であいつ空振りしてんだよ！！」ダダダダダダ

オーク「まずい、セカンド！セカンド！！」

ゴブ岡「お、なんか間に合いそう」ズザーーーッ

オーク「ま、まずい…一死2塁か…」

オーク「ターーーイム！！」

女騎士「いわんこっちゃない、盗塁しらないの？」ﾌﾟﾌﾟﾌﾟ

オーク「」ｺﾞｽｯ

女騎士「いってぇ！！！」

オーク「とにかく、当初の計画は崩れた…一死2塁、ここはどうするか」

コボルト「どうするって、とりあえず頑張って抑えるしかねーだろ」

オーク「うーーーむ…」

コボルト「お前どうしたんだよ、なんで急に頭つかおうとするんだ」

オーク「…だってよ」

コボルト「？」

オーク「面白いだろ、こんなバケモノ肩が居たら」

コボルト「…」

オーク「こんな規格外の肩があって、何ができるか。それを何でも試したいんだよ」

コボルト「ふっ、なるほどな　そういうロマン頭、きらいじゃねぇぜ」

コボルト「そういう事ならオレにも考えがある、ちょっと耳かせよ」

オーク「お？おう」

ﾋｿﾋｿ…

アナウンス「ピッチャー、オークがセンターに入りまして、センター女騎士が、ピッチャーに入ります」

女騎士「……………」

オーク「……………」

コボルト「よう女騎士さん、女房役はこのオレさ、バッチリ頑張れよな」

女騎士「あの…サインも何も分からないんだが」

コボルト「どうって事ねぇよ、このミットに向かって思いっきり投げろ、それだけだ」

グー留「………おいおい、アイツ投手もやれるのか…！」

グー留「やべぇ、左からあんなタマ投げられたら打てっこねぇ」

グー留「どうするッ…！考えろ！」

グー留「えぇい、とりあえず1球みてやる…」

女騎士（投手なんてやった事ないぞ…どうやってやれば…）ｽｯ

グー留「あ」

グー留「審判、ボークだ！ボーク！！」

コボルト「あのバカ、プレートの使い方も知らんのか」

オーク（そりゃそうだろ…）

オーク「タイム！タイム！！」

オーク「おいおい、こりゃ作戦ミスだろ…そりゃ投手やった事無いやつがいきなりマウンドの動きやれるわけねぇ」

コボルト「なぁに、今教える」

オーク「はぁ？」

コボルト「とりあえずプレートの使い方だが…とにかく投げる時は踏め！以上だ！」

女騎士「お、おう」

女騎士「まあそれはなんとなく分かったが、投手のやり方がわからん」

コボルト「お前、好きなピッチャーはいるか？」

女騎士「え？プロでって事？」

コボルト「そうだ、人間にもプロ野球あるだろ？」

女騎士「まあ、居るが…」

コボルト「ソイツの真似しろ！」

女騎士「…………わかった」

ボークにより2塁走者ゴブ岡に安全進塁権が与えられ、
ワンナウト3塁

コボルト「よし、こい！」バシッ

グー留「フフフ…コイツの正体わかったぜ…肩が良いだけのド素人…！」

グー留「それだけわかりゃもう怖くねぇ…こいド素人…ん？」

女騎士「」ﾍﾟﾛｯﾍﾟﾛｯ

グー留（指にツバ…？）

女騎士「…」ｽｯ

グー留「…え？ワインドアップ？？？？」

コボルト「えぇ…」

オーク「…」

コボルト（まあ、ランナー3塁だしいいか…）

女騎士「…」シャキーン

オーク「！！！！！」

コボルト「なんだありゃ…セクシーポーズか？」

女騎士「…」お尻ﾌﾟﾘｰ

グー留「…ふざけてんのか？？」

オーク「いや、違う」

女騎士「」スゥーーーッ

オーク「あのフォーム、見た事がある」

女騎士「」ザザッ

オーク「人間界のプロ野球で、200勝を成し遂げ」

女騎士「」ｸﾞｵｵｵｯ

オーク「史上最年長のノーヒットノーランを達成した男」

女騎士「」ズシャアッ！！

オーク「竜の！！！」

女騎士「生けるレジェンドぉおお！！！」

オーク「山本！！！」

女騎士「昌だぁぁぁぁあ！！！！」ギュオオオオオン！！！！

グー留「は、はええええええ！！！！！」

バスーーーン！！！

審判「ｯｱｧｧｧｱァアアアァｲ!!!」

グー留「は、半端じゃねぇ…！なんだこの球…！」

コボルト「ひぇえ…」ﾋﾞﾘﾋﾞﾘﾋﾞﾘﾋﾞﾘ

女騎士「幼い頃、テレビの向こうの昌さんが教えてくれた…！」

グー留「？？」ぶるぶるぶるぶる

女騎士「…クワガタは、儲かるって！！」ﾋﾞｼｭｳｳｳｳｳ

グー留「な、何言って…うわぁぁあ！！」

審判「ｯｧｧｧｧｧｱｱｱｱｲ！！！！ッアーイクツーーー」

コボルト「こいつぁすげぇ…速いだけじゃなくて正確無比…なんでこいつピッチャーやらなかったんだ」ﾋﾞﾘﾋﾞﾘﾋﾞﾘﾋﾞﾘ

グー留「ま、まずいこんなの打てねぇ…！どうすれば…！」

女騎士「…トドメだ」お尻ﾌﾟﾘｰ

グー留「くっ………」

女騎士「スクリュうううううううう！！！！」ﾋﾞｼｭｳｳｳｳｳン

グー留「はぁぁぁぁあ！！！？！？！」

コボルト「えええええ！？！？！？ってただの真っ直ぐｩｰ!」バシイイイイイイイン！！！！

