ワイ「あ、あぁ~ッ!(落涙)」 ドピュドピュドピューッ!
チノ「はい、今日の腹話術は終わり。お疲れさまでした」
ワイ「うぅ……あ、ありがとうございました……」
数週間前、念願のラビットハウスに就職したのだが、『女性ばかりの店で男を野放しにするとおじいさんを亡くしたチノちゃんの心が壊れるのでは』
という懸念の声があり、結果、チノちゃんが定期的にウサギのティッピーを使って腹話術を披露してくれるようになった。
しかしチノちゃんはなんだかおじいさんのことが大好きみたいで、いつもいつも不愛想にティッピーを頭に乗せて、しわがれ声ペラペラなのだった。
ワイ「トホホ……チノちゃん可愛いのにしわがれ声ペラペラはイタイイタイなんだから……あーあ、どうにかしてチノちゃんの精神状態をやさしくて気持ちいものにしてもらえないかな~、ん?」
深夜なのにチノちゃんの部屋から明かりが漏れている。
チノ「よいしょ……よいしょ……」
ワイ(ち、チノちゃんが、自分の部屋でティッピーで腹話術の練習をしている!?)
チノ「ふぅ……こんなものですかね……。もっとおじいちゃんっぽく聞こえるように頑張らないと……」
ワイ「チノちゃーん!」 バターンッ!
チノ「ひゃあッ!?」
ワイ「チ、チノちゃーん! ごめんよーッ! チノちゃんは毎日心を守るために腹話術の練習してたのにワイはそんなことも知らずに……ッ!!ハフッ!ハフッ! チノ、身体を冷やさんようにな!」
チノ「ど、ドサクサにまぎれて祖父みたいなこと言わないでください!」
ワイ「ご、ごめんねチノちゃん……!」
チノ「べ、別に、腹話術を練習するくらい普通です……。それが私の生き甲斐なんですから……。それに、私は下手で、あんまり祖父のように聞こえないみたいだから」
ワイ「そ、そんなことないよ! チノちゃんのその気持ちだけでみんなはチノちゃんを心配してるんだよ! あっ、そ、そうだ! チノちゃんおてて出して!
チノ「こ、こうですか?」
ワイ「そう! それじゃあ今からおじいさんのモノマネするからね! チノちゃんのやわらかおめめにドッピュするからね! ちゃんと受け止めてね!」
チノ「えっ、えっ?」
ワイ「ウオーッ! チノ! ぷにぷにおめめに出すぞ!」ドピュドピュドピューッ!
チノ「ひゃあッ!(落涙)」ビシャーッ
ワイ「くっ、ふぅ……! す、すっごい濃いのが出たぁーッ!」
チノ「ほんとうです……で、でもなんで……?」
ワイ「それはね……チノちゃんの気持ちが、ワイに伝わったからだよ! チノちゃんのおじいさん大好きって気持ちがね!」
チノ「私の気持ち……」
ワイ「そう! だから、おじいさんの真似なんて、二の次なんだよ! いつだって好きな人の悲しむ顔より、笑ってる顔を見せてもらうのが一番気持ちいいんだよ!」
チノ「す、好きって……はわわ……あ、あの……もうちょっとだけ、腹話術に付き合ってもらってもいいですか?」
ワイ「もちろん!」
その後、ワイは一晩中チノちゃんのおめめにモノマネを続けて次の日の朝は起き上がれないほど疲弊していた。でもまぁ、その日以来、おじいさんのモノマネをするときチノちゃんが耳元で「好きです」とつぶやいてくれるようになったので結果オーライ!