ワイ「ち、チノちゃん！　死刑判決が出たからって暴れないで！」　チノ「うるさいですね……」

ワイ「あ、あぁ～ッ！」　クラクラクラーッ！

チノ「はい、控訴手続きは終わり。弁護お疲れさまでした」

ワイ「うぅ……あ、ありがとうございました……」

数年前、チノちゃんは念願の保険金殺人で従業員数名を焼殺したのだが、『凶悪犯で再犯のおそれがある』
という懸念の声があり、結果、一審の裁判長から死刑判決をカキカキしてもらえるようになった。しかしチノちゃんはなんだか
一審判決のことがキライみたいで、何度も何度も不愛想に控訴状をカキカキして、弁護人としてはツライツライなのだった。

ワイ「トホホ……チノちゃん可愛いのに凶悪犯罪はシタイシタイなんだから……あーあ、どうにかしてチノちゃんの死刑判決をやさしくて軽いものにしてもらえないかな～、ん？」

通例の面会なのにチノちゃんの表情からあかりが漏れている。

チノ「よいしょ……よいしょ……」

ワイ（ち、チノちゃんが、天皇陛下が崩御した新聞を見てニコニコしている！？）

チノ「ふぅ……こんなものですかね……。もっと恩赦が出た事例を集めるように頑張らないと……」

ワイ「チノちゃーん！」　バターンッ！

チノ「ひゃあッ！？」

ワイ「チ、チノちゃーん！　ごめんよーッ！　チノちゃんは死刑を回避するために情報を集めていたのにワイはそんなことも知らずに……ッ！
ハフッ！ハフッ！　天皇陛下崩御の新聞のインクいい匂い！」

チノ「ど、ドサクサにまぎれて匂いを嗅がないでください！」

ワイ「ご、ごめんねチノちゃん……！」

チノ「べ、別に、天皇が替わったときに恩赦が出るくらい普通です……。それが死刑が減刑された数少ない事例なんですから……。でも、私は判決が確定していなくて、恩赦がもらえる段階じゃないから」

ワイ「そ、そんなことないよ！　チノちゃんのその気持ちだけで国は十分死刑やめてくれるんだよ！　あっ、そ、そうだ！　チノちゃん控訴取り下げよ！」

チノ「ほ、本当にですか？」

ワイ「そう！　それじゃあ今から控訴取り下げるからね！　チノちゃんの死刑判決確定さてから恩赦ドッピュしてもらうからね！　ちゃんと受け止めてね！」

チノ「えっ、えっ？」

ワイ「ウオーッ！　チノ！　取下状出すぞ！」カキカキカキーッ！

チノ「ひゃあッ！」

ワイ「くっ、ふぅ……！　死刑判決確定したぁーッ！」

チノ「ほんとうです……で、でもなんで……？」

ワイ「それはね……チノちゃんの控訴取下げによって、死刑判決が確定するからだよ！　恩赦をもらえるのは判決が確定している人だけだからね！」

チノ「判決が確定……」

ワイ「そう！　だから、恩赦なんて、もうすぐなんだよ！　天皇陛下の崩御は、上手いこと使うのが一番気持ちいいんだよ！」

チノ「お、恩赦って……はわわ……あ、あの……釈放されるまでもうちょっとだけ、付き合ってもらってもいいですか？」

ワイ「もちろん！」
その後、チノちゃんは四六時中恩赦が出て死刑判決が減刑される日を待っていたが世論の声を受けて昭和天皇の崩御では重罪犯の恩赦をしないことが決まった。
でもまぁ、その日以来、死刑判決が確定したチノちゃんが面会室で「お前も死ね」とつぶやいてくれるようになったけどワイは娑婆にいるので結果オーライ！　終わり