アマガミのSSです。至らない点もあるかもしれませんが、楽しんでいただければ幸いです。
過去作品
学校 放課後 ポンプ小屋
橘「えーと、どういうことでしょう...?」
森島「言ったとおりよ!! 橘くんを私のものにしちゃうんだから!!」
上崎「うー、本当は私だけのものにしたいのにー...」
七咲「森島先輩、上崎先輩、『私』ではなく『私達』です」
棚町「そうよ。独り占めはさせないんだから!!」
桜井「急に呼び出してごめんね~、純一」
中多「で、でも先輩にどうしても聞いて欲しくて...」
橘「いや、それはいいんだけど。それより詳しい説明を聞きたいです」
絢辻「では不本意ですが、一から説明します」
説明中
絢辻「実はここにいる全員、橘くんのことが...その、好きなの///」
橘「ええっ!? そ、そうなの!?」
上崎「そうだよ!! 私、小学生の頃からずっと大好きでした!!///」
桜井「そ、それを言うなら私だって、小さい頃から好きだったよ~///」
中多「わ、私も先輩のことが大好きです///」
七咲「私だって好きです!!///」
棚町「あたしもよ!! じゃなかったらおへそなんて舐めさせないわ!!///」
森島「むむむっ!! わたしの膝裏を舐めたくせに棚町さんのおへそまで...」
絢辻「...棚町さんと森島先輩の件についてはあとで個人的に詳しく追求するとして」ニッコリ
橘「...絢辻さん、目が笑ってないよ?」
絢辻「黙りなさい」ギロッ
橘「はい...」
絢辻「こうまで人数が多いと色々と大変なの」
橘「色々って...?」
上崎「本当に大変だったんだよ? 皆を監視... あっ、ううん、なんでもない」
橘 (今、監視って言ったよな...?)
絢辻「だからそれぞれが橘くんを独占する日を決めたの」
橘「ど、独占?」
絢辻「そう。1日ずつ順番に橘くんをそれぞれが独占できる」
絢辻「ちょうど明日からテスト終了後の休みにはいるからそれを利用するわ」
絢辻「くじ引きの結果、最初は棚町さん、次は中多さん」
絢辻「そして七咲さん、森島先輩、上崎さん、桜井さん、最後が私」
絢辻「そして終わったあと、橘くんに誰と付き合いたいかを決めてもらいます」
橘「そんな、急に言われてもっ!!」
棚町「あんたの言いたいこともわかるわ。急だし、やること滅茶苦茶よね」
棚町「でも、それだけ皆、あんたのことが好きなの」
棚町「今まで、デートしたり話したり、色々なことしてきて」
棚町「自分の気持ちに気づいて、我慢できなくなって...」
棚町「でも、ライバルは皆、可愛いから自信がない...そして皆、友達だしね」
七咲「好きだけど、友達を悲しませたくない。それでずっと悩んで...」
中多「だったら、いっそのこと先輩に選んでもらおう、って」
桜井「だから私達のことをもっと知ってもらって、ちゃんと決めてほしいの」
森島「橘くんが誰を選んでも、祝福できるように公平にアピール期間を設けて、ね?」
絢辻「だから...今、あなたがいる日常をちょうだい!!」
橘 (皆、そこまで思いつめて...)
橘「うん、わかったよ」
絢辻「交渉成立ね♪」
橘独り占め1日目 棚町
駅前広場
棚町「おっまたせ~♪」
橘「今日は時間通りに来たな」
棚町「ふふん、最初っからマイナスは作らないわよ」
橘「いつもそうしてくれよ...」
棚町「まぁまぁ、細かいことは気にしないで」
橘「まったく... で、今日はどうするんだ?」
橘「デートスポットはあらかた行っちゃったし...」
棚町「甘いわね、純一!! 鼻血が出るほど甘いわ!!」
橘「お、なにか考えがあるのか?」
棚町「今日はあたしの意外な一面をあんたにみせてあ・げ・る♪」
橘 「自分から意外って言うなよ...」
棚町「うっさいわね。 いいから黙ってついてきなさい」
橘「はいはい...」
駅前商店街 ショッピングセンター 食品コーナー
橘「なんで食品売り場?」
棚町「純一、前もって言ったとおり、お腹空かせてきてるわよね?」
橘「ああ、お腹ペコペコだ」
棚町「よろしい。今日はあんたにあたしの手作り料理をご馳走してあげるわ!!」
橘「手作り料理!? 薫、お前料理なんてできたっけ?」
棚町「失礼ね!! これでもお母さんの帰りが遅い時は夕飯の支度をしてるのよ!!」
橘「あ~... そういえば前にそんなことを言ってたな」
棚町「今までデートといえば出かけるだけだったでしょ? たまにはこういうのもいいじゃない」
橘「そうだな... よし、今日はお腹いっぱい食べさせてもらうぞ!?」
棚町「まっかせなさい!!」
食材買い物中
棚町「え~と、じゃがいも、人参、玉ねぎはこれでいいわね。あとひき肉は...と」
橘「...何を作るか大体わかったよ」
棚町「ふふん、ただのカレーじゃないわよ?」
橘「何か隠し味でもあるのか?」
棚町「それはあとのお楽しみ♪」
棚町家 居間
橘「なぁ、薫... 本当に手伝わなくていいのか?」
棚町「いいの、いいの。あんたはそこで待ってて」
橘「う~ん、でも手持ち無沙汰でなんだか落ち着かないよ」
棚町「あんたが手伝ったらあたしの手料理にならないじゃない」
棚町「なんか適当に時間を潰しててよ」
橘「じゃあ、ここに積んである漫画でもみてるよ」
棚町「OK♪」
・・・・・
・・・・
・・・
棚町「え~と玉ねぎを先に炒めて...つぎは人参ね」
トントントン...
棚町「野菜は炒め終えたから、水をいれてあとはルーを足すだけね」
グツグツ...
橘「......」ジー
橘 (なんだかこうしてると新婚みたいだな...)
橘 (普段からは想像できないけど、薫にもこんな一面があるんだな)
棚町「どれどれ、お味は... ん~、美味し!!」ニッコリ
橘 (...っ!? か、かわいい///)
棚町「出来たわよ、純一。味見してみる? ...どしたの? 顔が真っ赤よ?」
橘「い、いや、なんでもない。味見させてもらうよ///」
棚町「はは~ん、さてはエプロン姿のあたしに興奮してるわね?」ニヤニヤ
橘「う、うるさいな。 ...たしかに可愛いけど///」
棚町「...なっ!? ちょ、ちょっと変なところで素直にならないでよ!!///」
棚町「こっちまで恥ずかしくなるじゃない...///」
橘「ははは...」
棚町「も、もう、味見はいいから早く食べましょ!!///」
食事中
橘「うん、美味しい!!」
棚町「あったりまえでしょ~!!」
橘「じゃがいももホクホクしてるし、玉ねぎもちゃんと炒めてあるし、なによりコクがある!!」
棚町「気づいたようね♪」
橘「さっき作ったばっかりなのに一晩寝かせたみたいだ!! ...何を入れたんだ?」
棚町「しょうがない、あんただけの特別サービスだからね。教えてあげるわ」
棚町「秘密はこれよ!!」ドンッ!!
橘「オイスターソースとバター?」
棚町「そ、玉ねぎをバターで炒めて、仕上げにオイスターソースを入れるの」
棚町「そうすると味に深みが増して美味しくなるってわけ」
橘「そうか。だからこんなに美味しいのか」
棚町「少しは見直した?」
橘「少しどころじゃないよ。びっくりした。薫って案外、料理上手なんだな」
棚町「案外、は余計よ。 ...でも嬉しいな。てんきゅね」
橘「う...///」
棚町「あんたの前では、悪ふざけをしたり、からっかたりすることしかしてないけど...」
棚町「あたしにも女の子っぽいところ、あるんだよ?///」
橘「う、うん...///」
橘 (ど、どうしたんだ? 薫の雰囲気がいつもと違うぞ...)