審判「ッアアアアアアアァァアアイ！！！！アイッ！！！！」

コボルト「ってかなぁ審判ちょっといいか？」

コボルト「カウント間違えてんぞ！！」

審判「ｯｱｱｱｱｲｧｰ…」

アナウンス「4番、ファースト、T.トロル」

のっしのっしのっし…

T.トロル「グー留があんなに簡単に凡退するのは初めて見たナ」

T.トロル「フフフ、なるほどなるほど、確かに凄い球だ」

T.トロル「だが…俺は簡単に打ち取れねぇぜ」

コボルト（T.トロル…コイツには恐ろしい武器がある）

T.トロル「…3球すべて真っ直ぐか…」

コボルト「…」

T.トロル「次もどうせ真っすぐだろ？」

コボルト「…」

T.トロル「…1球目からインコースつこうってんだろ？」ニタァ

コボルト「…（そう、この心理をついたような、ささやき戦術…）」

オーク「普通、ささやき戦術といえば捕手がやるもんだが、コイツのささやきは打者の戦略として確立されている」

コボルト（インコースにカマかけてきやがった…どうする、お望み通りインコース…高目にキメさせるか？）

T.トロル「助かるねぇ、俺はインコース高目が大好きでね」

コボルト「！！」

コボルト（こ、こいつ心が読めんのか！？いや、落ち着け、そんなわけはない
誘導されてるだけ…！）

T.トロル「まあ、160メートル…あの魔界樹の向こうまでは飛ばせるねぇ、インハイならね」

コボルト（実際にインハイが得意なのは事実…ここは1球ハズして様子見るか…）ｽｯ

女騎士「あれ、1球はずすのか？」

コボルト「！！」

オーク「！！」

T.トロル「…え？」

コボルト（ば、バカ野郎、なんで言うんだよお前…！）

女騎士「父上は野球中継みながらいつも言っていたぞ」

女騎士「バカヤロー！！いちいち様子見のタマなんか投げるなボげぇ！！！！」

女騎士「…とな」

コボルト「………（な、何言ってるんだコイツ…）」

T.トロル（な、何だコイツ…！なにを語りだしたんだ？？？）

T.トロル（つまり様子見のタマなんか投げない、外さないって事か？）

T.トロル（いや、待てよ？そう見せかけて実は普通に1球外してくるかもしれん…）

女騎士「でも私はおもうんだ」

女騎士「3球勝負で打たれたら、それはそれで余計にカッコ悪いだろ」

T.トロル（いや、やっぱりゾーンに決めてくるか！）

T.トロル（いやいやいやいや！そんな単純な事か！？）

女騎士「結局さ、捕手に任せるのが1番よね」

コボルト（…）ｽｯ

T.トロル（ま、間違いない、今変わった、構えた場所が…ミットの場所が…！）

T.トロル（『捕手に任せる』じゃあ結局、コースを決めるのは捕手って事か）

T.トロル（それならこのコボルトの事は良く知っている…この流れ…初球からインハイに来る！）

T.トロル（もらった！！！）

女騎士「ふっ…そこか」お尻ﾌﾟﾘｰ

女騎士「了解した！！！！」ビシュウン！！！

ッバシィン！！！！！

審判「ッアアアアアアアァァアアイ！！！」

T.トロル「………！！！！」

T.トロル「ど、どまんなかぁぁあ！？」

コボルト（しかたねーだろ！！ゴチャゴチャ言い合ってるから俺も訳わかんなくなっちまったんだよ…！）

T.トロル（ダメだ、何考えてるかさっぱりわからん…！コイツらどこの次元で野球やってんだ？？？）

T.トロル（クソ、もう考えるのはヤメだ!きた球を打つ！！）ｸﾞｸﾞｯ

女騎士「2球目…」お尻ﾌﾟﾘｰ

T.トロル「こい！！」

女騎士「もりのおおおおおおおおおお！！！！！」ﾋﾞｼｭｳｳｳｳｳ！！！！

T.トロル「うおおおおおおおおお！！！！」ぶぉん！！！

バシイイイイ！！！！

審判「ッアアアアアアアァァアアイﾂｳｳｳｳｳｳｳ…！！！」

コボルト（ムリムリ、この球に反応打ちなんて…）

コボルト（アンタの得意な読み打ちで正解だったのに）

コボルト（それをわざわざ捨てちまったんだ、もう勝負はついたね）

T.トロル「くっそおおおお…」

T.トロル「…ん？」

T.トロル（なんだ、グー留の奴…なんでこんな時に…）

T.トロル（…？粘れ、のサイン？）

T.トロル（馬鹿な、ランナー3塁だぞ？）

グー留「構わん、粘れっ……！」

T.トロル（ちっ、どうせどうにもならん、ヤツに乗っておくか…）

ﾋﾞｼｭｳｳｳｳｳ！！！！

T.トロル「うおおお！」ｶｷｨ!!

コボルト「！？」

審判「ファウル！！」

T.トロル（！いける、当てる事は出来る…！飛ばそうと思わなければ！）

コボルト（ま、マズい…よく考えたらこんなガン投げしてたら…）

オーク（せいぜい、2イニングが限界…！）

T.トロル（ふん、そのバケモノ肩…何球もつか見物だな！？）

ﾋﾞｼｭｳｳｳｳｳ！！！！

T.トロル「ほっ！」ｶﾞｺｯ!

