ロン「なにしてるの?」
ハリー「なにって、ロン。見て分からないの?」
ロン「呼び寄せ呪文だろ? 君がやろうとしてることの意味くらい、僕にだって分かるさ」
ロン「ただ、ハーマイオニーの乳首を呼び寄せるなんて、正気とは思えないから」
ハリー「僕は正気だよ」
ロン「だったらどうしてそんなことしてるのさ」
ハリー「ハーマイオニーの乳首を呼び寄せたいから。それ以上の理由が必要?」
ロン「でも、それって難しいと思うな」
ハリー「そうかな。そう難しいことだとは思わないけど」
ロン「だって大きいものほど呼び寄せるのって難しくなるだろ?」
ハリー「ロン、ハーマイオニーの乳首はそんなに大きくないよ。せいぜい、このぐらいだ」
ロン「分かってるよ。僕が言いたいのは……ハーマイオニーの乳首にはハーマイオニーの本体もくっついてるってこと」
ロン「ハーマイオニーから乳首が千切れて飛んでくるなら、話は別だけどさ。そうじゃないだろ?」
ハリー「そっか……ロン、たしかに君の言うとおりだね。ハーマイオニーが抵抗したら、呼び寄せるのは難しいかも」
ロン「残念だけど、諦めた方がいいよ」
<ちょっと、やだっ! 誰か止めて! 痛い! もう、なんなの!?
ハリー「この声……ハーマイオニー!? 魔法が効いたんだ! アクシオ! ハーマイオニーの乳首!」
ロン「信じられない……! ハリー、君って天才かも」
ハリー「アクシオ!!! ハーマイオニーの乳首!!!」
ハーマイオニー「ああ!」
ドサッ
ロン「ほんとに来ちゃったよ……!」
ハーマイオニー「もう……ちょっと! 貴方たちね!? 私にこんなことをしたのは!」
ハリー「ごめん、ハーマイオニー。えっと、魔法の練習をしてたんだ」
ロン「凄いんだぜ。ハリーがハーマイオニーの乳首を呼び寄せたんだ。その身で体感しただろ?」
ハリー「うん。ハーマイオニー、良かったら、その、感想を聞かせてほしいんだけど」
ロン「乳首を魔法で呼び寄せられるのってどんな感じ?」
ハーマイオニー「信じられない! 魔法の練習なら、そこら辺の小物でいいでしょう!?」
ハーマイオニー「どうして私の乳首を練習台にしたの!?」
ハリー「どうしてって……やる気の問題かな」
ハーマイオニー「なに、どういうこと? きちんと説明して」
ロン「モチベーションだよ。ペンや本を呼び寄せるより、君の乳首を呼び寄せた方が何倍もやる気が出る。だろ?」
ハリー「そう。ロンの言うとおり。言いたいことを全部言われちゃった。うん、そういうことなんだ」
ロン「ね、そういうことだから。納得?」
ハーマイオニー「できるわけないでしょ!? はぁ……とにかく。凄く痛いから、やめて。お願いだから」
ハリー「うん。ごめん」
ハーマイオニー「……こんな時間に、非常識だわ」
ロン「そう怒るなって、もうやらないからさ。おやすみ」
ハリー「良い夢を。また明日」
ロン「……」
ハリー「……」
ロン「さっき『痛い』って言ってたけど」
ハリー「ハーマイオニー? 言ってたね」
ロン「つねられた状態で引っ張られてきたってことだろ? どっちの乳首だったのかな」
ハリー「どっちって……」
ロン「どっちの乳首を呼んだの? 右乳首? 左乳首?」
ハリー「ああ、どうだろう。ごめん、そこまで深く考えて無かったかな。『ハーマイオニーの乳首』って、漠然としか」
ロン「じゃあ右乳首かもしれない」
ハリー「左かもしれないよ。分からないけど」
ロン「どっちなんだろう。気にならない?」
ハリー「そうだね。もう一度呼んで確かめてみよう」
ハリー「アクシオ、ハーマイオニーの乳首」
<ちょっと、なに!? またなの!?