橘 (凄く...可愛い!!)
棚町「...あたしと一緒になったら、毎日こんな一面、見せてあげる///」
橘「か、薫...///」
棚町「ふふっ 最終日、待ってるからね♪」
橘独り占め2日目 中多
中多家 紗江の部屋
橘 (う~ん、紗江ちゃんの家に招待されたのはいいけど)
橘 (部屋で待っててって... どういうことだろう?)
橘 (こんな豪華な部屋だと落ち着かないよ...)ソワソワ
橘 (でも、いい匂いがするな... 紗江ちゃんの匂いかな?)
橘 (はっ!? まて純一。これはチャンスじゃないか!?)
橘 (あの紗江ちゃんの部屋に入れる機会なんてめったにないぞ!!)
橘 (...だが、僕は紳士!! 決して部屋を物色したりはしない!!)
橘 (せめてこのいい匂いだけでも存分に満喫しよう!!)スーハー
ガチャッ
中多「...お待たせしてすみません、先輩」
橘「ブホッ!! ゲホッ!! ...い、いや、大丈夫だよ、紗江ちゃん」
中多「ど、どうされたんですか!? 急に咳き込んで...?」
橘「いや、なんでもないんだ」
橘 (部屋の匂いを嗅いでました、なんて言えないよな...)
橘「そ、それで今日はどうしようか... って、あれ? なんでドアから顔だけ出してるの?」
中多「それは...ちょっと恥ずかしくて///」
橘「え? 恥ずかしい?」
中多「そ、その...///」
中多 (や、やっぱり恥ずかしい.../// でもこの日のために頑張ったんだし...)
中多「え、えい!!///」バンッ
橘「さ、紗江ちゃん!? その格好は!?」
橘 (メ、メイド服だと!?)
橘 (しかもミニスカニーソで胸元が開いている...!!)
中多「この日のために作ってみました///」
橘「ええ!? 紗江ちゃんが作ったの!?」
中多「は、はい。お裁縫は昔から得意なので...///」
中多「せ、先輩が好きそうな格好をしてみましたけど...いかがですか?///」
橘「い、いかがもなにも...」
橘 (あの奥手な紗江ちゃんがミニスカを履いて、白い太ももをあらわにしてる!!)
橘 (そしてそれを包み込む黒いニーソと太ももの白のコントラスト!!)
橘 (細い腰は控えめにそのスタイルの良さを自己主張してるけど...)
橘 (胸は谷間を見せることによってその魅力を余すことなく最大限に発揮している!!)
橘 (これを全て計算づくでやっているというのなら...中多紗江、恐ろしい子!!)
橘「うん、凄く似合ってる!! 凄く可愛いよ、紗江ちゃん!!」
中多「ほ、本当ですか!? 嬉しい...///」
橘「で、でも、なんでそんな格好してるの?」
中多「それは...先輩にご奉仕するためです」
橘「ご奉仕?」
中多「はい。私、こんな性格だから今まで人前で話すことができなくて...」
中多「ましてやアルバイトなんてできるわけなくて...」
中多「でも、先輩が特訓してくれたおかげでそれを克服できたんです」
中多「友達もたくさん出来ましたし、アルバイトも出来るようになりました」
中多「昔なら考えられませんでした。パパもママも喜んでくれてます」
中多「何より私自身、すごく嬉しいんです。自分の新しい一面が見えたようで」
橘「紗江ちゃん...」
中多「全部、先輩のおかげです///」
中多「先輩のおかげで私は少しだけ変わることができました」
中多「それを先輩に見て欲しいんです。そしてお礼をさせて欲しいんです!!」
橘「そ、そんなお礼だなんて!! 全部、紗江ちゃんが頑張ったからじゃないか!!」
中多「いいえ、先輩がいなければ私はきっと今も、昔と変わらないままでした」
中多「先輩には本当に感謝してるんです。先輩に特訓の成果を見てほしいんです!!」
橘「紗江ちゃん... わかったよ。じゃあ、お願いしようかな」
中多「は、はい!!///」
ご奉仕中
中多「で、ではご主人様。ケーキと紅茶をお持ちしますね」
橘「ご主人様!?」
中多「はい。今から先輩は私のご主人様です♪」
橘 (こ、これは夢じゃないのか!?)
・・・・・
・・・・
・・・
中多「ではご主人様、あーんしてください///」ニコニコ
橘「あ、あーん///」
中多「はい、どうぞ」
パクッ
橘「......///」モグモグ
中多「美味しいですか?」
橘「うん。紗江ちゃんが食べさせてくれたと思うと余計にね」
中多「ふふふっ そう言っていただけて嬉しいです。はい、あーん♪」
パクッ
橘「はは、なんか照れるなぁ」モグモグ
中多「照れてもやめませんよ。今日はとことん私のご奉仕に付き合ってもらいます///」
橘 (その格好でご奉仕って... なんだか変な想像をしちゃいそうだよ)
中多「紅茶はミルクティーでよろしいですか?」
橘「うん、頼むよ」
中多「かしこまりました、ご主人様」ニコニコ
橘「......///」
橘 (確かに、出会った頃と比べると変わったな)
橘 (オドオドしなくなったし、男性の前でも話せるようになったみたいだし)
中多「お待たせしました、ご主人様。あれ? どうかなさいました?」
橘「えっ?」
中多「いえ、その...せ、先輩が私の顔をじっとみていたので...///」
橘「ああ、いや、何ていうか。紗江ちゃん本当に変わったね」
中多「ふふ、特訓の成果が出てますか?」
橘「うん、前はこんなことしてくれなかったしね」
中多「自分でも驚いてます。こうやって自分の部屋に男性を招くなんて」
橘「アルバイトもうまくいってるみたいだね。手馴れてるし」
中多「はい。おかげで男性にも慣れました。 ...まだ、完全にではないですけど」
橘「そうなの? だって僕と今、部屋で2人っきりだけど」
中多「せ、先輩は別です!! 私、先輩を信じてますし、それに...」
橘「それに?」
中多「先輩のことが...好きですから///」カァァ
橘「さ、紗江ちゃん///」
中多「私、先輩と出会えて本当に良かったです」
中多「ずっと、パパとママに甘えてばかりだったので」
橘「そういえば紗江ちゃんのご両親がよくアルバイトを許してくれたね?」
中多「ええ、最初は2人とも反対だったんだけど...」
中多「ママが『人前が苦手なあなたが、成長したわね』て言ってパパを説得してくれたんです」
橘「へぇ、いいお母さんだね」
中多「はい。あ、そうだ先輩、じゃなかった。ご主人様でした。私ったらいつの間にか...」
橘「いや、先輩のままでいいよ。僕もなんだか恥ずかしかったし」
中多「そうですか? では先輩、今度私の両親に会っていただけますか?」
橘「ええ!? 紗江ちゃんのご両親に!?」
中多「はい。ママが『あなたを変えた先輩に是非会いたい』って...」
橘「...お父さんはなんて言ってるの?」
中多「ちょっと不機嫌そうでしたけど、『どんな男か興味はある』って言ってました」
橘「そう...」
橘 (お父さんってたしか出版社の社長で、紗江ちゃんを溺愛してるんだよな...)
中多「私も両親に紹介したいんです。」
橘「そ、そうなんだ。じゃあ今度、機会があれば...」
中多「はい、お願いします!! じゃあ、いつにしますか? パパがお休みなのは...」
橘「さ、紗江ちゃん!! 僕、紅茶のおかわりが欲しいな!!」
中多「あ、すみません。カップが空になってたのに私ったら... おかわり持ってきますね」
橘 (ふぅ、なんとか話題を変えるのに成功したな...)
