ワイ「あ、あぁ~ッ!」 定時のチャイムキンコンカーンッ!
顧客「はい、今日の打ち合わせは終わり。お疲れさまでした」
ワイ「うぅ……お、お疲れ様でした……」
数年前、念願のIT系企業に就職したのだが、『小規模案件ばかりで売上を達成しようとすると上司に首を切られるのでは』
という懸念の声があり、結果、顧客ちゃんが定期的にワイのチームへ大きな案件を発注してくれるようになった。しかし顧客ちゃんはなんだか下請けのことがキライみたいで、いつもいつもガバガバな要件定義して、顧客ちゃんと上司に板挟みのワイの胃がイタイイタイなのだった。
ワイ「トホホ……顧客ちゃん可愛いのに要件ガバガバは手戻りがイタイイタイなんだから……あーあ、どうにかして顧客ちゃんの打ち合わせをやさしくて気持ちいものにしてもらえないかな~、ん?」
深夜なのに顧客ちゃんの会社の窓から明かりが漏れている。
顧客「よいしょ……よいしょ……」
ワイ(こ、顧客ちゃんが、一ヶ月前に設計したデータベースの定義を書き換えてる!?)
顧客「ふぅ……こんなものですかね……。もっとエンドユーザに気持ち良くなってもらえるように頑張らないと……」
ワイ「顧客ちゃーん!」 バターンッ!
顧客「ひゃあッ!?」
ワイ「こ、顧客ちゃーん! ごめんよーッ! 顧客ちゃんは毎日エンドユーザのためにとっくの昔に完了した設計を蒸し返してたのにワイはそんなことも知らずに……ッ!
ハフッ!ハフッ! 顧客ちゃんのPCのパスワードは[half1/2]!」
顧客「ど、ドサクサにまぎれてパスワードを盗み見ないでください!」
ワイ「ご、ごめんね顧客ちゃん……!」
顧客「べ、別に、エンドユーザの依頼で下請けに黙って仕様変更するくらい普通です……。それが私のお仕事なんですから……。それに、最悪下請けが地獄を見ればいいだで、あんまりこちらには関係がないから」
ワイ「そ、そんなことないよ! 顧客ちゃんの案件がコケたらエンドユーザに恨まれるのは御社だよ! あっ、そ、そうだ! 顧客ちゃんおてて出して!」
顧客「こ、こうですか?」
ワイ「そう! それじゃあ今から追加の見積もり書作るからね! ちゃんと受け止めてね!」
顧客「えっ、えっ?」
ワイ「ウオーッ! 山田! ブヨブヨおててに見積もり出すぞ!」バサッバサッバサーッ!
顧客「ひゃあッ!」ビシャーッ
ワイ「くっ、ふぅ……! す、すっごい高いのが出たぁーッ!」
顧客「ほんとうです……で、でもなんで……?」
ワイ「それはね……顧客ちゃんの下請けに対する気持ちが、ワイに伝わったからだよ! 顧客ちゃんの下請けを人間だと思っていない気持ちがね!」
顧客「下請けが人間……?」
ワイ「そう! だから、エンドユーザなんて、二の次なんだよ! 要件定義は、役職だけSEにやってもらうより、現場の人間にやってもらうのが一番いいんだよ!」
顧客「現場の人間って……はわわ……あ、あの……もうちょっとだけ、仕様変更に付き合ってもらってもいいですか?」
ワイ「もちろん!」
その後、ワイは一晩中顧客ちゃんの仕様変更にスケジュール立て直しを続けて次の日の朝は起き上がれないほど疲弊していた。
でもまぁ、その日以来、会社で仕事をするとき吐き気と腹痛に襲われて医師の勧めで休職させてくれるようになったので結果オーライ! 終わり