チノ「はい、本日の読経は終わり。お疲れさまでした」
ワイ「うぅ…お、お疲れさまでした…」
しかしチノちゃんはなんだかワイのことがキライみたいで、無愛想に観音浄土へ赴くように諭してきて、周りにもワイの渡海を宣伝していてぽんぽんイタイイタイなのだった。
ワイ「トホホ…チノちゃん殺生はキライなのにワイの補陀落渡海だけはシタイシタイなんだから…あー、どうにかしてワイの修行を優しくてギリギリ死なないものにしてもらえないかな~、ん?」
深夜なのに勝浦の浜からあかりが漏れている。
チノ「よいしょ…よいしょ…」
ワイ(チノちゃんが、補陀落船を補修してニコニコしている!?)
チノ「ふぅ…こんなものですかね……。もっと船の強度を強めて、ワイさんが気持ちよく観音浄土へ逝けるように頑張らないと……」
ワイ「チノちゃーん!」バターン!
チノ「ひゃあッ!?」
ワイ「ち、チノちゃーん!ごめんよーッ!チノちゃんは。ハフッ!ハフッ!袈裟にしみついた香木いい匂い!」
チノ「ど、どさくさに紛れて匂いを嗅がないで下さい!」
ワイ「ご、ごめんねチノちゃん……!」
チノ「べ、別に、補陀落聖の船を念入りに作るくらい普通です……。それが渡海を見守る私の使命ですから……。それに、まだ若くて渡海できない私の代わりを務めてくれるんですから…」
ワイ「チノちゃんのその気持ちだけで、ワイも気持ちよく補陀落渡海できるんだよ! あっ、そ、そうだ! チノちゃんもおためしでワイと一緒に船に乗ってみよ!」
チノ「こ、こうですか…?」
ワイ「そう! それじゃあ今から沖に出すからね! チノちゃんのやわらか信心に死の恐怖ドッピュしてもらうからね! ちゃんとお経読んでね!」
チノ「えっ、えっ?」
ワイ「ウオーッ! チノ! 船出すぞ!」ザババババーッ!
チノ「ひゃあッ!」
ワイ「くっ、ふぅ……! す、すっごい勢いで出たぁーッ!」
チノ「な、なんで出したんですか……?」
ワイ「それはね……チノちゃんの気持ちが、ワイに伝わったからだよ! チノちゃんの渡海への意気込みがね!」
チノ「私の意気込み……(人の補陀落渡海は見てて気持ちいいけど、私がしたいわけじゃない…) 」
ワイ「そう! だから、信心なんて、二の次なんだよ! 補陀落渡海は、一人でやるより、好きな人といっしょにやるのが一番気持ちいいんだよ!」
チノ「わ、私…補陀落渡海なんてしたくありません!早く船を浜に戻してください!」
ワイ「もちろん降ろさない!」
その後、ワイは一晩中補陀落船の中でチノちゃんのぷにぷにお耳に読経を聞かせ続けて次の日の朝は声が出せないほど疲弊していた。
でもまぁ、その日以来、読経をするときチノちゃんが耳元で「求観音者 不心補陀 求補陀者 不心海」とつぶやいてきたけど、三日後には生き仏のようになったので結果オーライ!
行基さんはちょっと違う
あいつはそれでも燃燈なんちゃらっていう、自分の腕を焼く祈祷やってたやばいやつやってた
知り合いから聞いたけど修法の名前忘れたわ
補陀落渡海は和歌山の熊野で流行った捨身行(仏教における死ぬレベルの修行)のことや
扉のない船に坊さん閉じ込めて、海に出して漂流させることで、死ぬと同時に南の果てにある補陀落(観音の住む世界)へとたどり着けると信じられてたんやで
ちな一番流行ってたのは戦国時代なんで、イメージはそのあたりで
実際はほとんど死ぬんか?
ほとんど死ぬで
今回は奇跡的に生き残った日秀さんモデルなのでそれで第二部制作してある
説明見た限り生き残ったら失敗やないんか?
せやで
ただこの日秀さんはなんだかんだ失敗を取り返すためにあれこれ頑張ってたので、お楽しみにやで
イッチ「沖に流されるって後鳥羽上皇かよw」
チノ「超~承久の乱?w」
ザーッザーッ
ワイ「ここは補陀落か…?」
???「おーい!」
ワイ(面妖なる服装…これは…)
ワイ「むっ、琉球か…」
中山王ココア「グスクヘいらっしゃいませー!」
ワイ(ワイ、手で降魔印をして僧侶であることを伝える)
ココア「はーい!御来国ありがとうございまーす!」
ココア「ほらこっち座って座って」
ココア「お坊さんはどうして琉球へ来たの?」
ワイ「補陀落渡海…」
ココア「そっか…補陀落には行けなかったんだね…」
ワイ「同行者、チノちゃんだけ補陀落へ到達したんだ……」(ワイ、捨身に失敗した恥辱に顔を背ける)
ココア「そっか…それでもまだ機会はあるよ!」
ココア「だいじょーぶ♡国王お姉ちゃんにまっかせなさーい!!!」
ワイ「——!」(琉球人の陽気さに驚愕)
ココア「はーい!ウータキにお寺開きましょうねー♡」
ワイ「ワイにユタの真似をしろと申すか!島人風情が!」
ココア「ほーら♡お寺建てて賽銭ちゅーちゅーしましょうね♡」
ワイ「そう土地を出されては勿体無くて仕方がない」
ワイ「頂戴しよう」チューチュー
ココア「あっん♡ お金集まってる♡」
ココア「もっとお寺建ててほしい?」
ワイ「…」(こくんと頷く)
ココア「よしよし♡」明銭ジャラジャラ
ワイ(んん♥ りゅうきゅうおうさましゅきぃ…♥)
ココア「おねーちゃんのくに、楽しかった?」
ワイ「うん…♥ あ、あのねおねーちゃん…」
ココア「どうしたの?もじもじして♡」
ワイ「おきなわのようかい、たおしたの…もっとほめて♥」
ココア「えらいえらい♡よしよし♡」
ワイ「アッアッアッ…おねーちゃんしゅきぃぃぃぃ♥♥♥」
ココア「じゃあ薩摩へ行ってきてくれる?」
ワイ「えっ?」
こうしてワイは戦乱の地薩摩に送られることとなった
その後、伴走船が沖まで曳航し、綱を切って見送る[1]。
場合によってはさらに108の石を身体に巻き付けて、行者の生還を防止する。
なんやこれ….
閑話休題
実は井上靖が補陀落渡海に臨む坊さんの苦悩をこれでもかって生々しく書いた『補陀落渡海記』っていう名著あるんやけど、
これを中国人有志がアニメーションにしたやつあるからそっちもおすすめやで
サンガツ
よく有能って言われるやろ
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