・・・・・
・・・・
・・・
橘「ごちそうさまでした。すごく美味しかったよ。紗江ちゃんも可愛かったしね」
中多「喜んでもらえてよかったです///」
橘「特訓の成果もみせてもらったしね」
中多「...先輩。私、もっともっと先輩に特訓して欲しいです」
橘「え? でも、もう十分なんじゃ...」
中多「いいえ、もっと新しい自分を見つけたいし、それを先輩にも傍で見てもらいたいんです」
中多「そしていつか、先輩の理想の女性に...なりたいです///」
橘独り占め3日目 七咲
橘家 純一の部屋
七咲「今日は美也ちゃんはいません」
橘「ああ、紗江ちゃんの家に泊まりに行ってるみたいだな」
七咲「先輩のご両親も今日は帰ってこないんですよね?」
橘「うん、僕と美也がテストの振替休日だから2人で旅行に行くってさ」
七咲「つまり、ここには私と先輩しかいません」
橘「う、うん///」ドキドキ
七咲「じゃあ、先輩... 今から私は先輩の妹になります///」
橘「...いまいち話が見えないんだけど」
七咲「つ、つまり今日1日、私が先輩の妹になってあげます///」
橘「......」
七咲「だ、黙り込まないでください!!」
橘「えと、なんでまた...?」
七咲「その、普段、先輩には郁夫の姉というところしかお見せしてないので...///」
七咲「たまには違う部分の私を見せようと思ったというか...///」
七咲「えと、その...///」
橘 (おお、七咲が顔を真っ赤にしてモジモジしてる!!)
七咲「もう、わかりました!! 正直に言います!! 先輩に妹みたく可愛がって欲しいんですー!!///」
橘「妹みたいに!?」
七咲「私、いつも美也ちゃんの話を聞くたびに思ってたんです...」
七咲「美也ちゃんは先輩に可愛がられてるし、美也ちゃんも本当に先輩のことが好きなんだなって」
橘「そ、そうでもないぞ?///」
七咲「ふふ、隠しても表情でバレバレですよ、お兄ちゃん♪」
橘「お、お兄ちゃん!?」
七咲「ええ、今日は先輩をこう呼ばさせていただきます」
七咲「そのかわり...私のことも『逢』って呼んでくれませんか...?///」
橘「わ、わかった... 逢///」
七咲「はい... お兄ちゃん///」
橘 (...っ!? こ、これは凄いぞ!!)
橘 (普段、クールな七咲が真っ赤な顔で上目遣いで... 僕のことを『お兄ちゃん』って...)
橘「あ、逢!! もう一度お兄ちゃんって呼んでくれないか!?」
七咲「はい、お兄ちゃん♪///」
橘 (可愛すぎる...)
・・・・・
・・・・
・・・
居間でコタツに入りながらまったり中
七咲「あの、お兄ちゃん。抱っこ、してくれませんか...?///」
橘「だ、抱っこ!?」
七咲「は、はい。 ...駄目、ですか?」ウルウル
橘 (そんな目で見られたら...!! 断れない!!)
橘 (むしろ最初から断る理由なんてない!!)
橘「もちろんいいよ、逢」
七咲「ありとうございます、お兄ちゃん♪///」
橘「えと、座ったままだと...そうだ、逢が僕の両腿のうえに腰を下ろせば... 」
七咲「こうですか? ん、しょっと」
橘「そうそう... って、な、七咲!? なんで僕の方を向いてるんだ!?」
七咲「お兄ちゃんの顔をもっと近くで見たいんです」
橘「で、でもこの体勢だと!!」
橘 (七咲の顔が僕の目の前に...)
七咲「今は『七咲』ではなくて『逢』ですよ、お兄ちゃん...///」
橘「あ、ああ。そうだった...」ドキドキ
七咲「お兄ちゃんの顔が...よく見えます...」
橘「僕も逢の顔がよく見えるよ...」
七咲「...顔が真っ赤ですよ、お兄ちゃん」
橘「逢だって...」
七咲「恥ずかしいから見ないでください...///」ギュー
橘 (七咲の鼓動が伝わってくる... 凄くドキドキしてるな)
・・・・・
・・・・
・・・
七咲「じゃあ、お兄ちゃん。そろそろ晩御飯にしませんか?」
橘「ああ、そうだな」
七咲「ずっと抱き合ったままでしたね///」
橘「...うん///」
七咲「ふふ、あれから何度も私に『お兄ちゃん』って呼ばせて...」
七咲「そんなに嬉しかったんですか?」
橘「ああ、なんだか普段のギャップもあって凄く愛おしく感じるよ///」
七咲「...っ!! そう、ですか... 良かったです///」カァァ
橘「ははっ 顔が真っ赤だぞ、逢?」
七咲「もう、お兄ちゃんは意地悪です...///」
橘 (やっぱり可愛い...)
七咲「あ、晩御飯の材料はあらかじめ買ってきましたので」
橘「あ、そうなんだ。メニューは何かな?」
七咲「ふふっ 水泳部名物のおでんですよ 寒い季節にはぴったりと思いまして」
橘「ああ!! 噂のおでんか!? 去年もすぐに売り切れて食べられなかったんだよ」
七咲「そうだったんですか。じゃあ今日はお兄ちゃんのためにたくさん作りますね♪」
橘「逢、僕も手伝うよ」
七咲「いえ、お兄ちゃんはくつろいでいてください」
橘「おいおい。逢は今、僕の妹なんだろ? 僕に思いっきり甘えていいんだよ」
七咲「ふふっ そうでしたね。じゃあ、お言葉に甘えます」
橘「ああ。それに一緒に作ったほうが楽しいしね」
調理中
七咲「あ、大根は角を切ったほうが味が早く染みますよ」
橘「あ、そうなんだ」
七咲「はい。はんぺんも汁を吸うと膨らむのでもっと薄く切ったほうがいいです」
橘「へぇ、それは知らなかったな」
七咲「ふふっ お兄ちゃんが普段いかに家事をしてないかがわかりますね」
橘「そう考えると、逢は普段から家事をしてるんだね」
七咲「はい。昔から母の手伝いをしてたし、代わりに夕飯の用意をすることもあるので」
橘「そっか。 ...そういえば薫もそうだってこの前言ってたな」
七咲「...お兄ちゃん。今は他の人のことを考えちゃ駄目です」ムスー
橘「あ、ご、ごめん!!」
七咲「駄目です。罰としてお兄ちゃんは昆布しか食べられません」
橘「そ、それはないよ... 逢、ごめん!!」
七咲「仕方ないですね。じゃあ、交換条件です」
橘「交換条件?」
七咲「...今晩...一緒に寝てください///」
橘「そ、それは...」
七咲「じゃなかったら晩御飯はおでんの昆布だけです」
七咲「お風呂で背中も流してあげようと思ったけど、してあげません」
橘 (それって交換条件になってるのか...?)
橘「わかったよ。今日は一緒に寝よう、逢」
七咲「...はい♪///」
・・・・・
・・・・
・・・
純一の部屋 ベッド
橘「逢、狭くないかい?」
七咲「ちょっと狭いけど、こうすれば問題ありません」ムギュー
橘「ははっ 逢は甘えんぼだな」
七咲「...お兄ちゃんの前でだけです」
七咲「他の人の前ではこんなところ見せません。郁夫にも」
七咲「お兄、 ...先輩だからこんなに甘えられるんです」
橘「そうか...」
七咲「普段、先輩をからかったり意地をはったりするけど...」
七咲「それは弱いところを見せたくなくて...」
七咲「でも、本当はずっと...こんな風に甘えたかったんです///」
橘「...もっと、甘えてもいいよ」
七咲「それは、先輩が私を選んでくれた時までとっておきます」
七咲「その時は私、凄く甘えちゃいますから...///」
橘独り占め4日目 森島
住宅街 公園
森島「さぁ、目的地に着いたわよ!!」
橘「目的地って... この公園ですか!?」
森島「そうよ。ほらほら、早く遊ぶわよ!!」
橘「は、はい」
橘 (う~ん、何が目的なんだろう)
・・・・・
・・・・
・・・
1時間前 駅前広場
森島「お待たせ、橘くん」
橘「いえ、僕も今来たところです」
森島「そう? よかった」ニッコリ
橘 (先輩、今日も素敵だな... あれ?)