審判「ﾌｧｳﾙﾎﾞｫｵｳ！！！」

コボルト（くっ、タイミング合ってきやがった…！この打者は打者でバケモンか！）

女騎士「やれやれ、カット打法か」

女騎士「人間界にも居たよ　カット打法を極めたような奴が、な」

女騎士「だが…絶対にカット出来ないコースってのがあるんだ」

T.トロル「！？」

女騎士「それは…」お尻ﾌﾟﾘｰ

女騎士「ここだぁぁぁぁぁぁあ！！！！！」ｸﾞｫｧｧｧｧｧｱ！！！！！

T.トロル「！！！！！！んなぁぁあああああ！！！！！」

コボルト「！！！！！！！」

T.トロル「う、うァァァァァァァァ！！！！！」

オーク「ち、畜生め…」

T.トロル「ぎゃぁぁぁぁぁぁあ！！！お、折れた！折れたァァァア！！！」

審判「で、デッドボーーール！！」

グー留「タンカ！！タンカだ！！！」

ゴブ岡「い、今の見たか…？胸に見たこともない食い込み方したぞ…ボールが…！」

コロポ田「やべぇよやべぇよ…あんなの食らったら死んじまう…！」

グー留「おい審判！！！故意死球だろ！！！」

審判「…故意死球であるという確証が無いので…」

グー留「くっ…！」

審判「だが…次にまた当てるような事があれば、危険行為による退場も視野に入れる」

女騎士「えー…」

コボルト（そ、そりゃそうだろ…）

アナウンス「ランナー1塁、T.トロルに変わりまして、ランナー、バル川」

アナウンス「バッター、5番ショート、ドラ浪」

ドラ浪「ひっ…ひっ…」ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ…

コボルト（無理もねぇ、もう当てては来ないだろうと分かってはいても、あんなの見たら腰が引けちまう…）

女騎士「わざとじゃないのにー（棒）」

コボルト「…（こいつとはホント友達になりたくない）」

ドラ浪「ぁぁあん…！」スカッ

審判「ッラァァァアイ！！ｱｳｯ！！！！！」

コボルト「ふー、やっとチェンジだ！」

オーク「1回オモテで色々ありすぎたな、ホント」

アナウンス「1番、レフト、オー地」

オー地「さーて、まちに待った攻撃だが…」

オーク「相手は山賊軍の押しも押されぬエース…死具地ゾン也（しにぐちぞんや）！何度となくノーヒットノーラン未遂をした大投手だ」

ゾン也「さてと…よくもうちの4番をぶっ潰してくれたな…」

オー地「やだねぇ、俺じゃないって、それは…あの人間様に言ってくれよ」

女騎士「」ﾎｼﾞﾎｼﾞ

ゾン也「同じ事だぁ！！！」ビシッ！！

ｽﾊﾞｧﾝ!

