ナレーター「原住民の朝は早い」
午前4時、もうその男は目覚めていた。
スタッフ「毎朝こんな早起きですか?」
(´・ω・`)「はい、朝は仕事がたくさんありますので。トンボ掛け、ボール磨き、食事の用意…いくら時間があっても足りないですよ」
そう言い残し、彼は足早に仕事場へと向かうのだった…
(´・ω・`)「さあ始めますか」
彼の仕事場は河原にある小さなグラウンドだ。慣れた手つきでトンボ掛けを始める、野球選手なのだろうか?
スタッフ「いつも一人でこんな広い範囲を?手伝いましょうか?」
(´・ω・`)「ええ、一人ですよ。お気持ちは嬉しいですけど、気にしないで下さい笑」
待つこと一時間、ようやくトンボ掛けが終わった。
(´・ω・`)「ふう、今日も綺麗にできた!ちょっと一服しますか?」
そう言って彼は、スタッフにきうりを配り始めた。
スタッフ「ありがとうございます。しかしなぜきゅうり?」
(´・ω・`)「きうり美味しいじゃないですか。なにより栄養のバランスも取れていて、疲れた体には一番ですね」
どうやら彼はきゅうりが世界一栄養のない野菜だと言う事を知らないようだ。
束の間の休憩が終わると、彼は黙々とボール磨きを始めた。
キュッキュッ…キュッキュッ…
彼は口を閉ざし、ボールを磨く音だけが響き渡る…
キュッキュッ…
鬼気迫る表情でボールを磨く彼にスタッフも話かける事が出来ない
(´・ω・`)「よし、完璧だ!」
スタッフ「お疲れ様です。まるで新品のような輝きですね」
(´・ω・`)「まあ毎日やってますから、自然とうまくなってしまいましたね笑」
スタッフ「あのそろそろ原住民さんの職業について教えていただけませんか?」
(´・ω・`)「難しい質問ですね…うーん大雑把に言うと”奴隷”ですかね。」
我々は彼が一瞬見せた、悲しげな表情を見逃さなかった…。
7時。
彼が働き始めてから三時間もの時間が過ぎていた。
なにやら彼が落ち着かない様子できゅうりを食べている、いったいどうしたと言うのか?
スタッフ「どうかしましたか?」
(´・ω・`)「そろそろですね…震えるんですや。彼らが近づいてくると…」キウリボリー
その時、遠くから誰かの声が聞こえてきた。
?「原住民ちゃ~ん!ちゃんと準備終わっとるか~?」
(´・ω・`)「どうやら来たみたいですね」
彡(゚)(゚)「なんやなんや、えらいいっぱい人がおるやんけ」
(´・ω・`)「おはようございます。今日は情熱大陸の取材なんだよ」
彡(^)(^)「お、ええやん!ワイの華麗なプレーが全国ネットで流れるやんけ」ニッコリ
スタッフ「申し訳ありません。今回は原住民さんの仕事がメインなので、野球民さんのシーンはないんですよ」
彡(゚)(゚)「は?ワイは脇役なんか?」
(´・ω・`)「だってお兄ちゃん働いてないでしょ?ニートの何を取材するの?」
彡(゚)(゚)「まあええわ、取材終わったら覚悟しときーや」
(´・ω・`)「はあ…」
スタッフ「彼は何者ですか?」
(´・ω・`)「侵略者ですよ、僕らの楽園を奪った野蛮民族ですよ」
タッフ「何故彼らの言いなりに?」
(´・ω・`)「きうり畑を守るためです…」
彼の瞳には薄っすらと涙が溜まっていた。
どうやら本日の取材はここまでのようだ。
後日…
3日後、再び取材のチャンスを与えられた我々は原住民の元へ向かった
(´・ω・`)「こんにちは」
スタッフ「どうしたんですか、その顔?」
彼の顔は腫れ上がり、体中傷だらけだ。
(´・ω・`)「気にしないで下さい。いつものことですから。さあ今日は休日なので出かけましょう」
スタッフ「今日はどちらへ?」
(´・ω・`)「ふふ、ついてくればわかりますよ」
歩くこと三十分、人里離れた場所にそれはあった。
(´・ω・`)「ごめんね、今水あげるからね」
スタッフ「これは、きゅうり畑…」
(´・ω・`)「はい、丹精込めて育ててるんです。よかったら、採れたてをどうぞ」
彼はきゅうりのうんちくを語り始めた…
(´・ω・`)「きうりは栄養も豊富で、一本で成人男性一日分の栄養が取れます」
スタッフ「…」
(´・ω・`)「ほらこのきうり曲がってるでしょ?この子はまっすぐです、きうりにも個性があるんです。形は悪くても味は変わりません」
スタッフ「何が言いたいのですか?」
(´・ω・`)「野球のお兄ちゃんは曲ったきうりなんですよ。あんなクソみたいな性格ですけど、きっと心の奥には優しい心があると思うんです」
(´・ω・`)「人間誰でも優しさを持っているんです。あんな曲ったきうりみたいなお兄ちゃん達でもね」
スタッフ「原住民さんは優しいんですね」
(´・ω・`)「いえ、そんなことないですよ。僕に出来るのはお兄ちゃん達と分かり合える日が来るのを待つことだけですよ」
その時である、どこかで聞いた事のある声が聞こえてきた。
?「原住民ちゃ~ん」
彡(゚)(゚)「こんなところにおったんか」
(´・ω・`)「今日は休みのはずじゃなかったっけ?」
2彡(゚)(゚)「なにいってだ、こいつ」
3彡(^)(^)「せやで、お前に休みなんかあるわけないやろ」
1彡(゚)(゚)「というわけでとっととついてこいや」
(´・ω・`)「曲ったきうり…」
2彡(゚)(゚)「なんか言ったか?」