橘「なんだか今日の服はいつもと雰囲気が違いますね」
森島「わおっ!! いいところに気がついたわね、橘くん。グーよ!!」
橘「ええ、明るくて華やかでいつもより素敵です。色使いが上手ですね、先輩」
森島「ふふ、嬉しいな~。頑張ったかいがあったわ///」
橘 (せ、先輩が僕のために頑張ってくれたなんて!!)
橘 (ああ、僕は幸せ者だ...)ジーン
橘「それじゃ、森島先輩。今日はどうしましょうか」
森島「今日はね、行きたいところがあるの!!」
森島「だから行き先は私に任せてくれないかな?」
橘「はい、わかりました」
・・・・・
・・・・
・・・
橘 (というわけで、先輩に付き合ってきたけど)
橘「先輩の行く場所ってなぜか公園やサイクリングロードみたいな場所が多いんだよな」
橘「理由を聞いても『まだ秘密』って言って教えてくれないし...」
森島「橘く~ん!! どうしたの~!?」
橘「あ、すみません、先輩。今、行きまーす!!」
公園 芝生
森島「そ~れ!! いくわよ~!!」ブーン
橘「おっとっと... よっ、と!!」パシッ
森島「オーキードーキー!! ナイスキャッチよ、橘くん!!」
橘「先輩こそ、フリスビー投げるの上手ですねー!!」ブーン
森島「ふふふっ 小さい頃から遊んでたからね~!!」パシッ
橘「そうだったんですかー!!」
森島「ふぅ~、少し疲れちゃった。ちょっと休憩にしない?」
橘「はい。僕もう、暑くて。ジャンパー脱いじゃおうっと」
森島「ちょうどそこにベンチがあるから、そこで休みましょ」
橘「はい」
公園 ベンチ
森島「あらあら。橘くん、汗かいちゃてるわよ?」
橘「ええ、今日は厚着をしてきたので」
森島「ふふ、冬に汗をかくまで遊ぶなんて、久しぶりな気がするわね」
橘「そういえばそうですね。子供のとき以来かも」
森島「ねぇねぇ。そういえば橘くんって小さい時はどんな子供だったの?」
橘「う~ん、どうと言われても... 多分、今と変わらないんじゃないですかね?」
森島「わおっ!! じゃあ、ちょっとHだけど、独創的で可愛い子犬みたいだったってことね」
橘「...先輩は普段、そんな風に僕を思ってたんですね」
森島「あら? 褒めてるのよ?」
橘「そ、そうなんですか?」
森島「当然じゃない。だって橘くんって面白いんだもの!!」
森島「私の膝裏にキスしたり、誘拐された設定でラーメンを食べさせてくれたり...」
橘「ははっ そんなこともありましたね」
森島「ほかにもいっぱいあるわ!! だから一緒にいると楽しいの」
橘「僕もそうですよ?」
森島「え?」
橘「森島先輩と一緒にいるとワクワクするんです」
橘「先輩っていきなり突拍子もないことをしたり、普通じゃ思いつかないようなことを考えたりするけど」
橘「でも先輩と一緒だと、それがとても楽しいんです。それに...」
森島「...それに?」
橘「なにより楽しんでいる森島先輩の笑顔がとても素敵で、可愛くて...」
橘「だから一緒にいるとワクワクするし、ドキドキもします///」
森島「...もう、すぐにそういうこと言うんだから...///」カァァ
森島「でも、橘くんがそういう風にいってくれると、とても嬉しいの///」
森島「私のことをよく見てくれているんだな、ってね///」
橘「せ、先輩///」
森島「ふふっ さ、休憩はおしまい。次の目的地に行きましょ!!」
橘「ええ、まだあるんですか!?」
森島「もっちろん!! さぁ、どんどん行くわよ~」
橘「ああ、待ってくださーい!!」
夕方 丘の上公園
橘「すっかり日が暮れちゃいましたね」
森島「そうね~。色々なところをまわったしね」
橘 (あのあと、海岸や河原にも行ったし... 本当に色々まわったな)
森島「それでね、ここが今日の最終目的地よ」
橘「ここがですか?」
森島「そう、ここ」
橘「...そろそろ、教えていただいてもいいですか? 今日の目的を」
森島「うん。黙ったまま連れ回してごめんね」
橘「いえ、気にしないでください。楽しかったですし」
森島「ふふ、ありがと。 ...実はね」
橘「......」
森島「今日、行った場所ってね。私が昔、飼ってた愛犬と遊びに行ってた場所なの」
橘「前に話してくれたジョンのことですね」
森島「そう。今はもういないけど、私の大切な家族だったの」
森島「死んでしまったとき、とても悲しかった...」
森島「今まで、いるのが当然だったのに...いなくなるなんて」
森島「もっと可愛がってあげればよかった、もっと抱きしめてあげればよかった、って」
森島「あとからどんどん後悔するようになっちゃったの」
森島「だから、思い出がある場所に来ると悲しくなるから、そういった場所は避けてたんだ」
橘「...そうだったんですか」
森島「この丘の上公園がジョンの好きな場所だっていうのは前に話したよね?」
橘「はい。毎日、遊びに来てたってことも」
森島「うん。 ...前に、橘くんに、ここに連れてきてもらったことあったじゃない?」
橘「ええ、僕が先輩と初めて出会った場所だってことを伝えたくて」
橘「その時にジョンの話も聞きました」
森島「あの時以来、私、ここに来てないの」
森島「というより、まだここに来る勇気がない、っていう方が正しいかな」
森島「やっぱり、まだ引きずっちゃってるのね」
橘「......」
森島「だからね、考えたの」
森島「君と一緒にジョンと思い出の場所をまわれば、悲しみが消えるかなって」
森島「そうすれば、他の皆のようにもっと橘くんのことを考えられるって思って」
森島「だから、ひとつひとつ消していって... 最後に残ったのがここ」
橘「そうだったんですか...」
森島「ごめんね。変なことに付き合あわせちゃって...」
森島「でもね、橘くんしかいなかったの」
森島「橘くんじゃないと...きっと、私...悲しさに押し、つぶ、されちゃ...って...」
橘「...っ!? 先輩!!」ギュー
森島「あっ...///」
橘「先輩、無理に悲しみを消そうとしないでください」
橘「それはジョンとの楽しい思い出まで消しちゃうってことです」
橘「ジョンを失った悲しみが先輩の心にこれほどまで残ってるということは」
橘「それぐらいジョンを大切に思っていたんですよね?」
森島「うん...」
橘「じゃあ、忘れちゃ駄目です」
橘「しっかり受け止めて、大切にしてください...」
森島「うん... うん...」
橘「先輩が勇気がないのなら、僕が一緒に行きますから」
橘「いつかこの場所で先輩がジョンのことを笑顔で振り返られるようになるまで」
橘「僕が一緒に来ます」
森島「だから...泣かないでください」
森島「ありがとう... 橘くん」
・・・・・
・・・・
・・・
森島「ありがとう、だいぶ落ち着いたわ」
橘「先輩、ハンカチどうぞ」
森島「うん、借りるね」
橘「すっかり暗くなっちゃましたね。寒くないですか?」
森島「ふふっ、橘くんがずっと抱きしめてくれてたから平気よ」
橘「あ、すみませんでした。つい...///」
森島「ううん、凄く嬉しかった///」
橘「そ、そうですか///」
森島「......///」
森島「ふぅ、駄目ね。私って」
橘「え?」
森島「せっかく今日は橘くんに私の魅力をアピールしようと思ったのに」
森島「恥ずかしいところみせちゃった」
橘「そんなことないです!!」
森島「た、橘くん?」
橘「先輩の優しさや愛情深さが凄く伝わってきました」
橘「きっと皆が先輩に好かれるのってそういうところなんだと思います」
橘「周りを楽しませるだけでなく、相手を心の底から思いやることができる」
橘「それが先輩の魅力なんだと思います」
森島「わお...///」
森島「...ふふっ まいったなぁ。魅力をつたえるどころか魅了されちゃった」
橘「せ、先輩?」
森島「私、やっぱり橘くんのことが大好きよ///」
チュッ
橘「...っ!!」
橘 (い、今、唇に触れた柔らかな感触はもしかして...)