審判「ｯﾗｰｰｰｰｧｧｧｱｲ！！！」

オー地「うえぇ…今日もスライダーキレキレだわ…」

…そんなこんなで地獄軍、三者凡退で攻撃を終え…

2回オモテ

女騎士「さて、また私が投手か…」

オーク「どうだろう、アイツらもう打ち気になれないんじゃないか？あのデッドボール見ちまったら」

女騎士「そうだな…あとは軽く投げれば凌げるかもしれん」

コボルト「いや、それは無理だ」

オーク「そういうもんかい？」

コボルト「ムリムリ、最初の数人はそれで凌げても、当面は軽く投げてくる、それにぶつけてもこないと開き直った瞬間に大炎上さ」

オーク「まあ、そりゃそうか」

女騎士「ふむ…ならば私に考えがある」

…………

コボルト「アンタ…それ本気かい？」

女騎士「大丈夫、私の読んだ野球マンガでは通用した」

オーク「…」

コボルト「現実はマンガのようにはいかないと思うがねぇ…」

アナウンス「バッター、6番サード、スケ上」

スケ上「…」ｶﾞﾀｶﾞﾀ…

スケ上（まずい、身体の震えが止まらねぇ…！落ち着け！もうぶつけてこないはずだ！）

スケ上「すーはー…すーはー…」

女騎士「ｽｯ」

審判「ん？」

コボルト「あ、敬遠で」

スケ上「…………え？」

審判「え、えーと、申告敬遠につき…バッター1塁へ…」

アナウンス「バッター、7番センター、ヴァン智」

ヴァン智（なんで敬遠…？不気味過ぎるぞ…）

ヴァン智（えーと、サインはバントか…よし…）

女騎士「…」ﾌﾙﾌﾙ

審判「…」

コボルト「あ、敬遠で」

アナウンス「バッター、8番キャッチャー、ギガ繁」

ギガ繁「ま、まさかとは思うが…」

コボルト「その、まさかで」

ギガ繁「…」

審判「…」

コボルト「敬遠で」

アナウンス「バッター、9番ピッチャー、死具地」

ゾン也「ま、満塁策だとぉ………！？ノーアウトから…！」

コボルト（満塁で打者ピッチャーだもんな、そりゃあまあ確かにイヤだよな）

ゾン也（バントスクイズのサインは無い…ここは下手にランナー死なせるより、振り回したほうが良さそうだ）

女騎士（よし、スクイズしてこない　思った通りだな）

コボルト（来るぞ…！あのバケモノ肩と）

女騎士「」ｽｯ

コボルト（正確無比のコントロールがなせる技…）

女騎士「」お尻ﾌﾟﾘｰ

コボルト（本来だれも触れられない、無の領域…………っ！！！）

女騎士「それは…！」ズサッ

女騎士「ここだっ！！！！！」ビシュッ！！！！

ゾン也「な、なにぃ！？また死球かっ！？！？」ヒュン

ゾン也（いや…違う！この軌道は…！）

かつーーーーーん………

ゾン也（か、構えたバットに………！当てやがっ…………）

コボルト「うおおおおおおおおお！！！！！！」

ゾン也「し、審判、インフィールド！！インフィールドフライだ！！！」

審判「いや…これは…ファール方向…インフィールドフライ…アフェア…」

ゾン也「なにぃ！？」

ゾン也「！！！」

ゾン也「ら、ランナーがもうホーム近くに！？なんでだ！？」

ゾン也「なんでオートスタートしてるんだよおおおおおおおおお！！！！！早く戻れええええええ！！！！
刺されるぞおおおおおおおおお！！！！！」

コボルト「刺せッッッッッッ女騎士ッッッッッッ！！！！」ﾎﾟｲｯ

女騎士「合点だ」

ズバァァァァァァァァァ！！！！！！

審判「3塁、ランナーアウト！！！」