ハリー「来るよ、ロン。ハーマイオニーの胸に注目しよう」
ハリー「魔法に引っ張られて、片方の乳首が浮かび上がるはずだ」
ロン「右乳首だよ、絶対」
ハリー「僕は左」
ハーマイオニー「もう、やめてっ」
ハリー「……」ジー
ロン「……」ジー
ハーマイオニー「いい加減にしてよ! どうしてこんなことするの!?」
ハリー「うっかり言っちゃったんだ。『アクシオハーマイオニーの乳首』って。その、言うつもりは無かったんだけど」
ロン「ハリー、気を付けないと。ハーマイオニーが怒ってるだろ?」
ハリー「そうだね。ほんと、ごめん。もう杖をしまうよ」
ハーマイオニー「いい? 次呼んだら、絶対に許さないから。わかった?」
ハリー「うん」
ハーマイオニー「はぁ……信じられない」
ハリー「……」
ロン「……」
ハリー「どうだった?」
ロン「わからなかった。あれ、たぶんブラジャーのせいだよ」
ロン「ハーマイオニーも年頃の女なんだよな。忘れがちだけど」
ハリー「ブラジャーをされてちゃ、乳首が服に浮かび上がらない」
ロン「どうする? ベッドに入る時はブラジャーって外すのかな」
ハリー「じゃあもう少し待ってから呼び出してみようか」
ロン「でも、また呼び出したとして、その時もブラジャーをつけてたら意味ないだろ?」
ハリー「そうだね……じゃあハーマイオニーのブラジャーを先に呼び寄せるとか?」
ロン「君って冴えてる。そうだよ、ハーマイオニーの部屋からブラジャーを無くせばいいんだ」
ハリー「アクシオ! ハーマイオニーのブラジャー!」
ロン「……来ない」
ハリー「おかしいな。もう一度やってみるよ。アクシオ、ハーマイオニーのブラジャー」
タッタッタッタッタ
ハーマイオニー「ちょっと! なんでこんなことするの!?」
ハリー「あれ、ハーマイオニー」
ロン「なんだよ。君のことは呼んでないだろ?」
ハーマイオニー「私の下着がドアに張り付いてるの! また呼び寄せの呪文でしょう!?」
ハリー「そっか。そうだよ、ロン。ブラジャーはドアの開け閉めができないんだ」
ロン「良い考えだと思ったんだけど、うまくいかないや」
ハーマイオニー「何の話? ねえ、言ったわよね。絶対に許さないって」
ロン「君の乳首を呼んだ場合だろ? 今呼んだのは君の下着じゃないか」
ハーマイオニー「一緒よ!」
ロン「違うだろ?」
ハーマイオニー「はぁ……。わかった、わかったわよ。いい? 次、私の所有物を呼び寄せたら、先生に言いつけるから」
ハリー「うん」
ハリー「……」
ロン「……」
ハリー「もう寝よう、ロン」
ロン「それがいいね。ハーマイオニーのやつ、怒らせるとしつこいから。根に持つタイプだろ?」
ハリー「たしかに」
ロン「素直に寝るのが正解さ。おやすみ」
―――
ロン「ハリー、起きてる?」
ハリー「うん。眠れないよ、ロン」
ロン「目を閉じても右乳首か左乳首なのか、頭の中はそればっか」
ハリー「答えを出さない限り、眠れそうにないね」
ロン「先生に言いつけられてもいいから、もう一回だけ呼び出そう」
ロン「このまま放置しても、結局寝不足になって授業中に寝るんだ」
ロン「どっち道怒られるなら、ハーマイオニーの乳首の謎を解いた方が、得る物があるだろ?」
ハリー「そうだね。じゃあ、もう一度だけ」
ハリー「アクシオ! ハーマイオニーの乳首!」
ロン「なんで僕、こんなことでどきどきしてるんだろう。でも、胸の高鳴りが止まらないんだ」
ハリー「僕もさ、ロン」
<絶対に許さないから! 信じられない!
ハリー「来た」
ロン「うん」
ハーマイオニー「言ったはずよね!? 気は確か!?」
ハリー「ごめん。本当に、言葉も無いんだ。謝っても許してもらえるとは思えないけど、ごめん」
ロン「言い訳はしない。ただ、これだけは聞かせて」
ハリー「ハーマイオニー。君はどっちの乳首を引っ張られてここまできたの?」
ハーマイオニー「はぁ!? なに!? ちょっと待って、そんなことを聞くために、嘘でしょ?」
ロン「僕らには重大な問題なんだ。右乳首? 左乳首?」
ハーマイオニー「ねえ、やめて。そんなこと、どうだっていいでしょ!?」
ロン「答える気は無い? あっそ、ハリー。こうなったら力ずくでも確認するしかないよ」
ハリー「そうだね……本当はしたくないけど」
ハーマイオニー「何? 何する気? やめて」
ハリー「アクシオ! ハーマイオニーの乳首!!! アクシオ!!!!」
ハーマイオニー「いやああああああああああああああ!」
ロン「胸を隠してる! ハリー、もっと魔法を使うんだ!」
ハリー「ハーマイオニーの乳首!!!!!!!! アクシオ!!!!!!!!!」
ハーマイオニー「止めて!!! やめてよ!!!! やめて!!!!!」
ハリー「乳首!!!!!!! アクシオ乳首!!!!!!!!!1 アクシオ乳首!!!!!!!!!!!1」