森島「抜けがけしちゃった/// ...他の娘には内緒だからね?」
森島「また私をここに連れてきてね、橘くん?」
橘独り占め5日目 上崎
橘家 純一の部屋
上崎「はぁ...///」ジーン
橘「ど、どうしたの? さっきからずっと、ボーッとしてるけど...」
上崎「ご、ごめんなさい!! 橘くんの部屋に来れたことが凄く嬉しくて...」
橘「大げさだなぁ」
上崎「そんなことないです!! 私、ずっと憧れてて...」
上崎「こうして、あなたと話ができるだけでも嬉しいのに」
上崎「部屋に入れてもらえるなんて...///」
橘「ははっ、喜んでもらえてなによりだよ」
橘「それで、今日は何をしようか?」
上崎「橘くんがしたいことなら、私、なんでもいいよ!!」
橘「う~ん... でも、理沙ちゃんいつもそう言って僕に尽くしてくれるから...」
上崎「私、橘くんに喜んでもらいたいの!!」
橘「う~ん......」
橘「そうだ、じゃあ今日は理沙ちゃんとデートしよう!!」
上崎「デ、デート!?」
橘「うん、理沙ちゃんとデートしたことないしね」
上崎 (橘くんとデート、橘くんとデート、橘くんとデート...)
橘「理沙ちゃん?」
上崎「よ、よろしくお願いします!!」
橘「うん、今日は僕が理沙ちゃんをエスコートするよ」
上崎 (私、もう死んでもいい...///)
・・・・・
・・・・
・・・
駅前商店街 ショッピングセンター
橘「そういえば僕、理沙ちゃんの私服を見るのって初めてだよ」
上崎「そういえばそうだね。 ...変じゃないかな?」
橘「ううん、とても似合ってるよ」
上崎「えへへ... 嬉しいな///」
上崎「この服、私のお気に入りなの」
橘「そうなんだ。理沙ちゃんって華奢だからそういう明るい色の服が似合うね」
上崎「ふふっ、ありがとう。今度からそういう服を買うね」
上崎「私、こういう服ってあまり持ってないから」
橘「それなら、今日は理沙ちゃんの服を買いに行こうよ」
上崎「ええっ!? で、でも私なんかのために...」
橘「理沙ちゃん、いつも僕のために色々してくれてるんだからさ」
橘「今日は僕が理沙ちゃんのために何かさせてよ。ね?」
上崎「う、うん!!///」
駅前商店街 服屋
橘「あ、理沙ちゃん、こういう服ってどうかな?」
上崎「橘くんが選んでくれた服ならなんでもいいよ!!」
橘「う~ん、そう言われてもな...」
橘「でも、理沙ちゃんって可愛いし、スレンダーだから何を着ても似合うんだよね」
上崎「か、可愛い!? 私が!?」
橘「うん、理沙ちゃんはとても可愛いよ」
上崎「た、橘くんに可愛いって言われた...///」モジモジ
橘 (やっぱり可愛いよな...///)
橘 (他の娘に対してやってきたことも、僕を思ってのことだったし)
橘 (そういう理由だったから皆も許してくれたんだろうな...)
上崎「えへへ.../// あ、このカーディガン可愛いな」
橘「どれどれ? あ、確かに可愛いね。これだったら色々な服と合わせられるし」
上崎「決めた!! これ買ってくる」
橘「そ、そんなに簡単に決めちゃっていいの?」
上崎「うん、橘くんも可愛いって言ってくれたし」
橘「そっか。じゃあ、次はそれに合うインナーを探さないとね」
上崎「うん♪」
・・・・・
・・・・
・・・
駅前商店街 ベンチ
上崎「ふふっ、嬉しいな」
橘「気に入った服が見つかってよかったね」
上崎「それもそうだけど、橘くんと一緒なのが凄く嬉しくて///」
橘「僕と一緒なのが?」
上崎「うん。今までは遠くから見てるだけだったから...」
橘「ははっ、もうそんなことしなくてもいいよ?」
橘「こうして理沙ちゃんと知り合うことができたんだしね」
橘「これからは昼休みにテラスで一緒に御飯を食べたり、一緒に帰ったりもできるし」
橘「休日には一緒に遊びに行くこともできるんだからさ」
上崎「うん... ありがとう、橘くん」
橘「さて、ここじゃ寒いし、喫茶店にでも行かない?」
上崎「そうだね。でもこのあたりに喫茶店ってあったかな?」
橘「実は僕のお気に入りの店があるんだよ」
上崎「へぇ~、橘くんってこのあたりに詳しいんだね」
橘「うん、よく学校帰りにぶらついてたからね」
橘「ちなみにその店に誰かを連れて行くのは理沙ちゃんが初めてだよ」
上崎「あ、あたしが初めてなの!?///」
橘「うん、僕の秘密の場所なんだ」
上崎「私が橘くんの初めてに...///」
・・・・・
・・・・
・・・
夕方 住宅街 帰り道
橘「すっかり長居しちゃったね」
上崎「うん、凄く居心地がいい店だった」
上崎「コーヒーとケーキも美味しかったし」
橘「そうなんだよ。僕はコーヒーってあんまり飲まないんだけど」
橘「あそこのコーヒーは好きなんだ」
上崎「そうなんだ。また...一緒に行きたいな」
橘「うん、僕もだよ」
上崎「ふふっ...///」
上崎「橘くん、今日は本当にありがとう」
上崎「あなたにひどいことをした私を許してくれただけじゃなく」
上崎「デートにまで誘ってくれて...」
橘「理沙ちゃん...」
上崎「私ね、本当に橘くんのことが好きだったの」
上崎「あなたに助けられてから、ずっと」
上崎「でも勇気がなくて、見ていることしかできなくて」
上崎「そして傷つけて、周りの女の子達にも迷惑かけちゃって...」
橘「......」
上崎「そんな私をあなたは笑って許してくれた...」
上崎「本当にありがとう」
橘「お礼を言うのは僕のほうだよ、理沙ちゃん」
上崎「え?」
橘「2年前、理沙ちゃんは僕をかばってくれたんだよね?」
橘「皆の笑いものにされそうになった僕を...」
橘「あの時はわけがわからなくて辛かったけど...」
橘「でも理沙ちゃんがかばってくれなかったら、もっと辛い思いをしたと思う」
橘「それに、あの出来事があったから僕は自分自身を変えることができた」
橘「そのおかげで皆と出会えたんだ」
上崎「......」
橘「そして、理沙ちゃんの存在に気付くことができたんだ」
上崎「えっ!?」
橘「ずっと忘れちゃっててごめんね。理沙ちゃんはずっと僕を見守っててくれたのに」
上崎「橘くん...」
橘「理沙ちゃんには本当に感謝してるよ」
橘「だからそんなに自分を卑下しないで」
橘「理沙ちゃんのおかげで僕は変わることができたんだ」
橘「だから今度は僕が理沙ちゃんを変えるきっかけになりたいんだ」
上崎「私が変わる...?」
橘「うん、理沙ちゃんは可愛いし、優しい娘だよ」