ゾン也「フライアウトと3塁ランナーアウト………これで…ツーアウト…かッ…アッという間に……！」

ゾン也「何故だ！？なぜオートスタートした！！！」

スケ上「アイツのボール、恐ろしく速いんだぜ？音で反応して走らなきゃって思うだろ、そりゃ…空振りならともかくよぉ」

ゾン也「くっ………！」

ゾン也「こ、これはやられたな…満塁ならインフィールドもある、だから音に反応して走ればいいとなる」

ゾン也「インフィールドフライなら飛び出してもノーカンだからな…」

ゾン也「そのための満塁策だったのか…！」

女騎士「この回、私が何球投げたと思う？」

女騎士「1球で、ツーアウト取る方法だよ　覚えておきなさい」

コボルト（恐ろしい奴…こんな球数の温存を…）

女騎士「つ～あうと～」ﾌﾘﾌﾘ

オーク「ウェーーーーイ！！バッチコーイ！！」

ゴブ岡（ふふふ…残念だがドケチ投球、ここまでだぜ）

ゴブ岡（俺はなぁ、カットさせたら天下一品のカットマンなんだよッッッッッッ！！！）

ゴブ岡「こいよ、バケモノ肩さん　それとも、また敬遠するか？くくくく…」

女騎士「敬遠も死球も私にとっては同じ事だな？」

ゴブ岡「」ﾋﾞｸｩ！！！

女騎士「安心しろ、もうぶつけない。退場になるからな」

ゴブ岡（び、ビビらせやがってチクショウ！！！何が何でも粘ってやる…！）

10年前――――

コーチ「女騎士ちゃん、投げる時にねぇ、頭の上を通すようにして腕をふってごらん？」

女騎士「なんでー？みんなと同じように投げたいよ」

コーチ「いいから、やってごらん」

コーチ２「ずいぶん古臭い送球フォームになりましたねぇ…」

コーチ「仕方ないです、この子は普通に投げるとどうしても送球がシュートしてしまうんで」

コーチ２「まあ外野の送球が多少シュートするのは仕方ないのでは？」

コーチ「それがねぇ…この子のシュートはえげつないんです　あれじゃ誰もとれない」

女騎士「…古臭いフォーム…か」

女騎士「思い出したよ、私は昔、変化球…シュートしか投げられなかったんだ」

女騎士「それを矯正するために…私の送球フォームは古臭い、頭の上を通すフォームになった」

女騎士「そうだ、私はストレートだけじゃ、無いんだよ…！」ｽﾞｻﾞｧ!!

ﾋﾞｼｭｳｳｳｳｳ！！！

ゴブ岡「ヘッ！前には飛ばせなくても、カットなら…」ｽｯ

ギュルルルルルルル！！！

ゴブ岡「え？」

ゴブ岡「し、沈んだ…………！？」スカッ！！

コボルト「う、うお！！！」バシィ！！

審判「ｯｧｧｧｧｧｱｱｱｱｲ！！！！！」

コボルト（あ、あぶねー…！前もって聞いてなかったらぜったいこぼしてたぜ…！）

ゴブ岡（い、今のはなんだ！？コイツ、ストレートだけじゃねぇのかよ！！）

女騎士「フッ、驚いたか？」

女騎士「名付けて、『伏線回収ボール』だ」

コボルト「メタい…」ｹﾞｯｿﾘ

オーク「ナニィ！？俺とキャッチボールした時の頭の上を通す古臭いフォームはこの為の伏線だったのかぁ！！」

コボルト（うわぁ…オークの奴クソ漫画にありがちな説明モブみたいなっとるやんけ…）

女騎士「さて、もう一球いくぞ伏線回収ボール」ｼｭﾊﾞｧ！！！

ギュルルルルルルル…

ゴブ岡「なんて変化球だ…たぶんシュート…！」スカッ

ゴブ岡（わかってても…打てねぇ…！）

コボルト「うぁぁあ！」ｽﾞﾊﾞｧ！！

（わかっててもギリギリの捕球だぜ…）