ロン「胸を隠してる手をどかすか、どっちの乳首を引っ張られてるのか答えるか、道はひとつだ!」
ハリー「乳首アクシオ!!!!!!!!1 アクシオ乳首!!!!!!1 乳首!!!!!!!! アクシオ乳首!!!!!!!11」
ハーマイオニー「答えるから! お願いだからやめて! 両方! 右と左! どっちもよ! どっちもだから!」
ロン「……聞いた?」
ハリー「……うん。両方の乳首だったんだ」
ロン「凄いよ。それってつまり、一度にふたつの物を呼び寄せてたってことじゃないか」
ハーマイオニー「もう……いや……」
ハリー「どう? これで眠れる?」
ロン「うん。両乳首って分かったら、とたんに眠くなってきた」
ハリー「ハーマイオニー、その、僕らもう寝たいんだけど」
ロン「はやく自分の部屋に帰れよな」
ポトン
ハリー「……ん?」
ロン「どうかした?」
ハリー「何か、プニっとしたものが僕に当たって……」
ロン「もしかして、ハーマイオニーの乳首が千切れちゃったとか!?」
ハリー「ねえ、ハーマイオニー。これ、君の?」
ハーマイオニー「違うわ……私のはついてる……」
ロン「じゃあ……」
マクゴナガル「何です、騒々しい。もうとっくに消灯時間は過ぎているんですよ?」
ハリー「あ、マクゴナガル先生」
ロン「えっと、ちょうど寝ようとしてたところで。ごめんなさい」
マクゴナガル「ミスグレンジャー。はやく自分の部屋にお戻りなさい。さあ立って」
ハーマイオニー「はい……」
ハリー「おやすみ。ハーマイオニー」フニフニ
マクゴナガル「……おや? あなたが持っているそれは……まさか、私の乳首!?」
ハリー「……え?」
ロン「先生の乳首って……それって、マクゴナガル先生の乳首ってこと?」
マクゴナガル「貸しなさい……。やっぱり、私の乳首です。さきほど胸に痛みが走りましたが、そういうことでしたか」
マクゴナガル「これはどういうことです? 納得のできる説明ができなければ、それ相応の罰を受けてもらいますよ?」
ハリー「じ、実は……」
ハーマイオニー「ふたりが、呼び寄せの呪文で乳首を……私、何度もやめてって言ったのに」
マクゴナガル「まあ、なんということ。弁明の余地はありませんね?」
ハリー「はい……」
―――
ダンブルドア「さて、今日は皆に話しておかねばならぬことがある。心して聞くがよい」
ダンブルドア「昨夜、グリフィンドールの二人の生徒が、呼び寄せ呪文で無差別に乳首を呼ぶという暴挙に出た」
ダンブルドア「結果、近くにいたマクゴナガル先生の両乳首が千切れてしまった。片方の乳首はいまだ行方不明」
ダンブルドア「長い年月を経て弱り切っていたマクゴナガル先生の乳首は、トドメを刺されたのじゃ」
ざわっ
「乳首を?」「誰だよ、そんなことしたの」「名乗り出ろよ」
ダンブルドア「実に、痛ましい。深い悲しみと同時に、怒りを覚える者も多いだろう。二人には、深く反省してもらいたい」
ダンブルドア「さて、今回の事件を受けて、グリフィンドールから……100点減点することとする」
ダンブルドア「呼び寄せ呪文の悪用は決して許されるものではない。皆、しかと胸に刻み込むことじゃ」
ダンブルドア「同じ過ちを繰り返さぬという決意と共に、マクゴナガル先生の乳首の冥福を祈ることとしよう」
ダンブルドア「……」
ハリー「失礼します。ダンブルドア先生」
ロン「呼ばれたので来ました、けど……」
ダンブルドア「うむ」
ハリー「今回は、本当にすみませんでした」
ロン「反省してます。ほんと。今思えば、どうかしてました」
ロン「僕が煽らなければ、ハリーもあそこまではしなかったと思います……たぶん」
ハリー「100点の減点を甘んじて受けます」
ダンブルドア「今回の件は、許しがたい蛮行じゃ。魔法学校を統括する身として、看過はできん」
ロン「まさか、た、退学なんてことは」
ダンブルドア「それも考えに入っておる。ただし、対象はハリーだけじゃ」
ロン「そんな……!」
ハリー「……わかりました」
ロン「おい、ハリー」
ハリー「ロン、僕に退学を拒む権利は無いよ。大人しく受け入れるしかない」
ロン「でも……退学なんて……」
ハリー「先生。期待を裏切ってすみませんでした。えっと……これ、お渡ししておきます」
ダンブルドア「……ん? これは……」
ロン「あ、それ、マクゴナガル先生の乳首。行方不明だったもう片方が、ベッドの下に転がってて……」
ハリー「マクゴナガル先生にお返ししようとしたんですが『もう要らない』と断られてしまったので、先生に差し上げます」
ダンブルドア「300点」
ハリー「え?」
ダンブルドア「グリフィンドールに300点追加じゃ。この乳首はわしが大切に預かるとしよう」
ロン「やった! 差引、200点の儲けじゃないか!」
ハリー「乳首を呼び寄せるつもりが、グリフィンドールの優勝を呼び寄せちゃった」
ロン「君ってサイコーだよ、ハリー!」
END