橘「だからもっと自信をもって、ね?」
上崎「私なんかが変われるのかな...?」
橘「もちろんだよ。僕が保証する」
上崎「橘くんが...? だったら...頑張れる」
橘「うん、僕でよければいつでも力になるよ」
上崎「...じゃあ、ひとつお願いしていい、かな?」
橘「うん、なんだい?」
上崎「手、握ってもらっても...いい?」
橘「うん、お安い御用さ」ギュッ
上崎「...暖かい///」
上崎「橘くん、私、頑張るね///」
橘独り占め6日目 桜井
桜井家 梨穂子の部屋
橘「ふぅ...」
橘 (やっぱり梨穂子の部屋はなんとなく落ち着くなぁ)
トタトタトタ... ガラッ
桜井「お待たせ~。純一♪」
橘「おお、それが梨穂子の新作ケーキか」
桜井「えへへ、名づけてストロベリーソース入りカスタードシュークリームの生クリーム乗せだよ~」
橘「詰め込みすぎだろ... また太るぞ?」
桜井「も~、そういう事を言う人には食べさせてあげないんだから~」プンスカ
橘「ははっ、ごめん、梨穂子。謝るから僕にも1個くれないか?」
桜井「本当に純一ったら~。はい、どうぞ」
橘「ありがと」パクッ
橘「......」モグモグ
桜井「...どうかな? 美味しい?」ドキドキ
橘「うん、美味しい!!」
桜井「ほ、本当!?」
橘「カスタードのしっとり感と生クリームのふんわり感がサクサクのクッキーシューによく合ってる!!」
橘「ストロベリーソースの酸味が甘さを抑えてるから、しつこくないしね」
桜井「ふふっ、そう言ってもらえると嬉しいよ~♪」ニコニコ
橘「本当に美味しいよ。 ...もう1個もらってもいいかな?」
桜井「うん、まだまだあるから」
橘「いただきまーす!!」
・・・・・
・・・・
・・・
橘「ふぅ、満腹だよ」
桜井「はい、紅茶だよ。砂糖は少なめだったよね?」
橘「うん、ありがとう」
桜井「たくさん食べたね~。あんなに作ったのに...」
橘「梨穂子の作るお菓子は僕の好みの味で美味しいからな」
橘「たくさん食べても飽きないんだよ」
桜井「そりゃ、わざわざ純一の好みの味にしてありますから」
橘「え、そうだったのか?」
桜井「やっぱり気づいてなかった。もう、いつも誰のために作ってると思ってたんだよ~」
橘「そういえば、梨穂子がお菓子を作ってくる相手って香苗さんか僕ぐらいだったな...」
桜井「純一が小さい頃に『お菓子をたくさん食べたい』って言ったから練習してきたのに」
桜井「全然、気づいてくれないんだもん...」シュン
橘 (...!? そ、そうだったのか...///)
橘「梨穂子はかわいいなぁ!!」ムギュー
桜井「きゃっ!? ちょっと、純一!?///」
橘「可愛いすぎるぞ、梨穂子.../// 僕が何気なく言った一言でそこまで...」ギュー
桜井「だ、だって純一に喜んで欲しくて...///」
橘「ありがとう、梨穂子」
桜井「えへへ、頑張って練習してよかった♪///」
・・・・・
・・・・
・・・
梨穂子の部屋でまったり中
桜井「ねぇ、どこかに出かけたりとかしないの?」
橘「ん? 梨穂子、行きたいところがあるのか?」
桜井「私は特にないけど... 純一はいいの?」
橘「僕もないぞ」
桜井「でも、せっかく純一を独占できるのに...」
橘「う~ん、でも僕は梨穂子とこうしてまったりとするのが好きなんだけどなぁ」
桜井「え、そうなの?」
橘「うん、小さい頃からずっと一緒だったせいかな? 梨穂子と一緒にいるとなんだか落ち着くんだよ」
橘「変な気を遣わなくて済む、というか...」
桜井「え~、それは褒めてるの~?」
橘「も、もちろん、そうだぞ?」
橘「自然体でいられるんだよ、一緒にいると。ありのままの僕でいられるんだ」
橘「他の女の子といるときは、楽しませなきゃとかエスコートしなきゃ、とかで気を遣うけど」
橘「梨穂子は僕といるだけで、いつも幸せそうに笑ってくれるから」
橘「僕もリラックスしていられるんだ」
桜井「やだ、もう... 恥ずかしいよ///」
橘「り、梨穂子? 顔が真っ赤だぞ?」
桜井「純一のせいでしょ~?///」
桜井「でも... えへへ、凄く嬉しい///」
梨穂子の部屋でオセロ
橘「これでどうだ!!」パチッ
橘「ふっふっふ。一気に白5枚を黒に変えたぞ。形勢逆転だな」
桜井「ふっふっふ~♪ それはどうかな~?」パチッ
橘「なっ!?」
桜井「5、6、7、8枚っと。さ、純一の番だよ?」ニヤニヤ
橘「くっ... おのれ...」
橘 (そっちか!? いや、それだとさらに倍返しをくらう)
橘 (ここはあえて、こっちに置いてこの1枚だけを黒にしておくか)
橘「...ここだな」パチッ
桜井「えっ!? そこでいいの?」
橘 (くくく... 甘いな、梨穂子。それはフェイクさ!!)
橘 (ここを黒にしたことにより、次で角をとれる!!)
橘 (オセロとは角を制したものが勝つのさ!!)
桜井「えと、じゃあ次は私だね」
橘 (ふふふ...無駄なあがきをするがいい)ニヤニヤ
桜井「ん~... ん? ...ほうほうなるほど」ニヤリ
桜井「それじゃあ、ここかな」パチッ
橘 (ははっ、そんなところに置いてどうす... あれっ!?)
桜井「3、4、5枚、と」
橘「なっ!?」
橘 (角をとるための黒を潰されただけでなく、一気に白にされた...)
桜井「さ、純一の番だよ」
橘「くっ... ここだ」パチッ
桜井「おやおや、そこでいいのですかな~?」ニヤニヤ
桜井「じゃあ、角はいただき~♪」
橘「ああっ!?」
桜井「純一の番だよ。でも、置けるところないね」
橘「...まいりました。くそ、これで3戦3敗か」
桜井「それじゃあ、私の言うことをひとつ聞いてもらうからね?」
橘「なんのことだっけ?」
桜井「え~? 勝った人の言うことを聞くってルール決めたの純一じゃんか~」
橘「覚えていたか... 仕方ない。でも、あまり変なのは駄目だぞ?」
桜井「そんなお願いしないってば」
桜井「え~と、それじゃあね...///」
・・・・・
・・・・
・・・
桜井「えへへ///」
橘「こんなのでいいのか?」
桜井「私の膝枕をこんなの扱いしないでよ~」
橘「いや、むしろ嬉しいんだけどさ」
桜井「ふぇっ!? そ、そうなの?///」
橘「もっと変なのを想像してたから。なんだかご褒美みたいだ」
桜井「苦しゅうないぞよ~♪」
橘 (その使い方であってるのか...?)
桜井「......」
橘「......」
橘 (しっとりした梨穂子の太ももが気持ちいい...)
