ワイ「お、お客様！格安SIMに乗り換えないで！」お客様「うるさいですね…」

ワイ「あ、あぁ～ッ！」　ユッキュワーイモバイルーッ！（格安SIMに乗り換える音）

お客様「はい、今日のMNP番号取得は終わり。お疲れさまでした」

ワイ「うぅ……あ、ありがとうございました……」

数か月前、念願でもない携帯業界に就職したのだが、『格安SIMが浸透する中、キャリアユーザーが減っていくのでは』
という懸念の声があり、結果、定期的にワイたちのボーナスから値引き金額をヒキヒキしてくれるようになった。しかしお客様はなんだか
キャリアのことがキライみたいで、いつもいつも不愛想に乗り換えて、ワイのオチンギンはヒクイヒクイなのだった。

ワイ「トホホ……お客様多いのにオチンギンはヒクイヒクイなんだから……あーあ、どうにかしてお客様のMNPを阻止して機種変更してもらえないかな～、ん？」

深夜なのにお客様の部屋から明かりが漏れている。

お客様「よいしょ……よいしょ……」

ワイ（お、お客様が、自分の部屋ででおスマホを相手にMNP番号の取得をしている！？）

お客様「ふぅ……こんなものですかね……。もっと気持ち良く乗り換えられるように頑張らないと……」

ワイ「お客様！」　バターンッ！

お客様「ひゃあッ！？」

ワイ「お、、お客様！　ごめんよーッ！　お客様は毎日ワイのためにMNP番号取得の練習してたのにワイはそんなことも知らずに……ッ！
ハフッ！ハフッ！　お客様の来店も無く解約も何もできない匂い！」

お客様「ど、ドサクサにまぎれて匂いを嗅がないでください！」

ワイ「ご、ごめんねお客様……！」

お客様「べ、別に、店に行かないでMNP番号取得するくらい普通です……。それが一番楽なんですから……。それに、私は下手で、お店に行くと引き留められちゃいそうから」

ワイ「そ、そんなことないよ！　お客様のその気持ちだけでワイは十分店舗運営キツイんだよ！　あっ、そ、そうだ！　お客様おてて出して！

お客様「こ、こうですか？」

ワイ「そう！　それじゃあ今から別のお客様に高額商品売りつけるからね！　別のお客様のゆるゆるおさいふにドッピュするからね！　ちゃんと受け止めてね！」

お客様「えっ、えっ？」

ワイ「ウオーッ！　お客様！　ゆるゆるおさいふに出すぞ！」チャリチャリチャリーッ！

別のお客様「ひゃあッ！」ビシャーッ

ワイ「くっ、ふぅ……！　す、すっごい高いのが出たぁーッ！」

お客様「ほんとうです……で、でもなんで……？」

ワイ「それはね……お客様の気持ちが、ワイに伝わったからだよ！　お客様のキャリアに対する興味のなさがね！」

お客様「私の興味のなさ……」

ワイ「そう！　だから、いなくなるお客様なんて、二の次なんだよ！　おスマホかいあげは、買い物上手い人にやってもらうより、何も考えてない人にやってもらうのが一番気持ちいいんだよ！」

お客様「か、買い物上手って……はわわ……あ、あの……もうちょっとだけ、付き合ってもらってもいいですか？」

ワイ「絶対嫌だよ！」
その後、ワイは一晩中別のお客様のおさいふやクレジットカードに高額商品を売りを続けて次の日の朝は起き上がれないほど疲弊していた。
でもまぁ、その日以来、MNP転出をしたお客様が「キャリアは高い」とつぶやいてくれるようになったので結果オーライ！　終わり