橘 (前もしてもらったけど、やっぱりいいな)
桜井「ね、純一」
橘「うん?」
桜井「なんだか小さい頃を思い出すね」
橘「そうか?」
桜井「ほら、前もやったじゃない、オセロ」
橘「う~ん...」
桜井「小学校のころにさ、今日みたいに私の部屋で」
橘「ああ、あの時か? 確かそのときは梨穂子が負けたんだっけ」
桜井「そうそう、純一に1度も勝てなくて」
橘「そうだった。あの時に比べて梨穂子、オセロ強くなったなぁ」
桜井「どうしても純一に勝ちたかったの」
橘「そんなに悔しかったのか」
桜井「...違うよ。純一、あの時言ったじゃない」
桜井「『もし、僕が負けたら梨穂子のお婿さんになってやる』って」
桜井「だから私...///」
橘「僕、そんなこと言ったのか」
桜井「多分、冗談だったんだと思うけどね。でも私、本気にしちゃって」
桜井「純一、さっき私と一緒にいると自然体でいられて落ち着くって言ったよね?」
橘「ああ」
桜井「私もそうなの。純一と一緒にいるとね、すごく安心できるんだ」
桜井「私、おっちょこちょいでしょ? だから純一にも迷惑かけてばかりだし」
桜井「一時、自分のことが嫌いになったときがあったの」
桜井「なんで、こんなにドジなんだろうって」
橘「......」
桜井「でもね、そのときに純一が言ってくれたの」
桜井「『ドジで食いしん坊じゃない梨穂子なんて梨穂子じゃない』って」
橘「なんかそれ、酷いこと言ってないか」
桜井「あはは、そうかもね~」
桜井「...でも凄くうれしかったの。私のありのままを見てくれてて」
桜井「そんな純一と一緒にいると幸せで嬉しくて...///」
桜井「だから、さっき純一が私と居るとありのままでいられるって言ってくれて凄く嬉しかった///」
橘「うん... 僕も梨穂子がそう思っててくれたってわかって嬉しいよ///」
桜井「えへへ... 純一、これからもそばにいさせてね?///」
橘独り占め最終日 絢辻
午前中 図書館
絢辻「そこ間違ってるわ。さっき教えた公式を当てはめて考えてみて」
橘「えーと...こうかな?」
絢辻「そう、そしてこの数字を代入するの」
橘「ああ、なるほど!! やっと解けたよ」
絢辻「まったく... これくらいは自分で解けるようになりなさいよ」
橘「うう... 頑張ります」
絢辻「当然よ。わざわざあたしが勉強を教えてあげてるんだから頑張ってもらわないと困るわ」
橘 (相変わらず厳しいな...)
絢辻「その問題を終えたら次は英語よ」
橘「ええっ!? まだあるの!?」
絢辻「...森島先輩と棚町さんへの変態行為を許す代わりに勉強量を増やしたんだけど」
絢辻「お気に召さないなら、いいのよ。そのかわり覚悟は出来てるのよね?」ニッコリ
橘「...すみませんでした」
絢辻「はい。じゃあ、さっさと終わらせて」
橘「はい...」
図書館 休憩所
橘「腰が痛い...」
絢辻「さすがに朝から座りっぱなしはキツいわね」
橘「でも、だいぶわかるようになってきたよ」
絢辻「教える側が優秀ですもの」
橘「教わる側の努力は認めてくれないんだ...」
絢辻「教わる方が努力するのは当然でしょ」
橘「......」
絢辻「何よ、その顔は」
橘「いや、なんでも...」
絢辻「まぁ、頑張っているのは...褒めてあげる///」
橘 (おお、絢辻さんがデレた!!)
絢辻「...っ!? も、もう、そんな露骨に嬉しそうな顔しないの!!」
絢辻「ほら、もうそろそろお昼だしご飯でも食べましょ」
・・・・・
・・・・
・・・
絢辻「はい、これ」スッ
橘「え? その箱がどうかしたの?」
絢辻「お弁当、作ってきてあげたのよ///」
橘「ぼ、僕のためにわざわざ!?」
絢辻「早起きして作ったんだから、残したら承知しないからね」
橘「あ、ありがとう!! いただきまーす!!」パクッ
橘「......」モグモグ
絢辻「ど、どう...? 美味しい?」ドキドキ
橘「うん、美味しい!! 美味しいよ、絢辻さん!!」
絢辻「ふふ、そんなに喜んでもらえるなんて。作ったかいがあったわ」
橘「すごく手が込んでるね。このから揚げ、衣がさっくりしてる」
絢辻「それは生姜と生醤油で下味をつけた鶏肉に薄めに衣をつけたの。衣を薄くするとさっくりするのよ」
橘「このポテトサラダも美味しい!!」
絢辻「あ、それはあえてお芋の形が残るくらいにふかしておいたの」
絢辻「ふかしすぎるとお芋がベシャベシャになっちゃうから。ちなみに隠し味はお酢よ」
橘「え、お酢が入ってるの?」
絢辻「そう。お酢を入れることで、味がまろやかになるの」
橘「絢辻さんってほんとに才色兼備なんだね」
絢辻「ええ、自分を高めるための努力は惜しまないからね」
絢辻「おかげで周囲の信頼を得られて、自分に有利になるわけだし」
橘「ははは...」
絢辻「あと、橘くんにも料理を褒めてもらえるし...///」
橘「あ、絢辻さん...///」
絢辻「ふふ、まだまだあるからたくさん食べてね?」ニッコリ
・・・・・
・・・・
・・・
橘「ご馳走様でした」
絢辻「お粗末さまでした」
橘「すごく美味しかった。食べ過ぎてお腹いっぱいだよ」
絢辻「ちょっと作りすぎたと思ってたのに、全部食べちゃうんだもの」
橘「だって美味しかったから、つい」
絢辻「ふふ、でも食べてくれて嬉しいわ」
橘「それで、このあとはどうするの? 勉強も一区切りついたし」
絢辻「私、参考書を買いたいんだけど、付き合ってくれるかな?」
橘「うん、お安い御用だよ」
駅前商店街 本屋
絢辻「じゃあ、ちょっと探してくるわね」
橘「うん、僕もその辺で本を探してるから」
絢辻「わかったわ」
橘「さて...ビーバー三国志の最新刊でも探すか」キョロキョロ
橘「え~と、あの棚のあたりかな」
橘「おお、あったぞ。 ...でもまだ最新刊は出てないのか」
橘「ふぅ... ん?」
橘 (こ、これは!? 僕が愛読しているお宝本の最新刊じゃないか!!)
橘 (しかも今回は『コスプレサンタ特集』だって!?)
橘 (『ビキニ・ミニスカ...あなたはどんな衣装のサンタがお好き?』だなんて...)
橘 (くっ、この僕の心を鷲掴みにするとは... で、でも)
橘「......」チラッ
絢辻「う~ん... なかなかいいのが無いわね...」
絢辻「これは細かいところまで載ってるんだけど読みづらいし」
絢辻「こっちは読みやすいんだけど、内容が薄いのよね」
橘 (絢辻さんはまだかかりそうだな...)
橘 (さすがに買うのは無理だけど、ちょっと中身を確かめるぐらいなら...)ドキドキ
ペラッ...
橘 (ふおおおおっ!! こ、これはすごいぞ!?)
橘 (ミニスカでニーソという基本のコスプレから始まって)
橘 (褐色ビキニ、ウサ耳、猫耳、小悪魔...なんでもある!!)
橘 (なんていうバリエーションの多さだ...これは見ていても飽きない!!)
橘 (今度、絶対に買いに来よう!!)
絢辻「橘くん? 終わったわよ?」
橘「は、はい!! わかりました」
絢辻「どうしたの、大声だして? びっくりしちゃうじゃない」
橘「い、いや、なんでもないよ」
絢辻「まぁ、いいわ。それじゃあ行きましょ」
橘 (どうやらバレなかったようだな...)ドキドキ
駅前商店街 広場
橘「商店街の飾り付もクリスマス一色だね」
絢辻「そうね。賑やかになってきたわね」
橘「実行委員の仕事も大詰めになってきたし」
絢辻「ええ、橘くんが手伝ってくれたおかげでいいペースで進んだわ」
橘「ははっ、そう言ってもらえると手伝ったかいがあったよ」
絢辻「最初はあなたが手伝ってくれる理由がわからなかったけどね」
橘「だって実行委員もやってクラス委員もやるなんて大変じゃないか」
橘「それに絢辻さんと一緒にいると楽しいし」
絢辻「ふふっ、お世辞をありがとう」
橘「お、お世辞なんかじゃないよ?」
絢辻「前も言ったでしょ? 私、そういう台詞って信用しないの」
橘「そんなぁ...」
絢辻「でも... 橘くんに言われると、嬉しいし、信じられるの///」
橘「あ、絢辻さん?///」
絢辻「最近かな。そういうふうに思えるようになってきたのは」
橘「そうなんだ...///」
絢辻「......///」
橘「......///」
橘 (な、なんかすごく照れるな)
絢辻「あ、橘くん、あれ」
橘「え? ああ、前に食べたメロンパン屋だね。今日も来てるんだ」
絢辻「ね、また食べてかない?」
橘「で、でも昼のお弁当がまだお腹に...」
橘 (それに、前に無理やり食べさせられたしな)
絢辻「...『コスプレサンタ特集』」ボソッ
橘「えっ!?」ギクッ
絢辻「さっきの本屋で熱心にみていたわね」
橘「えーと...」ドキドキ
絢辻「ミニスカートにバニースタイル... はたしてあれがサンタといえるのかしら?」
橘「......」ガクガクブルブル
絢辻「クリスマス実行委員として、ぜひあなたの意見を聞きたいんだけど?」ゴゴゴゴゴ...
橘「わ、わかりました...」
絢辻「じゃあ、メロンパンでも食べながらじっくり話し合いましょ?」ニッコリ
橘 (今日は晩御飯は食べられないな...)
帰り道 河川敷 夕方
絢辻「橘くん、歩くの遅いわよ。置いていくわよ?」
橘「だ、だってお腹いっぱいで苦しくて」
絢辻「自業自得じゃない」
橘「うう...」
絢辻「仕方ないわね。ペースを合わせてあげるから、感謝しなさい」
橘「ありがとうございます...」
絢辻「まったく...」
橘「でもさ、絢辻さん、今日はこれで良かったの?」
絢辻「なにが?」
橘「いや、アピール期間なのに、なんかいつもと同じだったから」
絢辻「今更、あなたにアピールする必要なんてないじゃない」
橘「そ、そうなの?」
絢辻「あなたにはもう、本当の私を見せているもの」
絢辻「家族にも、クラスメイトにも、教師にも...」
絢辻「これまで関わってきた人には、決して見せなかった『本当の私』」
絢辻「それをあなたは見つけてくれたわ。そして受け入れてくれた」
橘「......」
絢辻「そればかりか、一緒にいると楽しいって言ってくれたし」
絢辻「私、その言葉に凄く救われたの」
絢辻「あなたの前では、自分を偽らなくていい」
絢辻「ありのままの自分でいいんだって、そう思えるようになったの」
絢辻「全部、あなたのおかげよ」
橘「そんな、僕は大したことなんてなにも...」
絢辻「ふふっ、そういうことを自然に言えるのも橘くんのいいところね」
橘「......」
絢辻「......」
絢辻「ねぇ、橘くん」
橘「...なに? 絢辻さん」
絢辻「一度しか言わないからよく聞いてね」
橘「...うん」
絢辻「私、あなたのことが好き」
絢辻「取り繕わない私の本心や、猫かぶってない表情、いい子ぶらない私自身」
絢辻「それをぶつけたり、見せたりするのはあなただけ」
絢辻「だから、私の今の目標は橘くんとずっと一緒にいられるように努力すること」
橘「絢辻さん...///」
絢辻「ずっとあなたのそばで、本当の私でいさせて///」
橘独り占め期間終了
学校 放課後 ポンプ小屋
絢辻「ではアピール期間も終わったから」
絢辻「橘くんに誰と付き合うかを決めてもらいます」
橘「は、はい...」
棚町「ちゃんと決めてきたんでしょうね?」
橘「も、もちろん!! 今までの人生で一番、悩んだよ...」
森島「そこまで悩んでくれたのなら、どんな結果でも受け入れられるわね」
桜井「う~... ドキドキするよ~」
中多「わ、私も...緊張で胸が張り裂けそう...」
七咲「せ、先輩、目の下にクマが...」
橘「ああ、朝までずっと考えてたからね...」
上崎 (え、選ばれなかったらどうしよう...)
絢辻「それで、誰と付き合うの?」
橘「そ、それは...」
森島・絢辻・棚町・桜井・中多・七咲・上崎「......」ドキドキ
橘「僕が付き合いたい人は...」
森島・絢辻・棚町・桜井・中多・七咲・上崎「......」ドキドキ
橘「全員です!!」
森島・絢辻・棚町・桜井・中多・七咲・上崎「......は?」
・・・・・
・・・・
・・・
棚町「純一... それ、一番誠意のない答えだってわかってる?」
橘「わかってる!!」
森島「ち、ちょっと!! 何のために君へのアピール期間を設けたと思ってるの?」
橘「そ、その意味もちゃんと考えましたよ!?」
七咲「先輩に振り向いてもらおうと、私達が必死にアピールしたのが無駄になったんですよ?」
橘「無駄だなんて思ってないさ!!」
桜井「自分の彼氏が、他の女の子とも付き合うのを認めろってこと~?」
橘「だって皆、大好きなんだよ!!」
中多「で、でも、そうなると先輩は私のことを一番に思ってくれないってことですよね...?」
橘「違うよ!! 紗江ちゃんも皆も僕の一番、大事な人なんだ!!」
上崎「そ、それってちょっと勝手すぎるよ!!」
橘「勝手だし、馬鹿なこと言ってるのはわかってる」
橘「でも、僕は皆が好きなんだ!!」
橘「僕なんかのために一生懸命になってくれる」
橘「僕を変えるきっかけをくれる」
橘「一緒にいることが嬉しいし、楽しい」
橘「そしてなにより、僕のことを好きでいてくれる」
橘「そんな皆を僕は悲しませたくないんだ」
橘「誰か一人を選んで、他の皆が悲しむくらいなら」
橘「僕は皆を選んで、皆が悲しまないように精一杯、幸せにする!!」
橘「そのために僕はなんだってする!!」
橘「皆が僕のために一生懸命になってくれたように」
橘「僕も皆を幸せにするために必死に努力する!!」
橘「だから...皆、僕と付き合ってください!!」
絢辻「......呆れたわね」
橘「......」
絢辻「ここまで予想通りだなんて」
橘「...へ?」
棚町「どうせ、あんたのことだから選べないとは思ってたけど」
森島「まさか本当に全員と付き合いたいって言うなんてね~」
七咲「ハーレム、ですか。つくづく先輩は変態さんですね」
桜井「でも、選ばれないよりかは良かったのかな」
中多「も、もし選ばれなかったら私...」
上崎「うー、本当は橘くんを独占したかったのにー... でも、仕方ないよね」
橘「えと、もしかして... こうなることは...?」
絢辻「最初から予想済みだったわよ」
絢辻「それでも、『もしかしたら』と思って今回のことを計画してみたんだけど」
絢辻「どうやら裏目に出たみたいね」ヤレヤレ
橘「ははは... そうだったんだ」
棚町「あんた、笑ってる場合じゃないわよ? 覚悟は出来てるんでしょうね?」
森島「そうよ? 橘くんはこれから7人の美女を幸せにしなくちゃいけないんだから!!」
七咲「それも『平等に』、『最高に』、『死ぬまで』、ですよ?」
中多「パパとママもちゃんと納得させてくださいね...?」
桜井「ちゃんと幸せにしてくれないと許さないんだからね~?」
上崎「デートするときはちゃんとひとりずつにして欲しいな...」
橘「も、もちろん!! 皆を悲しませるようなことは絶対しないよ!!」
絢辻「まったく、馬鹿なんだから... でも、橘くんらしいわね」
絢辻「じゃあ、改めまして。 ...橘くん」
橘「は、はい!!」
絢辻「一緒に幸せになろうね♪」
完
乙
なるべくしてなったな
これにて終了です。最後までお付き合いいただいてありがとうございます。
書き溜めたものを投稿していったので、投下速度が早くて読みづらかったかもしれませんが、
ご了承ください。
ではまた機会があればアマガミSSを投稿しますので、そのときも是非、お付き合いしてください。
ハーレムは素晴らしい
乙
乙
素晴らしく可愛かった
しかし1つだけ
上崎裡沙だ、理沙じゃない
二度と間違えるな、次間違えたらブチ[ピーーー]ぞ